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今回短いです。
すっかり英気を補充した僕は、自室で各種報告書に目を通していた。
「ウズヴェリア国ねぇ…ウィズリー、詳細な情報ってどれくらいで分かるかな?」
「そうですね、離れている事を考えましても逐一の報告なら1週間、王都と王家で有れば1ヶ月と言うところでしょうか?」
「じゃ両方で進めておいて。あ、院の子で誰か実践で連れて行く?」
「では、トビーとレイを」
「ああ、年長だしね。他国を見るのも勉強になるよね。ウィズリーはどっちがお気に入りなの?」
「どちらも違う方向性で才能がありますね。レイはすんなりと人の輪に溶け込みますし、トビーは影に紛れて忍ぶのが天才的です」
「ああ、妹のニコも凄いもんね。出身の村は盗賊に壊滅させられたんだっけ?あの辺の子ってみんなああなのかな?」
「自然の中で飛び回っていたと聞きましたので、才能と環境によるものじゃないでしょうか?」
「他にも居たりしないかな…」
「お抱えになさるので?」
「そうだね、将来的には。どんな問題にも“情報”は必要でしょ?」
「“問題”ですか」
「ふふ。僕だってまだまだ子供だし?最悪のケースは遠慮したいから?
そうそう、そろそろ聞いておきたいんだけどウィズリー」
そう言うと、僕は座ったままウィズリーの方へ体ごと向けて、視線でウィズリーを捉えて観察する。少し顔に疑問を浮かべたウィズリーは、僕に姿勢を正して向き直る。ゆっくり口角を上げた僕はウィズリーに問うた。
「君は家と僕、どっちに付くの?」
ウィズリーはグッと喉をつまらせると口をひき結んでしばらく沈黙した。その後片膝を突き、胸に手を当てて礼を取った。
「私個人は、エリオット様に忠誠を誓いたいと思っております」
「…そう、それなら折を見て切り替えよう。君についている鎖は1つだけ?それとも何かある?」
「いえ、1つです」
「君の家は?」
「私は子爵家の3男ですし、関わりはありません」
「あ・そう。取り込まなくて良いなら良いんだけど。気が変わったら言ってよね。あと父上への報告は適当にごまかしておいてね」
「畏まりました。……エリオット様に生涯忠誠を」
「そう強張らないでよ。君は有能だし損はさせないから。……ただ裏切りは嫌だよ?」
「はっ。誓って」
「じゃそろそろ寝るから、下がって良いよ」
そう言うと一礼して下がって行った。
だれも居なくなった室内で、僕は鍵付きの引き出しから侯爵家と連なる家の家系図と使用人一覧を出して開けると、考えを巡らせるのだった。