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 暫くして会場を見渡すと、人だかりが3つに分かれていた。どうやら王家の方々は、別行動に出たようだ。



 王家には現在、3人の御子がいる。


 まずこの国と同程度の大きさ、国力を持つ隣国の王妹である王妃様の御子、第一王子ハリソン殿下は11歳。その妹である第一王女プランティエ殿下が9歳。そしてヴォリシウス侯爵家のご令嬢であった側妃様の御子、第二王子マティアス殿下。この方も9歳。


 両国の王家を親に持つ第一王子ハリソン殿下は、品行方正でいつも微笑みを絶やさず、“完璧王子”と名高い。すでに顔つなぎのための社交にも出ているとか。

 第一王女プランティエ殿下は、少し我がままだけどお可愛らしい方としか聞かない。

 お茶会の参加も、これが初めてなら仕方ないのかもしれない。


 権力欲の強い側妃様のご実家が後ろ盾の第二王子マティアス殿下は、慳貪な態度をよく見られるとか。周りの影響かな?これもまだ社交の場には出られていないので詳しくは不明。


 なので僕は、父に「会ってから」と言ったのだった。


***


 流石にそろそろ挨拶に行くべきかなと、フランシーヌとチャールズに声をかけて、席を立つ。


 ひとまず近い人だかりに3人で向かうと、挨拶後に群がっていた人は道を開けてくれた。

 少し待ってから前へ進み出ると、中心にいたのは第一王子ハリソン殿下だった。

 後ろになでつけた少し長めの黒髪、白い肌に瞳は王家の遺伝で必ず現れると言う金の瞳。少し切れ長な形の目に、薄い唇。

 この方が玉座に就けば、ものすごく完璧で隙なく優しく時に冷徹に采配を振るう様が簡単に想像できてしまった。

 …ただ何というか。想像したら息苦しさが半端なくって、思わず襟元を緩めたくなった。



「お初にお目にかかります。オースティン侯爵家長男のエリオットです。こちらは僕の婚約者のフランシーヌです」

「初めまして、ハリソン殿下。ウィンダリア伯爵家長女のフランシーヌでございます。お会いできて光栄でございます」

「初めまして。同じくウィンダリア伯爵家長男のチャールズです。姉共々、どうぞお見知り置きください」


「ハリソン=ノル=フェルベルグスだ。宜しく頼む」



 卒なく礼を交わし合ってから、人も多いので次に向かうことにした。



***


 次の人だかりは先ほどより少ないが騒がしい。周囲の声量が大きいのだと気づく。

 人だかりの中にいたのは、第二王子マティアス殿下。騒がしいのはヴォリシウス侯爵家の関係者かな?父上の言う通り、色々な意味で煩いようだ。


 僕はフランシーヌを守るようにエスコートしながら、外側の人に「失礼」と声をかけて割り入っていく。

 マティアス殿下の容貌は、短く揃えられたストレートのブルネットの髪に、金の瞳はアーモンド型。ただ剣呑に顰められた眉が、神経質そうな雰囲気を醸しているようだった。

 少し近すぎる集団に、ツイッと周りを視線で牽制した。少したじろいだ様に一歩後ろに下がったのを見計らい、「お初にお目にかかります、マティアス殿下…」と同じ礼を3人共済ませた。



「ふん。マティアス=ノル=フェルベルグスだ」



 そう言うと探るような視線で、じっと見つめられる。…なんだ?こっちを見定める気なのか?

 僕は片方の口端だけ僅かに上げて、挑発してみせた。

 僅かに見開いたマティアス殿下は、同じように少し口角を上げた後、「良い、下がれ」と素っ気なく言い放った。

 僕らは一礼をして、最後の人だかりへ向かうべく下がった。


 思ってた以上に聡明な方で驚いた。だが周りが面倒なのは確かみたいだ。もしマティアス殿下が玉座に就いたら、自身が忙しくなりそうな予感がするのは何故だろうか。

 頭を少し振って、嫌な想像を振り払ったのだった。


***


 最後は第一王女プランティエ殿下。


 人だかりの中に入っていくと、椅子に座って周りと談笑する少女が見えた。

 ライトゴールドの緩やかに波打つ髪に、金の丸くてやや垂れ気味な瞳。薄い唇は綺麗な笑みの形を作っている。

 どこか勝利を感じながら、前へ進み出て同じく3人共挨拶をする。プランティエ殿下は聞き終えると一呼吸おいてから、広げていた扇子を閉じて口を開いた。



「第一王女プランティエ=ノル=フェルベルグスよ。噂は予々聴いてよ。確かに麗しいわね」

「お褒めに与り光栄でございます。私も大変可憐で美しい婚約者を持てて、幸せの限りでございます」



 一瞬ピタリと騒めきがなくなり空気が止まると、プランティエ殿下は扇子を広げて口元を隠してクスクスと控え目な笑い声を上げた。

「面白い方ね」と言われたが、至って真面目な返答である。



「わかったわ。下がって良いわ」



 またもや一礼して下がる。フランシーヌが「エリオットったらまた…」と赤くした頬を扇子で隠しながら怒っていた。婚約者が褒められたら、喜んで返答するのは当たり前だよね?とチャールズに視線をやると呆れ顔で溜息を返される。何故だ。


 僕らは共に席に戻るべく、足を進めたのだった。

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