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 話が一通り済み、伯爵は別の予定のために去っていった。フランシーヌはもちろん、「僕が責任をもって邸宅までお送りいたします、お義父様!」と満面の笑みでお預かりを申し出た。

 伯爵の笑顔が少し引きつり、眉がピクリとなっていた気がしたが、僕は無邪気な子供である。知らんぷいだ。

「お父様、お仕事いってらっしゃいませ!」というフランシーヌの笑顔に、言葉を飲み込んだ様でもあったが。


 その後は院の職員と子供たちで、寝室の部屋割りや不足が無いかを見ていった。

 流石というか、伯爵は先に食糧の補充と、子供たち用の服を用意していた。

 子供達は嬉しそうに歓声をあげて、マーサさんや他の職員に見せあったりしていた。


 みんなの笑顔や歓声にほっとした様な笑顔と共に「本当に良かったですわ…」と嬉しそうに呟くフランシーヌの手を繋ぐと、後ろから従者が品物の到着を知らせてくれた。



「何か他に有りましたかしら?」



 と目をパチパチさせながら尋ねるフランシーヌに、「ちょっと待っててね」と言い、遊戯室に運び込む様に言いつける。

 従者はスッとさがって入り口へ向かうと、ドヤドヤと騒がしさと共に戻ってきた。



「まぁ、なんですの?」



 またもパチパチと目を瞬かせるフランシーヌに微笑みかけて、僕はネタバラシをする。



「僕から孤児院の改修工事完成祝いなんだ。喜んでくれると良いんだけど」



 1つ1つに傷がつかない様に包んでいた布を取り外してもらい、木工職人に礼を言った。

 フランシーヌへプレゼントに触れてみる様に言うと、おずおずと近づき横長の箱にゆっくりと触れた。



「とても手触りが良いですけど、箱?ですわよね?」

「凹みに手を入れて上板を上へ上げてみて」

「こう…?あ、開きましたわ!」


「そこには子供達のおもちゃや道具とか、なんでも入れられる様にしてもらったんだ。そして閉めて蓋部分に座ってみて?」


「蓋にですの?こう?高さは丁度良いかしら。箱に座るなんて不思議な感じですわね」

「いろいろな使い方が出来る様に、こういう形にしてみたんだ。例えば部屋を区切る仕切りにとか。何個か繋げて上で横たわっても良いし。あとは並べて、2人ずつ座ってみんなで字を書く勉強をしたりとかね」


「エリオット様…!そんな事まで考えてくださったのですね…!!」

「黒板は大き目のものを制作してもらっているから、後日出来次第届けてもらうね。机は先に作っても邪魔になってはいけないと思って、相談しようと思ったんだ」



 どうかな?と気恥ずかしくて目を伏せてしまった僕は、急な衝撃に全く対応できず、言葉も出なかった。

 フランシーヌが、勢いそのままに飛びついてきたのだ。



「嬉しいわエリオット!こんな嬉しいプレゼントは初めてよ!!」

「ふっっフランシーヌ!」



 首に手を回してはしゃぐフランシーヌの全力無邪気笑顔に、染まる頬に、キラキラと輝いて潤む瞳にっっっ可愛さの化身が降臨して僕を容赦なくめった刺ししてくる!!心臓が〜〜〜!!いや、その前に決壊するのは鼻か?!なんだ何処を押さえたらいんだ?!いや今押さえたらフランシーヌを抱擁してしまうのではないか?!これはアレだ!打つ手なしの無防備、どっからでも捌きやがれぃな状態?!!



「…っコホン、フランシーヌ様どうぞその辺で…」

「は!!私ったら!皆さまの前ですのにっ」



 従者が見かねて声を掛けてくれ、パッと一歩下がって頬に手をやるフランシーヌ。ありがとう。さすが僕の従者だ。もう少しで赤い運河を作ってしまうところだったよ。



「いや、喜んでもらえて何より僕も嬉しいよ」



 と息絶え絶えに顔を半分片手で覆い隠しながら、片手を膝についてちょっと落ち着くまで息を整えた。

 後ろから木工職人の「あんなに喜んでもらえるのは職人冥利に尽きますな」と呟きが聞こえてきた。


 そうなんだ。僕のフランシーヌは可愛いの化身なんだよ。ただとっても屈強で容赦ない可愛さの化身様が付いているんだけどね。

私が想像する可愛さの化身様は、ツインテールのゴリマッチョ(笑

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