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第7話 その後の出来事

 その後、日が暮れ始めユリウス達は帰路に着こうとした時、茂みの方から何か来るのをユリウスが感じ取った。


「お前ら向こうから何か来る警戒しろ。アリサは俺の後ろに隠れてくれ」


 ユリウスは何かが来る方向を指さし教えた。


「わかったなの」

「了解だ」


 二人は了解の意を示した。そしてアリサは携帯していた片手直剣の柄をつかんでいた。ギルは何も警戒せず立っていた。ユリウスに丸投げする様だ。

 それから一、二分が経過した頃イノシシの容姿をした魔物が姿を現した。名をブルーワイルドボアという。ワイルドボアの子供である。子供では青い毛が特徴なためそう呼ばれている。そして今回遭遇したのは青い毛がほんのわずかに残っている程度しかないもうほとんど成体である個体である。


「ブルーワイルドボアか。ここは俺に任せとけ試したいこともあるしな」

「いざとなったら参戦するよ」


 アリサがそう言ってきた。ギルはじゃあ、任せるという一言で済ませた。


「……ブルルル、ブフッ」


 ブルーワイルドボアは蹄を立て地面を蹴ってい、その際にザッザッという音を立てながら。そして、いきよいよくユリウス目掛けて突進してきた。


「……天罰の剣」


 ユリウスは抜刀と同時にそういうと横薙ぎに払った。払う少し前に光が集約し払うと同時に収束した。そのまま剣(枝)で薙ぎ払うと同時にブルーワイルドボアは消し飛んだ。その後、その場にはブルーワイルドボアの残骸等はなかった。そう文字通り跡形もなく消し飛んでいた。


「……ふむ、手加減はしたつもりだったのだがな」


 ユリウスの持っていた剣(枝)が灰になって消滅していた。それにユリウスは気が付き俺もまだまだだなと心の中で言う。枝はユリウスの剣技に耐え切れなかったのだ。そしてユリウスは近辺を見渡し新しい手ごろな枝を拾った。


「え!?何今の」

「なるほど、完成すれば火力はすごいんだな」


 ギルとアリサは感嘆していた。だがギルはその表情に呆れが少し混じっていた。そしてアリサはユリウスの技を見て、目を輝かせていた。


「まぁ、これが天罰の剣かな。相当手加減して火力を落としたつもりだったのだが……くっ!」


 ユリウスがそう話している直後、体全体を強烈な痛みが襲った。そう定番になるかもしれない筋肉痛だ。先の技を使った代償である。そうまだ使うべきレベルまで体が追い付いていなかったのだ。そしてその辺にユリウスは転がった。


「大丈夫?お兄ちゃん」

「ああ……さっきの技のせいで体中筋肉痛で動けん。ははは」


 ユリウスは苦笑いを浮かべた。

 ギルはそうなるであろうと予測していたかの様な表情をしていた。

 

「あんな大技手加減してても、まだ不相応なんじゃないか」

「……確かにそうかも、だな。手加減すれば何とかなるかなと思っていたからな。まぁ、アリサに完成形のやつを見せたかったってっのもある」


 ユリウスの言葉を聞きギルはああその為にやったのかといって納得していた。ギルもユリウスの実力は認めているからこそ流石にそんなことは迂闊にしないだろうと思っていたからだ。少しだけやるかもしれないという思いがあったことは内緒だ。


「お兄ちゃん、ありがとう。今のを見本にして頑張るね。それと動けそう?」

「……うーん」


 そういわれ体を動かそうとするがまったく動かなかった。一部の筋肉が酷く肉離れを起こしている部分もあり体が思うように動かない。


「全く動かんな。ピクリともしねーこれは辛いものがあるな。誰か肩を貸してくれないかな」


 ユリウスがチラリとギルを見た。するとギルは「はぁ」とため息をつきユリウスに肩を貸した。


「すまんな」

「なんとなくこうなるとは思ってたよ」


 ギルはもうすでに悟っていた。

 その帰り道アリサがユリウスの腕とかをつつき兄が苦悶するのを楽しんでいた。


 その後ユリウスは多少回復し歩けるようにはなっていた。そしてギルと別れユリウスとアリサは屋敷に戻っていった。

 すると使用人達の声がした。


「お帰りなさいませ、お嬢様。どちらにいっておられたのですか」


 一人のメイド服を着たアリサ専属の使用人であるフィニアが出迎える。少し怒っているような声のトーンであった。何も言わずにどこかへ消えたのだ当たり前である。


「……お兄様を見かけたので何をしに行くのか気になって後をつけてたなの」

「わかりました。クレア様がお呼びです。執務室まで来るようにとの事でした」

「わかったなの」


 そういうとアリサとユリウスは執務室に向かう。執務室の前に到着すると、ドアを三回ノックした。「どなた」という返事が来たのでユリウス達は自分であることを伝えた。「入って」という返事が返ってきたのでドアを開け執務室に入室した。


「呼んだ理由はわかるわね?アリサ」

「はい……」

「なぜ、他の授業を何も言わずに休んだんの?何か報告をしてくれればそれでよかったのよ」


 クレアは叱るように言った。そしてクレアが報告しなかったことに対して咎めているのは簡単な理由からだ。

 そう昔冒険者をやっていた頃報告が行われてなくて、痛い目をしたことがあり報告の重要性を教えたったからだ。ユリウスはアリサの味方ではあったが今は何もしない方がよいと思いあえて割り込まなかった。

 アリサは俯きながら答えた。少し声に嗚咽が入っていた。


「……だって、お、にい様に……ついていくな、んて言ったら止められると思っ、て。ごめんなさいなの」


 アリサの理由を聞きクレアはまぁ仕方ないかと思ってはいた。ユリウスは常に自由にしていたためそれを見て気になるのは仕方ないと分かっていたからだ。そしてアリサが窓からユリウスを見ていたという報告を受けていたからなんとなくの予想はしていた。

 そしてクレアはアリサに報告の重要性を教えていた。


「母さんそのくらいでいいと思うよ。だってアリサには悪気はないしまだ知らなかったわけだし」


 ユリウスはちょうどよさそうなタイミングで助け舟を出す。


「そうね……ごめんなさい、アリサ。これだけはどうしても知っておいて欲しかったの」

「う、ん……」


 アリサは涙目になっており泣くのをこらえていたのだ。


「それとユリウス昼間の報告助かったわ。街道の近くにワイルドボアが数匹いたからもう少し遅れてたら怪我人が出るところだったわ」

「当たり前のことをしただけだからさ。気にしないで」


 クレアはユリウスにお礼を言った。そしてユリウス達は執務室を後にした。


 アリサはこらえていたものが解放されたのかユリウスの前で泣き始め、ユリウスはアリサを抱くようにして胸を貸した。


「もうすぐ飯になるから着替えて準備をしようか」

「う、ん」


 ユリウスはアリサをなだめてから部屋まで付き添った。その後ユリウスは自室に戻り、服を着替えてからリビングに向かう。少し早かったのか料理の準備などをされていた。その様子を見たユリウスは邪魔にならない様に庭に出て夜風に当たりながら操糸術の練習をしていた。そこへアリサが合流する。そのため練習を中断し糸をズボンのポケットにしまった。


「お兄ちゃん、さっきはありがとうなの」

「どういたしましてだな」

「……ねぇ、前から気になっていたんだけどお兄ちゃんは何を目指してるの?」


 ユリウスはそれを聞き少し考えるしぐさしすぐに答えた。


「俺は、魔導士とか魔法使い的なのを目指すつもりだ」

「え!?あれだけの剣技があるのに何で?」

「剣はもう十分に強くなったからな。それに元々は魔法を使いたかったからそっちを目指すんだ。最終的に両方極めればカッコイイし今よりもさらに強くなれる気がするからな」


 それを聞きアリサは自分は何から鍛えるかを聞いてみたくなった。だがユリウスのことを聞きアリサはそちらについて聞きたくなった。


「でも、それじゃ中途半端で剣も魔法も極められないよ」

「……まぁ、お前も見ただろ俺の技を。だからもう十分鍛えた……いやもうこれ以上は伸びない、だから極めたと言うべきかな。もしも俺よりも強い強敵が出現すればチャンスはあるだろうけどな」


 アリサは考える素振をしてから答えた。


「……でもお兄ちゃんと私って一つしか年が違わないのになんで極めたなんて言えるの?だって極めるにはそれだけの時間じゃ無理だと思うなの」

「あ……まーあれだ俺も色々あったんだよ。そう色々とね」

「え、でも——」


 アリサが口を開こうとした瞬間、ユリウスは話を遮った。


「そー言えばお前聞きたいことがあったんだろそんな顔してたし」

「そうだったの。私、魔法も使えるなの。だからどっちを鍛えればいいのか教えてほしいなの」

「それは俺への当て付けかな?」


ユリウスは悪い顔をしていた。アリサは頬を膨らめながら反論した。


「ち、違うなの。むーう……お兄ちゃんの意地悪」

「ははは。悪かったって、そう拗ねるなよ」


ユリウスは笑いながらアリサの頭を撫でくり回した。


「それはそうと魔法か剣か、か。……うーむ、悩むな俺はお前の魔法を見たことがないから何とも言えないが剣を鍛え上げるのを勧めるぞ」

「なんでなの」

「それはなアリサ、お前の太刀筋が原因だな」

「原因?」

「ああ、でも悪い意味じゃないからな。妹よ、お前は筋は良いけどまだ自分にあった型になってない。それにも関わらずあれ程まで剣技を鍛え上げていたその直感と才は本物だ。故にその原石を磨けばさらに綺麗になる。つまりは実戦と稽古を積めば今よりさらに強くなるはずだ。最後に個人的な見解を言うならば恐らくだが成長速度は魔法を鍛えるよりも速いだろな」


ユリウスは長々と説明した。アリサはその解説を真剣に聞き自分に何が足りなかったのかをしっかりと理解していった。そしてアリサは「魔法はどうすればいいの?」とユリウスに質問した。


「俺は使えないから何とも言えないがそうだな……魔力を鍛えるなら魔力を消費しながら剣の鍛錬をするとかかな。魔力を何もせずただ消費させていくのは結構集中力を使ったり疲労すると聞いたが実際はどうだ?」


ユリウスは自分ではやったことがないためアリサに実際はどうかを聞いた。そしてアリサは「そうだよ。あの稽古は大変なの」と短く答えた。ユリウスはその返答を聞き悪い顔をしていた。


「なら、魔法については頑張って学ぶしかないが魔力と剣は同時に鍛えられるぞ。ついでに言うと集中力も一緒に鍛えられるし疲労への耐性も上げられる」

「そんないい方法があるなの」


アリサは嫌な予感を覚えたがまさかそんなことはないだろうと思い忘れることにした。だがその予感は近い未来当たることになるとはアリサには知る由もなかった。そしてそれをユリウスがアリサに方法を話そうとしたときシスが話掛けてきた。


「お。お前ら一緒にいるなんて久しぶりの光景だな」

「そうですか?シスお兄ちゃん」

「たしかに久しぶりの光景になるな兄さん」


ユリウスはシスへそう答えた。シスもユリウスと話すのは久しぶりだった。最近は学ぶことも多くなかなか会う機会出来ていなかったのだ。


「ユウは最近どうだ?スキル鑑定後からそのあれだなよく出掛けてるな」

「兄さん気を遣わなくいいぞ俺はあまり気にしてないし強いからな」


アリサはフォローする様に言った。


「そうです。ユウお兄ちゃんはすごーく強いなの」

「そうなのか?見てない内に変わったのか。なら一戦やってみる?」


シスがそう言ってユリウスがその申し出を承諾しようとしたとき屋敷の方から使用人が食事の支度が出来たことを伝えに来た。


「お嬢様方、お食事の準備が整いました」

「わかった。悪いが兄さんその申し出はまたの機会に」


シスもその意見に賛同した。そしてアリサはその試合が見れなり残念がっていた。


「残念だがそうするか」

「むぅー残念なの」


そしてアリサ達がはリビングへと戻った。


それから三時間後。

アリサはユリウスの部屋で勉強を終えてから直ぐ寝落ちしてしまっていた。


「全く、仕方がないやつだな。だけど、よく頑張ったな」


ユリウスは微笑しながらアリサをお姫様抱っこし自分のベッドに寝かせた。そして頭を撫でながら「頑張ったな」と言う。


そしてユリウスは部屋の窓を開け外に出てた。それから直ぐに窓を閉めるとベランダから飛び降り庭に着地した。そして屋敷の敷地内から出るため門へ行こうとした時ユリウスに声が掛けられた。


「ユリウス、こんな時間に何処へ行くの?」


声を掛けてきたのはクレアであった。


「ちょっと散歩をしにいくだけだよ母さん」


ユリウスは夜の魔物狩りに行こうとしていた。夜は凶暴な魔物が出現しやすい時間帯だ。無論昼間でもいるが夜の方が目に頼る戦いは出来ないためユリウスは夜を選んだのだ。そしてユリウスにとって魔物狩りが散歩である。


「ホントに?何か企んでないわよね」

「何も企んでないよただの散歩でだよ」

「そう、ならいいんだけど」


クレアは疑いの目でユリウスを見ていたがユリウスは何もしないと主張した。無論嘘だがとユリウスは胸の内で言った。


「それはそうとアリサはどうしたの?」

「アリサは俺の部屋で寝てるよ。さっきまで勉強してたから疲れたんだろう」

「ありがとう。アリサの面倒を見てもらって」

「気にしないでくれ、俺はアリサの兄貴だから可愛がるのは当然だよ。それに母さんが忙しいのは知ってるからさ」

「ふふ、ホントにありがとうね」


ユリウスはそれだけ聞くと門を出て敷地外へと出ていった。言い忘れを思いだしユリウスは戻ってきた。


「明日、アリサ借りるかもだから」


 クレアにそう告げると今度こそ散歩に行った。


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