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第48話 元剣聖、今世初のダンジョンソロ攻略

 ダンジョン探索授業を終えてから数時間が経ち、辺りが暗くなり本格的に夜になった頃、ユリウスは授業で使っていたダンジョンの前に来ていた。

 ダンジョンの出入り口には大きな扉があり、その扉は施錠されていた。


「やっぱり鍵はされてるのか~。前々世で鍵開け(ピッキング)技術を少しかじっておいて良かったぜ。そのおかげで数秘術と組み合わせて何とか開けられそうだな」


 ユリウスはそんな独り言を呟きながら鍵穴に鍵開けに使う工具を差し込み、ピッキングをしていた。

 傍から見ると慣れた手つきでやっているように見えるが、数秘術で鍵の構造を解析してそのデータを参考に鍵開けを行っている為、実際ユリウス自体の鍵開け(ピッキング)スキルのランクは以外と低いのだ。

 そして一分半も掛からずに開錠し、扉を開けるとダンジョンに入っていきそのまま扉を閉め、奥に進んで行った。

 ある程度進むとユリウスはインベントリからランタンを取り出して腰に装備し、そのランタンに明かりを灯した。

 

「さーて、何階層あるか楽しみだな。明日の授業は屋敷でやった範囲だから聞く必要もないから気軽に長い間潜れそうだ」


 ユリウスは今にも小躍りしそうな気分でダンジョン攻略をスタートした。

 ダンジョン攻略をスタートするとユリウスは管理魔法(コンソール)を開き、その中にあるオプション機能の一つ、オートマッピングを設定した。


 オートマッピングとは、その名の通り使用者が通った道を勝手に地図として作ってくれる機能である。

 作成済みの地図内なら現在地も教えてくれる便利機能の一つでもある。

 ちなみに、完成している地図を見ると自動的にマップをコピーし、自分の物に出来る。


「前々世はこんな物なかったからソロ攻略は苦労したな~」


 ユリウスは当時の苦労を思い出し、苦笑いを浮かべると同時にどこか遠い所を見るような目をしていた。

 授業で通った道をまだ完全に覚えている為、ユリウスは殆ど時間を掛けずに第二階層に到着した。

 第二階層に到着して少し進むとすぐに分かれ道が現れ、ユリウスはインベントリにある木の棒を取り出し、その棒を立てて倒れた方に進んで行った。


 すると魔物の群れとまでは行かないが、集団と表記されるほどの量の魔物と接敵した。


「ちょっと試してみるか。……自動照準(オートエイム)


 ユリウスはそう言って二丁の銃をガンホルダーから出し、数秘術を使って新しい技の試運転を始めた。


 この技はユリウスがどこに敵がいるか把握する、もしくは視界内の銃の射程内であれば、あとは数秘術が勝手に体を動かし敵の頭部を撃ち抜いて殺してくれる技である。

 ここで言う視界内とは建物の中や障害物で見えない向こう側も含まれている。

 障害物があっても確実に敵の頭部に着弾する弾道を瞬時に導き出し、それを実行し相手を仕留めることも可能な技でもある。場合によっては跳弾なども利用する事がある。


 この技により魔物の集団はユリウスに蹂躙され始めた。

 回避も数秘術で行っているため機械のような完璧な動きで敵の攻撃を避け、あり得ない体勢から敵の頭部を撃ち抜くシーンがちらほらあった。

 敵を撃ち抜く度に彼は返り血を浴び、体を赤く染めていた。

 魔物の集団はユリウスの猛攻に一分と持たずに壊滅した。


「こんなものか。……てか我ながら強すぎるだろこの技!」


 ユリウスはリロードを済ませ、自画自賛しながら倒した魔物の素材を回収せずに、ダンジョンの奥を目指して歩いて行った。

 返り血に関しては数秘術で血を原子レベルまで分解して消していた。

 

「チーターも偶には役立つな。まあ、ゲーマーのプライド的には許せないけど、技のアイデアをくれたことだけは感謝しないと」


 先の技はFPSなどの銃を使った対戦ゲームでは有名なチートの一つであり、ユリウスはそれを参考にして銃を扱う時の技として編み出していた。

 だけどユリウスは内心複雑な気持ちでこの技を作っていたのも事実である。


 それからもこの技を使って敵を蹂躙しながら進んで行った。


「にしても雑魚しかいないな。これじゃあ素材を回収しても小遣いにならねーな」


 ユリウスは死んでいる魔物を見ながらそんな文句を言っていた。

 そして三十分ほどの時間を掛け、第二階層を攻略し、第三階層に向かって行った。


 第三階層では先ほどの第二階層と同じ魔物が出現しており、ユリウスにあっけなく殺されていた。

 少し進んで行くと第二階層では見なかった魔物も現れ始めたが、やはり彼の前では無力であった。

 

「流石にそろそろ銃以外も使わねーとな。このペースだと弾切れを起こしそうだ」


 ユリウスは数匹の魔物と戦闘しながらそんな言葉を溢していた。

 そして次の接敵からユリウスは数秘術を使って魔法の真似事をして、火の槍や氷の礫などを作り、それを使って敵を蹂躙していた。

 もちろん銃も併用して使っている。


 そしてユリウスは危なげなく第三、第四階層を攻略して第五階層に到着した。

 第五階層に到着してもユリウスは休むことなく、次の階層を目指して攻略を始めた。


「それにしても魔物の強さが変わらないな。五階層だからちょっとは強くなることを期待したんだけどな~」


 ユリウスはもはや作業の様に魔物を討伐しながら、そんな文句を呟いていた。


「SPも体感的に残り六十パーって所か。十階層を攻略したら一旦休んだ方が良さそうだな」


 ユリウスは魔物の群れを討伐し終わりどれくらい連続して戦闘すればSPが切れのかを計算し、心の声が漏れていた。

 第五階層は意外と広く、次の階層への階段が中々見つからず、結局階層全部を探索する羽目になっていた。

 第六階層に到着するとこれまでの階層と違い、所々に鉄を含んだ鉱石が顔を出していた。

 ユリウスはそれでも素材には目を付けずに進んでいた。

 今回はかなり速いペースで次の階層への階段が見つかり、今までで一番早い階層攻略となった。


 そして第七、第八階層を攻略して第九階層に到着した。

 九階層の魔物はこれまでの階層と比べるとかなり強くなっていたが、ユリウスの前では相変わらず雑魚同然に扱われていた。

 九階層は入り組んでおり、普通のパーティーなら無駄な戦闘ばかりで嫌になるようなレベルで接敵率も高くなっていた。

 後者は彼にとってはあってないようなものだが、前者のせいで彼もめんどくさく感じていた。

 第五階層と同じく階層すべてを探索してやっと十階層への階段を見つけた。

 

 十階層に降りると明らかに他の階層とは雰囲気が違っている事にユリウスはすぐに気づいた。

 分かれ道はなく一本道が続いていおり、少し進むと他の階層にはなかった大きく開けた場所を彼は視界に納めた。

 岩陰から中を覗くとそこには大きな木の棍棒を持った大型のオークのような魔物が一体徘徊していた。


「なるほど。ここはボス階層か」


 ユリウスは階層ボスを観察し、装備や柔らかそうな部位を分析していた。

 ある程度情報を集めるとボスに挑みに行った。


 ボス部屋に入った瞬間に二丁の銃を抜き、自動照準(オートエイム)で頭部にワンマガジン分の弾を撃ち込みだ。

 しかしボスに効いている素振りは無く、ユリウスを認識した瞬間に突進し棍棒を勢いよく振り下ろした。

 ユリウスはボスの攻撃を難なく回避し、バックステップで後退した。


「やっぱこの銃だと火力不足か。なら新しい戦闘スタイルの実験台になってもらいますか」


 ユリウスは銃をガンホルダーに仕舞い、ボスから距離を取って数秘術による攻撃を始めた。

 ボスが距離を詰めようとユリウスに接近すれば、ユリウスもまた距離を詰められないようにボスから離れるような立ち回りをしていた。

 そしてユリウスはボスを中心に円を描くように走り回りながら、無数の火の矢を展開しボスに放ち始めた。


「ファイアーアロー!なんてね」


 ユリウスは数秘術で魔法のファイアーアローを再現していた。

 火の矢はボスの体力を着実に削り始めたがそれでもまだ決定打になるほどの火力ではなかった。

 

 走り回るユリウスを目障りに思ったのかボスは土属性の魔法を使い、ユリウスの進行方向に土の柱を同時にいくつも作ることにより土の壁を作成した。


「おっと、あぶねー」


 ユリウスは土の壁が目の前に出現した瞬間、後方にジャンプして回避すると空中姿勢を取り、滞空しながらボスに指を向けた。

 その指先には数秘術によって作成された圧縮した炎が出現し、それをボス目掛けて放った。

 炎を放ち終えるとユリウスは地面に着地し、ボスに向かって駆け出した。


 放たれた炎はボスの右胸に命中し、皮膚を焼き、肉を抉ることで大ダメージを与えていた。

 

「グガァァァァ!」


 ボスはあまりの痛みに絶叫すると、それ程のダメージを与えたユリウスを睨み付けるかのような目で捉えると、持っていた棍棒をぶん回しながらユリウスに突進していった。


 ユリウスは今の攻撃がダメージ源になると判断し、再び同じ技を使うため指先に圧縮した炎を作り出した。


「遅い!」


 ユリウスはそう言いながらボスの攻撃を回避しながら圧縮した炎を連射した。

 そしてスライディングをしながらボスの股下を通り抜ける瞬間に、人差し指に仕込んでいた糸を伸ばし、それを超振動させながら勢い良く振るとボスの左足が綺麗に切断された。


 左足を切断されたボスは断末魔を上げながら勢いよく転んだ。

 そしてユリウスはボスの頭部付近まで歩いていき指先に炎を作成して構えた。


「練習相手ご苦労さん」


 そう言い放つとユリウスは一切の慈悲なくボスの頭部を圧縮した炎で貫いて絶命させた。

 ボスの頭部からは血がダラダラと流れ出て、血の水溜りが出来ていた。


「予想以上に消耗したな。もうちょっと思い切ったことをすればよかったぜ」


 ユリウスは背伸びをし、ボスの死体を回収した。


「さーてトイレ休憩も兼て休息でもするかー。SPも回復させねーと」


 それから小休憩を始め、暫くするとユリウスはインベントリを開き、インベントリ内のメニューを使ってボスの解体を始めた。

 解体の項目を押すだけでボスは様々な部位に解体され、その中には内臓も含まれていた。


「流石に内臓はいらねーな」


 ユリウスはそう言うとインベントリからボスの内臓を取り出し、そこらに無造作に捨てた。

 

 ダンジョンの魔物は、魔石がある状態で切り離された部位が、一定期間の間ダンジョン内の同じ場所に放置されると消滅することが確認されている。


 そしてSPが回復するとユリウスは再びダンジョン攻略を始めた。

 第十一階層からは銃を使いつつも数秘術をメインで使い、魔物が近づく前に殲滅していた。

 それ以降の階層もユリウスにとっては目ぼしい素材になる魔物がいなかった為、幾体かをインベントリに入れ、そのまま進んでいった。

 そして第二十階層に到着すると十階層と同じ、形状の道が続いており、その先にはやはり階層ボスが徘徊していた。

 ユリウスは二十階層のボスの力を確かめるため剣で戦ったが、最初の一太刀で勝負が決まってしまった。


「二十階層だからいい感じに強いかと思ってたけどまだ雑魚だな」


 ユリウスはボスの返り血を浴び、赤く染まった体を数秘術で綺麗にしながら、ボスをインベントリに入れ、今回は休息なしで第二十一階層の攻略を始めた。

いつも読んで下さり有難うございます。


『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。



これからもよろしくお願いします。


更新は毎週木曜日の予定です。

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