第3話 今世初の友
それから一週間後。
ユリウスは毎日森の奥にある開けた場所に通っていた。数秘術の訓練や筋トレ、剣(枝)の素振りをやっていた、数秘術はなんとか焦げ目を作れる火力は出せるようになっていた。そして操糸術の練習は自室でやっていた。
ユリウスは今日もいつもと変わらず、鍛錬に来ている。
「さてやるか」
ユリウスは背伸びをしてから呟く。
そうすると準備運動となってしまった筋トレをやり始めた。
走りこみから腕立て伏せやスクワットまで一通りやり数秘術の練習に移った。
掌に意識を集中させ火球をイメージし炎を作り出し、そこから球状にし、そして放つ。火球は直線に飛んでいき正面の木に着弾する。着弾場所を確認するが、やはりあまり火力が上がっている実感はない。
ユリウスはやはり火を起こす過程を想像したほうがいいのか思案した。
そしてその過程を想像するとこから始める。まず可燃性のある気体を想像しそこに着火するイメージをし、後はひたすら酸素を加えてくイメージをした。
そして再び火球を放つ。さっきよりは火力が上がっていた。
それから暫くしてスキル欄の数秘術の項目を開くとユリウスはあることを思い出す。数秘術のスキルに自動演算スキルが融合していることを。自動演算の解説をユリウスは流す程度で読んだ。
説明はこう書かれていた。
――――自動演算とは、数秘術の補助スキルにあたる物。このスキルが数秘術と融合していることにより能力の真価を発揮する。このスキルが融合していない場合、発動までの速度の向上以外の効果はない。融合している場合数秘術に必要な論理術式等を短縮し構築に必要な過程をイメージする必要はなく発動までの速度が大幅に向上する。
しかしスキルの成長速度が通常よりも遅くなる。
等々、長々と説明文が書かれていた。
(なるほど。それは遅いわけだ)
ユリウスはそう結論を出し鍛錬続ける。
同じ技を繰り返し使用し続け一時間が経過した。
(これ、もしかして簡単なことを常時発動するようにすれば効率よく他の鍛錬が出来るのでは?)
そう考えたユリウスは早速数秘術の術式を変えた。まだ使い慣れてないため切り替えのイメージが必要なのだ。術式を周りの二酸化炭素を酸素に変換するただし体内の二酸化炭素は変換しないよう設定し、任意のタイミングで術式を解除できるように設定する。
これによりとても少量だが自分を中心に半径数十センチ内の二酸化炭素を酸素に常時変換し続けるようになったため成長に必要な経験値が先ほどの練習に比べると一回あたりの獲得量が少なくなるが、使用回数が増ることにより一時間あたりの経験値効率が上がる。
さらに他の作業もやりながらできるため練習の効率が上がったが常に精神力が消費されるため徐々に疲労が溜まっていくので加減は必要であるがユリウスにとっては、並大抵の疲労でない限り疲労と認識しないため長時間使用ができるため、レべリングが楽になり、その副次効果でその疲労をうまく使うことで剣の素振りなどの基礎練習に負担をかけ、鍛錬としては質のよいものになっていく。
ユリウスは予想どうりの結果が出て満足し、そのまま剣の素振りを始めた。
「……一、二、三、一、二、三」
三の単位で素振りを数えていた。昔からこうして練習していたため癖が出ていた。
そうして素振りをしていると近づいてくる気配に気がつく。その気配は近くの草むらに着いたと同時に止まる。
「誰だ?そこの草むらに隠れているのはわかっている出てこい」
ユリウスが少し大きな声で出てくることを催促すると草むらに隠れた人物はバレていたことを知り、とぼとぼと出て来る。そこに現れた人物は金髪で赤い目をしていた。
「ふむ……たしかギルバートだったか?隣の屋敷の」
「うん、僕はギルバート=S=メイザース。君は?」
「ああ、俺はユリウス=L=アルバートだ。よろしくな」
「よろしく」
互いに一応は自己紹介をした。
そして名前と家名の間にアルファベットが付く者はこの国では英爵家だけである。王族や貴族の場合名前と家名の間にフォンなどのアルファベット以外のものが付く。
故にユリウスはこの者が英爵家であることがわかった。しかし隣の屋敷ともよく交流があったため顔や名前を覚えていたのだ。小さい頃は様々なことについて勉強していたため、会う機会は少なかった。
メイザース家はクレア達のパーティーメンバーであり、現在統合領地クレイドルを共に治めているもう一人の領主だ。そしてギルバートはそのもう一人の領主の息子である。
クレア達は邪龍討伐後に王からの褒美で領地をもらったが一人で管理するのは無理だという言い分からパーティーメンバー全員で収めることになったのだ。
今、他のものはというと絶賛旅に出ている。クレア達は子供がいるため共にいけなかったのだ。他の面子は面倒ごとをクレア達に間接的に押し付けていた。
この領地は辺境の地にあり、その近くには魔物が多く棲む森がある。
今ユリウスがいる森がその森である。
「にしても、何故こんなところに着たんだ?」
「前からどんな場所か気になっていたから。本当は今日は偵察して帰るつもりだったけどこの近くまで来たら人の気配がしたから試しに見に来たってわけ」
「なるほどな。……なあ一つ提案だが俺と一本模擬戦しないか先相手の頭を軽く叩いた方が勝利ってルールで」
「……別にいいよ。でも何で?」
「俺見てのとおり模擬戦できるような相手がいないし、こんなとこまでくる奴なら結構強いかもしれないからな」
「なるほどね。わかったやろ僕も歯ごたえのある人やってみたかったの!」
ギルバートは笑顔で返事をした。
そうしてユリウスとギルバートは互いに背中を付けたらそこから十歩前に歩いた。
「よしこれくらい離れればいっか」
ユリウスがそう聞いてくる最中に近くに落ちていた手ごろな枝をギルバートは拾った。
「そうだ、僕のことはギルって読んで欲しいそっちのほうが聞きなれてるから」
「了解だ。この石をそこの木に当てるからそれを合図にしよう」
「わかった」
そういうとユリウスは気に目掛けて石を投げ、石が木に当たりコツンという音がした。
それを合図にしていたため互いに抜刀した。互いジワジワと距離を縮めて行った。そして剣(枝)の間合いに入った瞬間お互いの剣どうがぶつかりコンコンという音が響いた。ユリウスは一刀でやっていた。
ギルは連続攻撃をし、ユリウスは全然余裕を残し、軽くやっている。
そこでユリウスはふと一瞬思った。
(この構えと剣筋あいつに似ているけど気のせいか。流石に世界が違うんだいるわけないよな。ただ似てるだけとかなら世界が違ければありえるだろう。しかもあいつほど強くないしな。)と
そのためユリウスは世界が違うからありえないと結論を出し、目の前の戦いに集中した。
ギルが先制してきた。一気に距離を詰めてくると左から右に薙ぎ払ってきた。ユリウスはそれを難なく躱し下段から一撃をいれた。ギルはそれを紙一重で避けカウンターを仕掛けてきた、だがユリウスは上段へ行った剣を無理矢理上段斬りにしカウンターを受け流しそのいきよいを利用し追撃をいれ、ギルの頭を軽く叩き勝負が着いた。
「ま、負けたー!ユリウス強すぎない」
「いやいや、ギルお前も強かったぞ。いい太刀筋だったぜ。鍛錬を積めばどんどん強くなると保証するよ」
「……うん、ありがとう」
二人は笑い合いながら話をしていた。
「なぁ、お前が良ければでいいがこれからも今日見たいに模擬戦とか一緒にやらないか?」
「いいの!?僕もそれを言おうしてたとこだよ」
「よし、決まりだな。これからもよろしくな」
「うん!」