第44話 新パーティー結成
序列発表から一週間が経ち、ユリウス達は段々とクラスに慣れ始めてきた頃、他学科との合同授業が行われることになった。
今回の合同授業ではダンジョンの第一階層をパーティーを組んで攻略するのが授業の内容である。
パーティー構成は主に他学科との合同でなくてはならないが、人数的な問題で組めない場合のみメンバー全員が同じ学科で組むことが許されている。
そしてユリウス達四人は、現在マリアーヌに呼び出されていた。
他学科であるアリサは担任から呼び出された事を聞いていた。
「おっ!来たか」
出迎えたのは彼らを呼び出した張本人であった。
「マリー先生、呼び出した要件はなんですか?」
「ああ、それはだな合同授業についてかな」
「ふむ?……もしかして俺らだけ参加できないとか言わないでくださいよ」
ユリウスは悲惨そうは表情を浮かべ、冗談半分で言った。
「そのもしかしてと言ったらどうする?」
「学長の所にカチコミに行く!」
「それはやめてくれ、私が困る」
ユリウスのそれを聞くとマリアーヌは頭を押さえながら言った。
そんなマリアーヌだったが仕切り直す為、手を一度叩いた。
その様子を見てユリウスは苦笑いを浮かべていた。
「で、本当の要件は?」
「合同授業についてまでは本当だよ。そこから先なんだが、それはお前たち四人でパーティーを組むことは許さないってのが要件だよ」
今度こそマリアーヌは真剣な表情でユリウス達に告げていた。
だがアリサはそれに不満を持ち、マリアーヌに説明を求めていた。
「先生なんで兄さんとパーティーを組んじゃダメなの?」
「すまんな、これは学院長の指示だもんで私にはどうにも出来なかった。私個人としては組ませてやりたいんだけどね」
それを聞くとルミアは真剣な表情で口を開いた。
「理由を聞いてもいいですか?」
「もちろん構わないよ。……学院長が君達はパーティーとしてもう既に学生の域を超えていると言っていたんだ。……私は君たちの実力をまだよく知らないが、連携してドラゴンゾンビを倒したと聞いているよ」
「それは違います!……あれはユウ君が一人で倒したんです!」
ルミアはマリアーヌの間違っているところを正そうと強い口調で言ったが、そこでマリアーヌはユリウスに言葉を投げた。
「って言っているようだけど実際どうなんだユリウス」
「あの時は三人の援護がなかったら正直やばかったですかね」
「でも……」
途中で口を挟もうとしたルミアをマリアーヌは軽く手を上げ、言おうとしていたことを遮った。
「最後まで聞いてれやれ」
「じゃあ続けるぞ。もし二人の援護がなければ決め手が不足していた状況だったから良くて引き分けか俺が死にかけてギリギリで殺れたくらいだった。少なくとも五体満足に生還はできなかっただろうな」
「その時の対応はどうだった?」
「恐怖に押しつぶされながらも的確な判断で援護し、とっさの事だったけど互いに役割がかぶってなかったな。いい連携だった」
ユリウスの評価を聞き、マリアーヌはうんうんと頷きながら二人の方を見た。
「と言っているがそれでもか」
その時のマリアーヌの表情を見ていると先にアリサが折れ、暫くしてルミアも根気負けしたかのように小さくため息を吐いて、アリサ同様に折れるしかなかった。
それでも二人からはまだ不満があるように感じ取れた。
そこで今まで黙っていたギルが口を開いて話に参加してきた。
「僕も学長先生の意見に同意かな」
その言葉はマリアーヌに向けられた物ではなく、アリサ達に向けて言っていた物だった。
それに気づいた二人は「え?」と少し驚きを含んだ声を漏らした。
二人はギルも自分たち側なのだと思っていたらしく、意外だと言わんばかりの表情を浮かべていた。
その声を聞くとギルはその続きを語り始めた。
「ねぇアリサ、そしてルミア僕たちってさもう互いに言葉を交わさなくてもアイコンタクトで次どう動けばいいか分かるでしょ」
「うん、そうだね」
ルミアの言葉に続き、アリサも頷いて同じ意見であると返事をしていた。
ギルはそれを確認して続きを話し始めた。
「多分学生でそこまで息の合った動きは普通はできないと思うんだよ。だってあったばかりの人の癖や立ち回りは分からないじゃん。もし簡易で知らない人とパーティーを組んだ時、連携が出来なかったらお互い危ない目に合うはずなんだよ。だからそうならないようにするための授業のはずだから、僕らが組んだら学習にならないから学長先生は組むのを禁止したんじゃない?」
それを聞いた二人は確かにと納得し、不満も少しは和らぎ始めていた。
実際のところギルも学院長がそんな糸で言ったのかは分かっていなかったけど、この場を丸く収めるためにもそれっぽい事を言っていた。
マリアーヌはこれに便乗し上手く話を進めようとしていた。
「ギルバードが言った通り、この授業は冒険者になってパーティーを組んだ時のことも想定して行っている。ゼロから始めるより少しでも経験があった方がいいという学院の方針でもあるんだ」
マリアーヌが今言ったことはギルの言葉に乗ってはいるが、今回の授業の目的の一つになっているのは事実だ。
実際経験があるとないとでは結構な差が出るのは誰でも知っていることだ。
そのためこの学院はなるべく経験を積ませようという方針で動いている節がある。
「確かに言われてみれば私たちが組んだら意味がないなの……」
「そうだね。そこまで考えが回らなかったよ」
二人が納得したのを見るとマリアーヌは言葉を続けた。
「納得してくれたようでよかった。話は済んだからこの後のことを考えてみるといい。例えば誰と組むことにするのか、とかさ。……とりあえずこの件はこれで終わりだ。お前らから何かあれば聞くよ?」
「俺は特にないかな~」
ユリウスはそう言うと三人を見たが、三人共首を横に振った。
「じゃあこれで撤収させてもらうよ先生」
「気を付けて帰ってね」
マリアーヌは手を振りながらユリウス達を見送った。
そして合同授業当日いつも通り教室に入りるとそれに気づいたソフィーが「おはよう」と挨拶しながら近づいてきた。
「おう、おはよう」
ユリウスに挨拶を返され朝から上機嫌なソフィーが昨日呼び出されたことを聞いていた。
三人は昨日合ったことを言うとソフィーも心配してくれいた。
そうこうしていると朝礼が始まった。
朝礼後今日の授業が行われる場所に四人で移動した。
ダンジョンの入り口前に各学科の生徒が全員集合し、教師からの説明を受けていた。
説明内容はザックリ言うとダンジョンの第二階層への階段があるところに設置して台から巻物を持ってくるのが課題でその過程で倒した魔物は各自パーティーメンバーで相談して売るなり何なり好きにしていいということであった。
そしてパーティーメンバーが決まったら教師に報告するのと今日の授業は一日かけて行われると旨であった。
パーティーメンバーの上限は六人までであり、最低でも四人で組むよう前々から告知されていた。
ユリウスはすぐにソフィーをパーティーに誘うと緊張しながらもOKのサインをもらった。
ちなみにアリサ達は他に誘われたりし、すぐに決まっていた。
ユリウスは序列が低い事が影響し、誘う者がいなかった。
だが本人はそう思ってはおらず、単に出るタイミングが遅れたと感じているだけだった。
「完全に出遅れたな」
「そ、そうだね。でもまだ決まってない人もいるから大丈夫だよ」
ユリウスはソフィーと会話しながら辺りを見回していると、良さげな人物を見つけ声をかけに言った。
その時ソフィーは別で人物を見つけたため、その人を誘いに行くと言って一旦別れた。
ユリウスが目を付けた人物は腰に片手直剣を装備し、左腕には盾を装備していた。
「なあまだパーティー決まってないんなら俺と組まないか?」
「俺でいいのか?」
「ああ、俺もパーティーメンバーが中々捕まえられなくてな」
「なるほど。俺と同じ出遅れ組か」
その剣士は苦笑いを浮かべた。
「俺はアレスだ。よろしくな」
「ユリウスだ。よろしく」
二人が自己紹介を終えると、ちょうどいいタイミングでソフィーが猫の獣人の女の子と一緒にユリウスの所に戻ってきた。
「ユリウス君ルナも一緒にいい?」
「もちろん大歓迎だよ!じゃあ改めてユリウスだ。よろしく」
ユリウスが自己紹介すると彼女も自己紹介を始めた。
ルナはユリウスと同じクラスで学科序列は真ん中より少し下である。
ユリウスとルナは互いにあまり話したことのない間柄だが、ソフィーがユリウス達以外でよく話している人物の一人だった。
「私はルナよ。召喚術をメインで使ってるのよろしくね」
ルナも自己紹介を終えると顔を知らないアレスがユリウス以外の人物に自己紹介をし、ソフィーもおどおどしながらだったがそれに続いていた。
その後互いの役職決めを始めた。
「アレスは前衛でいいよな」
「もちろん。ユリウスも前衛か?」
アレスはユリウスが装備している二本の剣を見ながら言ったが、それに気づいたユリウスは首を横に振って否定した。
「いや今回はこの武器を使いたいから中衛をやるつもりだ。いざという時だけ剣を使うつもり」
ユリウスは剣の他に装備していた銃を叩きながら言った。
アレスはその武器をまじまじと物珍し気に見ていた。
「見たことない武器だ」
「この武器は飛び道具なんだ。詳しく説明すると遅くなるから聞かないでくれ」
「わかったぜ」
その後ユリウスは戦闘で使う為一応銃の大まかな説明だけした。
「一応三十メートルくらいが射程だと思ってくれればいいよ」
それを聞くと一同頷いて了解の意を示していた。
そしてソフィーとルナは魔法職の為必然的に後衛になった。
「じゃあポジション決めね。ユリウスは実戦経験があるんでしょ。意見を聞いても?」
「ああいいとも。一列の時はアレスが必然的に一番前になって次いでルナ、ソフィーそして俺の順だな」
「なんでユリウスも前じゃないの?」
「ダンジョンだと前と後ろからの奇襲を警戒しないといけないから必然的に後衛職には向いてないんだよ。奇襲されたら確実に近接戦になるから近接もできる後衛職以外は基本真ん中に陣取ることになる」
それを聞いて三人が納得の表情を浮かべ、順調にポジションも決めていき、最終的に立ち回りまでザックリと決めていた。
二列の時は前に男二人、後ろに女二人という陣形もしくは前にアレスとルナそして後ろにユリウスとソフィーの陣形にすることになった。
そこまで終えるとパーティーが結成したことを担当の教師に報告し、ダンジョンに潜り始めた。
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