第42話 合格発表と入学式
翌日、王立第一学院の広場にて合格発表行われ、ユリウスらは合否の確認のため学院を訪れていた。
「ドキドキするなの」
「ふふ。今日のことが気になって、アリサちゃん昨日は全然寝つけてなかったもんね」
「そう言うルミアこそ、実際はあまり寝てないなの」
「私もアリサちゃんと同じで今日の合格発表が気になちゃって……」
「まあ二人とは違って、ユウはぐっすりだったけどね」
そんなことを話していると合格者が書かれた紙が張り出された。
すると蟻が群がるようにその場にいた人間が集まってきた。
「クソッ!見えない」
「ちょっと出遅れたね」
ユリウスとギルはそんなことを言いながら人を掻きのけて進んでいった。
何とか見える位置まで来ると、四人は自分の受験番号を探し始めた。
そして自分の受験番号が書かれているのを確認すると、ギルとユリウスはガッツポーズをした後互いに顔を向け微笑し、ルミアとアリサは互いにハイタッチをして喜んでいた。
四人は何とか人混みから脱出すると、少し離れたところまで移動し一息ついていた。
「やった!全員合格したんだね!」
ルミアの喜ぶ顔を見て、その場の空気が和みながら会話を続けてた。
「お兄ちゃんは周りと圧倒的な差をつけて合格したんでしょ。流石なの!」
アリサはいつも通り謎の尊敬の眼差しユリウスに向け、ユリウスはだろと言いたげに胸を張っていた。
(うーん、なんか違うような)
そんな二人に何と言えばいいかわからないといった表情をしていたルミアとギルであった。
その様子を遠目から眺める二人組がいた。
「ほらソフィー行かなくていいの?せっかく同じ話題があるんだから愛しのユリウスに話しかけてきなよ」
それを聞いた瞬間ソフィーは一気に顔を赤くした。
「も、もおーゼナったらそういう事言わないでよ。む~」
「ごめんごめん、そんなすねた顔しないの」
ゼナは可愛く膨れているソフィーの頭を優しく撫でた。
「でも本当に行かなくていいの?」
「うん。……だって入学すればいつでも話せそうな予感がするから」
「そう。じゃああたし達は帰るとしますか」
ゼナがそういうとソフィーは小さく頷き、ゼナの隣に並び帰路についたのだった。
ユリウス達は制服を受け取り、宿への帰路についてた。
それから約一週間後、ユリウスらは学院から寮を使ってよいと言う通知を受け取り、寮に向かっていた。
寮に着くと部屋割りを書いてある紙を渡されると、男女で別れそれぞれ部屋がある場所へと向かった。
ユリウスとギルはほぼ同じところで足を止めた。
「ユウ、僕らは運がいいね」
「だな。隣がお前なら気楽に行けるし、朝とか寝坊せずに済みそうだし」
「僕を目覚ましに使わないでよ!?」
「まあまあ気にするな」
ユリウスはギルの肩に手を置くと、ギルは顔に手を当てた。
「嫌な予感しかしない」
ギルの予感は後々的中することになるのだった。
そしてルミアとアリサも部屋が隣同士であった。
ちなみにハクタクはアリサもしくはルミアの元で世話をすることになった。
寮に入居すると各自持っている荷物を置き、中身の整理をし一部の物を部屋に置いていた。
そして整理が一段落すると寮の入り口に集まり、生活必需品を町に買いに行った。
ユリウス達は買い物を楽しみ、日が暮れ始めた頃に寮の各々の部屋に戻り、買ってきたもの部屋に置いて行ったのだった。
寮に入居してから一週間が経ち、入学式の日がやってきた。
ユリウス達は食堂で合流し、朝食を済ませると入学式が行われる会場に向かった。
会場に到着すると各々着席した。
「ところでお前らはどこの科を志望したんだ?俺は魔法科メインのサブで剣術科だけど」
「僕もユウと同じかな。近接戦も忘れないようにしないと、戦場じゃあ魔力切れになった時点で死んだも同然になっちゃうからね」
「私も二人と同じだよ。理由はギル君がさっき言ってくれた通りかな。実戦を通して剣が使えなかったら殺されてた場面がよくあったと思うし……」
ギルとルミアも実戦での近接戦の大切さを理解しているのがわかり、ユリウスはホッとしていた。
そしてアリサだけが三人とはちょっと違った。
「私はお兄ちゃんたちとは逆なの。剣術科がメインで魔法科がサブなの。もっと強くなる為に他の人の剣技を学びたかったからそっちにしたなの」
「たしかに、自分以外の技を知るのも大切ことだしな。……結局のところ全員ほぼ同じなわけか」
ユリウスのそれに三人は頷きながら、笑っていると不意に横から声をかけられた。
「あたしは剣術科一択だよ」
「そうか。剣術科にしたのか……ん?」
ユリウスは一瞬納得の色を見せたが、三人の中に一択にした者がいないことに気づき、驚きながら反対側を向いた。
「おお!ゼナにソフィーじゃないか」
「おひさーユリウス。入学試験ぶり」
「お、お久しぶりです」
ゼナはいつものように軽いテンションで話しかけていたがソフィーは相変わらずの様だ。
「ソフィー久しぶり~」
「久しぶりだね」
アリサが手を振りながら言うと、ソフィーは笑顔で返事を返した。
「ところでソフィーは何にしたんだ?」
「わ、私は魔法科にしたよ。他はえ、選んでない」
「そうか。まあ、何かに没頭することもいいことだな」
そんな会話をしていると式が始まった。
二人は急いで席に座り、壇上に上がった教師を見た。
入学式は現代日本と同じような形式で進んでいき、学院長の話に入った。
壇上に上がった人物を見て、ユリウスは驚きのあまり声が出そうになり、それを寸でで止めるとギル達に小声で話しかけた。
「お、おい、あれって陛下との模擬戦をした時にいた二人組じゃないか!?」
「僕も正直かなり驚いてるよ。まさかあの二人が学院長だったなんて……」
「陛下が言ってた意味がやっとわかったなの」
「まさかあの子たちが学院長だったなんて驚きだよ」
ユリウスのそれに続き、各々小さい声で話していた。
そしてユリウスが嫌な顔をするとつい心の声を漏らしてしまった。
「でもこれ長くなる奴だろ。俺こういうの嫌いなんだよな~」
「ユ、ユウ君嫌でも寝ちゃだめだよ。式典はしっかりしないと」
ユリウスの独り言が聞こえ、ソフィーがユリウスの方を向き小声で注意を促した。
「ええ~いいじゃん」
「ユウの気持ちはわからなくはないけど、ソフィーが言うように寝るのはダメだよ」
「わ、わかったから疑いの目を向けるのはやめてくれ……」
ユリウスは小さくため息を吐き、それを見た二人はまあ大丈夫だろうと前を向き、学院長の祝辞を聞いていた。
だがユリウスそれを聞き入れる気はなく前世で培った技を使うことにした。
(こうなったら授業で寝てることがバレないよう編み出した奥義“目を開けたまま寝る”をやるしかないな。まあ起きたら代償で目がすげー痛いけど……やらない手はないな)
そう言うとユリウスは前世で覚えたしょうもない特技を使い、壇上見ながら意識を手放していった。
その後のユリウスは微動だにせず目を開けたまま寝ていた。
そしてユリウスは夢の中で勝利を喜んでいると突然の痛みに襲われ、勝利は敗北に変わった。
「いっ!……」
ユリウスは声が出そうになり、急いで口を手で押さえなんとか悲劇は回避した。
「おいギルなにすんだよ」
「ユウが寝てるようだったから起こしてあげただけだよ。だって僕は目覚ましでしょ?」
「う、くっ、お前~」
ギルは先日ユリウスに言われたことを有言実行しただけであった。
先日ユリウスは朝起きる気配がなかったら起こしてくれとギルを目覚まし代わりに扱い、言われた当人は少し思うところがあったようで今回このような形でやり返していた。
頼んだのはユリウス自身であるため何も言い返せず苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
それを見ていたアリサ、ルミア、ソフィーそしてゼナはクスクス笑っていた。
そして入学式は何も起きず順調に進んでいき、無事終わったのだった。
この後クラス分けが行われた。
各科目クラスはA~Fまであり、クラス全体の人数はさほど多くはない。
そしてユリウス、ギル、ルミア、ソフィーの四人は当然A組になり、アリサとゼナの二人も剣術科のA組となった。
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