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第39話 国王との模擬戦

ユリウス達は現在王城にある騎士団の訓練場に来ていた。


この国には騎士団の詰め所と王城に訓練場が存在する。

理由は簡単である。非常時にすぐ王城の護衛が出来るよう精鋭がおり、詰め所にはそれ以外のたくさんの騎士達がおり在中しているのだ。

そんな理由がある為、王城に設けられているのだ。

実際はイスカンダルが使いたいからと言う、本音を隠す為の建前である。


「お兄ちゃん準備は大丈夫なの?」

「うーん?まだかな〜。……てか陛下との模擬戦言うから木剣だと思ってたけど、まさかの刃を潰した剣とか普通思わんでしょ。陛下も大胆な……」


ユリウスはそんな事をアリサに言いながら、これから使う剣を選んでいた。

先程からしっくり来る物がなく、ユリウスは首を傾げながら幾つかある剣を手に取って選んでいる。


「お兄ちゃんこれとかどうなの?」


アリサが奥から普通の剣より少し軽めの物を持ってきた。

ユリウスはそれを手渡されると、その場で軽く振った。


「まぁ妥協点って所かな。……よしこれにしよう」


 ユリウスは剣を決めると腰に鞘を付け、それに納剣した。


「ユウ君もう決めちゃった?」


ルミアが遅れて剣を持ってきた。


「いや大丈夫だよ。一応もう一本もっとこうかなって思ってたからちょうどよかったよ」


 そう言いながらユリウスはルミアから刃が潰れた剣を受け取り、その場で軽く振って感覚を確かめたのちに、腰に二本目の鞘を付けてそこに納剣した。

 

「ユウもちょうど準備できたみたいだね」


 ギルが扉を開けて入ってくると同時に、装備を整えたユリウスの姿が視界に入り、そのように言いながら合流を果たした。


「俺もってことは陛下も準備できたのか」

「そうだよ。陛下もちょうど今さっき準備できたみたい。それを伝えてほしいって伝言も預かってきたことだしね」

「そうか。……了解だ」


 ユリウスはギルからそれを聞くと装備がしっかりと固定できているかを確認し、扉に向かって歩き出した。


「じゃあ行くかー」

「行くなのー!!」


 アリサが返事を返し、扉に向かって行くユリウスに早歩きで追いつくと隣に並んで一緒に歩いていた。

 ルミアとギルもそれに続いてユリウスの後を追っていった。

 そしてしばらく歩くと今回イスカンダルと模擬戦をする場である、騎士たちの訓練場が見えてきた。


 ユリウスらが到着するとイスカンダルとその家臣が先に到着しており、そして先ほど玉座の間に居なかった三人の人物がそこいた。


「陛下!遅れてしまい申し訳ございません」

「よい、気にするな。余も今しがた着いたところだ」


 イスカンダルは軽快に笑い飛ばすかのように返事を返した。


「始める前に汝に紹介しておきたい人物がいる」


 イスカンダルは先ほどいなかった人物達に向け、手を振り近くまで来るよう仕草で伝えた。

 それを見た三人の人物はイスカンダルの元に行き、横一列に並んだ。


「ユリウスよ、一番手前におるのがこの国が誇る騎士団の団長であるエリックだ。余が模擬戦をやると伝え、訓練場の人払いに協力してくれた人物だ。いずれ汝とも関わることになると思いこの場に残らせた」


 イスカンダルが名を言うと赤髪で屈強な体格をした男が一歩前に出た。


「エリック=レイサーだ。よろしく」


 イスカンダルの後に続きエリックが一礼をして名前を名乗り、ユリウスも自分の名を名乗った後、一礼し互いに握手をした。

 そしてエリックが下がるのを確認すると残り二人の紹介をした。


「真ん中と一番奥におるのが、王立第一学院の関係者であるソニアとゾーイだ。詳しくは学院に入ればわかるから省かせてもらう」


 先と同じくイスカンダルが名前を言うと銀髪の少女と赤褐肌で金髪の少女が一歩前に出た。


「ソニア=リ=ミッシェルです。よろしくね」

「同じくゾーイ=リ=ミッシェルです。よろしく」


ユリウスは少女二人に一瞬鋭い視線を向けたが、すぐにいつも通りの顔つきに戻ると、エリック同様に名を名乗り、互いに一礼して握手を交わしたした。


「ユリウスよ、こう見えて二人は双子なのだ」

「そうなのですか!?肌の色も髪の色も対照的で気づきませんでした。確かに顔つきは似てると思いましたが……」

「ははは!やはり初めて見ると皆そのような反応を示すのだな」


 イスカンダルはユリウスの期待通りの反応を見て、満足げな表情を浮かべながら笑っていた。


「……では陛下、私たちは用事も済みましたのでこれで失礼します」


 少女達は息の合った動きで一礼して、その場を去ろうとしたがイスカンダルが二人を止めた。


「まぁ待て、折角なのだから余達の模擬戦でも見てくとよい。滅多にない機会だぞ?」

「陛下がそうおっしゃるのならお言葉に甘えさせていただきたいのですが、ユリウス様はよろしいのですか?」


 ゾーイがイスカンダルとユリウスを見ながら言った。


「どうだ?ユリウスよ」

「俺……じゃなくて私は大丈夫です」

「本人もこう言っておることだし見てくがよい」

「それでは今後の為にも、陛下達の戦いを参考にさせていただきます」


 ゾーイはエリックの隣に移動し、ソニアが隣に並ぶように立った。

 そしてアリサ達も三人に並んでその戦いを見る位置についた。

 イスカンダルとユリウスは場が開けたことを確認し、互いに距離を取るように立った。


「では始めるとしようか」

「わかりました。合図はアリサにやらせてもよろしいでしょうか?」

「ああ、問題ない」


 イスカンダルのそれを聞き、ユリウスはアリサに視線を向けた。

 アリサはそれに気づき、一瞬私がやるの!?と言いたげな顔をしたがすぐに表情を取り繕い、真剣な表情で始まりの合図を出した。


「それでは始め!!なの」


 その声に合わせて先に動いたのはイスカンダルであった。

 

(早いっ!……図体と速度があってねーぞ!?)


 一気に距離を詰めたイスカンダルは、身の丈もある大剣勢いよく振り下ろした。

 ユリウスは瞬時に剣を抜くとその攻撃を受けたが、あまりの強さにヤバいと感じ、受け流して一旦距離を取った。

 受け流したことにより辺りには金属同士が擦れる音が木霊した。


(危なかった。あのまま受けてたら剣が折られるところだったぜ。……流石戦王と言われるだけはあるな)


 イスカンダルは追撃を入れず、ユリウスに距離を取らせることを許した。


「もう一本の剣を抜かなくてもよいのか?」

「これはまだ抜くときじゃありません」

「ほぉう。余を前にしてまだ余力があると見た。それに抜かせたければ本気を出させろと言いたいのか?」

「左様でございます。……二刀では加減が効きませんので」

「面白い!!」


 イスカンダルの最後の言葉を聞くより早くユリウスが動いた。

 ユリウスの剣がイスカンダルの胸を捕らえた瞬間、イスカンダルは剣の腹を殴り、軌道を強引にずらすと自身が握る大剣を素早く振り、それはユリウスの腹部を捕らえた一撃であった。

 しかしユリウスは身を翻しそれを躱すと、イスカンダル目掛けて蹴りを放ったがそれは容易に防がれてしまったが、脚を掴まれないようすぐに体勢を変え、剣による攻撃を仕掛けた。

 流石のイスカンダルも防ぐことが間に合わず、身を引くことで回避したが剣先が胸を掠めた。


(まさかあんなやり方で剣の軌道を変えられるとはな。流石に予想外だ……てか大剣を片手でぶん回すとか完全にゴリラだろあれ)


 ユリウスは内心でそう言いながら距離を詰めた。


「……エアリアルブレード」


 ユリウスが小さくそう呟くと剣に風が纏い始め、剣速が上がった。

 イスカンダルはユリウスの連撃を大剣で捌いていた。

 

 それを見たアリサとルミアは感嘆の声を上げていた。


「す、すごい!あの速度の剣撃を捌くなんて!」

「お兄ちゃんの攻撃が効いてないなの!!」


 イスカンダルは気を見て、ユリウスの剣を弾くき剣撃を止めると剣技を放った。


「大烈斬!」


 大剣に凄まじい力を加えた振り下ろしの攻撃であったが、ユリウスも剣技でそれに対抗した。


「三の太刀無形の型〝孤月〝」


 高速で放たれた一閃は大烈斬を弾いた。


「……一閃」


 ユリウスは弾いた勢いのまま追撃に入ったがこれをイスカンダルは魔法でガードした。


「アイシクルウォール」


 氷の壁がイスカンダルとユリウスの間に生成されたが、彼の剣技の前には何の意味もなさなかったが、イスカンダルにその一撃が届くことはなかった。

 壁が砕け散った瞬間体勢を整えていたイスカンダルが剣技を放った。


「裂昂双刃」


 高速で放たれた二連撃の攻撃をユリウスは視認した瞬間に即座に体勢を変え受け流したが、イスカンダルがその瞬間を見切り腹部目掛けて殴った。

 ユリウスは間一髪のところで剣を盾にして防いだが、重い一撃はユリウスを後方に吹き飛ばした。


 アリサ達は初めて人相手に吹き飛ばされるユリウスを見て、言葉が出なかった。


(流石にヤバかった。今の一撃を防げなかったら負けてたなこりゃ。そろそろ油断せずやった方がよさそうだな。……今のアリサ達だと絶対に勝てないな)


 ユリウスは吹っ飛ばされている最中にそんな事を思っていた。

 後方の壁に勢いよくぶつかりそうになった瞬間に体勢を変え、壁に脚から着地するような感じで衝撃を流すとそのまま壁を蹴りイスカンダルに一撃を加えに行った。

 イスカンダルはそれを大剣で受け流した。

 受け流されたユリウスはそのまま地面に頭から落ちそうになったが、宙で一回転して着地した。

 そしてイスカンダルは着地の隙をついて攻撃してきたがユリウスは剣で受けた。

 力勝負では勝ち目がない為、基本は受け流しである。

 互いに殺傷能力が高い技は使っていない為本気を出せていないが、それでも卓越した剣技がぶつかり合い見ている者を飽きさせることはなかった。

 それからも激しい攻防が続いたが、ユリウスが隙をついて剣技を放った。


「大烈斬!」


 先にイスカンダルが放った技である。

 ユリウスの一撃は先の技と違い、極致まで洗礼されており受け流しを許さず大剣を叩き折って、イスカンダルの首筋で寸止めした。


「余の負けだ。……互いに真剣を使って本気でやれなかったことが悔やまれるな」

「そうですね陛下。次があれば今度こそ真剣でやりましょう」


 互いにまだまだ余力を残してこの模擬戦は幕を閉じた。

 実際真剣と刃を潰した剣とでは出せる力は違い、本気を出すことができないのだ。


「戦っていて思ったのですが陛下の太刀筋は父さんの……グレンの太刀筋によく似ています」

「そりゃ余があやつに剣を教えたからな。似ていて当然だ」

「そうだったのですか。どうりで……」


 驚愕の事実が発覚したのだった。


「それでどうだったエリックよ」


 イスカンダルはそんなことよりも感想を求めていた。


「ここまでの戦いはそうそう見れるものではありませんよ。しかも互いに本気ではなかったとしても陛下を打ち負かす者がいるとは……素晴らしいものが見れました」


 イスカンダルもエリックの感想に同意して、満足そうに相槌をしていた。

 それに続きソニア達が感想を言い、アリサ達もそれに続いて言ったのだった。


 そしてイスカンダルが何かを思い出し、ユリウスの方を向いた。


「そういえばユリウスよ、汝は学院に入るのだろう?」

「はい。そうですがどうしたのですか?」

「なーに、余から勲章の授与と共に推薦状を書いてやろうと思っただけさ」

「よいのですか!?」

「今回余を楽しませてもらったし、マーティンボロの件の礼もこめてな。……次やるときは学院の魔道具を使って互いに本気でやり合おうではないか!」


 そうしてユリウスとイスカンダルの模擬戦は互いの実力を発揮することなく終わったのだった。

 その後ユリウスはイスカンダルから貴族たちがいる中で勲章を授与され、後日届く申請書類の中に推薦状が同封されることになった。

 アリサ達の褒美については本人たちがまだ決めていないためしばらくの間は保留となり、欲しい物が出来たらイスカンダルを訪ねることになった。

 こうして今回の騒動は幕を閉じたのだった。

いつも読んで下さり有難うございます。


『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。



これからもよろしくお願いします。


更新は毎週木曜日の予定です。

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