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第2話 確認をする

あれから数時間が経ち、現在ユリウスは森と隣接している道を歩いていた。


「ふむ……スキルが無いとわな。あいつスキルを追加したとかいったくせに全くどうなっているんだ……はぁ」


 そんな愚痴を溢しながら歩いていると、近くから女性の悲鳴が聞こえ、ユリウスは急いで悲鳴が聞こえた方へ走る。

 ほんの少し走るとそこには熊の魔物に襲われている人がおり、とっさに彼は近くに落ちていたちょうどいい長さの木の枝を拾う。


(これでどこまでできるかわからないけど、一か八かやるしかないな)


 ユリウスは覚悟を決め、女性を殺そうと振り上げられた熊の魔物の腕を斬り落として、両者の間に割って入る。


「無事か?」

「ユ、ユリウス様!?ありがとうございます。ですが早くお逃げください」

「大丈夫だ。俺はこいつを抑えるから早く逃げろ!!」

「ですが!」

「領主の息子として領民を守るのは当たり前ですから。それに俺は訓練されてるので大丈夫です」


 女性はそこまで聞くと邪魔になると思い、頭を下げるとそのまま逃げていく。


「とは言ったものの。枝でこいつやれるのか?ま、やらないと死ぬだけか……」


 ユリウスは枝を半分に折ると、魔物の攻撃を回避して懐に入り、剣技を放つ。


「——二刀・斬魔の太刀」


 そして放たれた剣技により熊の魔物は首を切断されると、そのまま倒れこみ絶命した。

 ユリウスは大量の返り血を浴びながらその場に倒れ込む。

 彼は剣技を使えたことに希望を見出す。

 何せスキルが無くとも使うことが出来たのだから。

 しかし出来たはいいがその後に待っていたのは激痛を伴う筋肉痛である。

 まだ成長していない体で、剣聖時代に使っていた動きをかなり劣化させて行ったとしてもかかる負荷は途轍もない。


 その負荷のせいで現在、彼は体を動かすことが出来ずにいた。


「これはかなりキツイな。まさか準備運動にもならないような技でこれとはな」


 彼は寝転びながら空を見上げ、皮肉紛れに苦笑いを浮かべながら呟く。


「今やった感覚的に恐らく剣技は使えるだろうがかなりの威力ダウンが見込めるな。まあ少なくともスキルが無くても使える剣技はありそうだな。……あるいは何らかの力で鑑定後にスキルが表示されなかった説が濃厚だな」


 考えても仕方ないとユリウスは結論を出し、体が動かないのであれば動かずに出来るものを試す。

 そのうちの一つが操糸術である。


 ユリウスは屋敷から持ってきた少し長めの糸をズボンのポケットから取り出し、人差し指に糸を巻きつけるとその糸を垂らす。

 そして意識を人差し指に集中し、そこから巻き付けてある糸へと意識を移して行く。

 だが糸はピクリとも動かなかった。


「ふむ……何か条件的なものでもあるのだろうか」


 ユリウスは様々な可能性を思考しながら再度試みる。

 数十分それを試しやっと糸が少しだけ動いた。

 ユリウスはその感覚を忘れまいとさらに数分間練習を続ける。

 そして練習の成果もあり、糸を動かす感覚はわかったようだが、まだ自由に動かすことはできなかった。


「まーそう簡単にはできるワケもないか。でも感覚はわかったからあとは自室で練習でもするか。よし!じゃあ、次いってみるか」


 ユリウスは思考を切り替え、また別のことを試みる。

 次に行おうとしているのは管理魔法についての実験である。

 実際ユリウスは魔法を使用することが今はできないが、神龍が直接付与したものだから何とかなるだろうという軽い気持ちで実験に入る。


「とわいえ、何をどうすればいいんだ?魔法は今現在は使用できないし、かといってそれを使用するための道具っぽいものないしな~。それっぽく詠唱すればワンチャンあるか。だがこれで何も起きないと黒歴史いきだな。……ははは」


 ユリウスは苦笑いをしながらそれっぽい詠唱を始める。


「我が名を以って命ずる。開け!我が財を収めしものよ」


………………


「やっぱ何も起きねーか。これ人に聞かれなくてよかった」


 彼はそう言いながら安堵の息を漏らした。

 ユリウスは思いつく限りのことをやったが何も起きず「はぁ」という溜め息吐いた。

 それから少しの間ユリウスは思考を巡らす。

 その後ふとあることを思いつく。


「まさか、これ意識しながら上から下へスワイプするもしくはそれに似たようなことで展開できるとかないよな」


 彼はまさかな、と思いながら思いついたことを実行に移す。

 ユリウスはまず最初に思いついた案を行う。

 指を目線より少し低い位置で空を切るように上から下へと指を移動させる。

 すると何かがユリウスの前に表示され、そこにはこう記されていた。


 —————ユリウス・L・アルバート+2 六歳 Lv5

    MP――――――――

    筋力 B+  耐久 C+

    俊敏 A+  知力 A

    魔力 ??? 幸運 EX

    成長途中のため変動有り


 そこにはユリウスのステータスが表示されていた。


「これは……俺のステータスか。それにしてもざっくりしてるな数字ではなくアルファベット表示とはなー。ん?むむむ……魔力が無いだと!?……なるほど、道理で魔法が使えないわけだ。それにしてもなぜ魔力が無いんだ?……もしかして違う世界の存在だからかと言う理由ならありえるかもしれんな。まずは魔力の習得が当面の目標になりそうだな。……さーて他にも色々あるし他も試してみるか」


 彼は魔力がないことを驚きながらも、当面の目的が出来たこと自体は嬉しく思っていた。

 その後ユリウスは名前の隣にある+2と表示されているものに触れる。

 するとまた新しい物が表示された。


 ―――転生回数及びボーナスについて。

   一定レベルに到達するごとに前世のステータスが加算される。

   ステータスにボーナスが付き強化された状態。

   二回目の転生時のステータスは特殊なものとなっている。


 こう記されていた。

 いわゆる転生ボーナスの加算等についてである。

 ユリウスは「いまのところは関係ない」と思い、他を調べることにした。

 次にステータス画面の隣に上から装備品、インベントリ、スキル、メッセージ、サポート、オプションと表示されており、その中のインベントリを表示させた。


「うん。思ったとおりゲームに出てくるあれだな」


 彼はそれの中身を確認した後スキルと表示されているものに触れる。

 スキルと表示された物に触れると、ユリウスのスキルが表示された。


 ――――スキル一覧

   数秘術EX

   操糸術(特殊)S

   ???

   以下規定レベルにて順次表示

   次Lv20にて開放


 そう表記されていた。


「レベル開放か。やりがいがありそうだな」

 

 彼はそんなことを呟きながら、スキル画面を閉じる。

 そしてそれからしばらくの間、他の項目を確認していた。

 一通り軽く調べた後ユリウスは不要なものを見つける。


「メッセージはいらないな。使える者が現状いないしな、とりあえずオプションで何か送られた時のみ表示されるようにしとくか。よし次は数秘術だの実験をやるか」


 そういうとスキル欄から数秘術と書かれた場所に触れ、チュートリアル的なものを確認し終えた所で、先ほどの女性が兵士連れて戻ってきた。

 血塗れで倒れているユリウスを見て、女性と兵士が慌てながら走ってくる。

 熊の魔物が死んでいるのは見て分かったため、女性はユリウスが生きている可能性があると分かり安堵の息を漏らす。

 そして近づいてくるとすぐに声を掛ける。


「ユリウス様、お怪我はありませんか?」

「大丈夫だ。技の反動が酷かったから少し休んでるだけだ」

「ですが、血がこんなに……」


 ユリウスは女性の言葉を遮るように話し始める。


「この血は全部魔物の血だ。俺に怪我はありませんよ」

「良かった」


 女性は再び安堵の息を漏らす。

 それを横目にユリウスは立ち上がると、兵士に話掛ける。


「後始末を頼んでもいいか?俺は森の中を見回ってくる」

「お一人でですか?」

「ああ、ちょっと欲しい素材もあるもんで」

「わかりました。では領主様への報告もこちらでしておきます」


 それを聞くとユリウスは少し考え込みむ。


(流石にスキル鑑定であんな結果が出た日に、これを俺が倒したことにされると面倒だな)


 そして結論を出し、ユリウスは口を開く。


「報告は俺がやっておく。どうせ家に帰れば母さんに合うことになるから」

「わからりました。では私たちはこの魔物の処理に入りますのでお気をつけて」


 そう言うと兵士は熊も魔物に向かっていく。


(よし。これでこいつを倒したのはこの人達ってことにできるな)


 そんなことを思っていると先ほどの女性が近寄ってくる。


「先ほどはありがとうございました」

「気にしないでください。それではこれで」


 ユリウスはそう言い残し、その場を後にした。


 そしてある程度森の奥に入っていくと開けた場所に出る。


「ここならちょうど良さそうだな」


 そう言うとユリウスは先ほど出来なかった実験の続きを始める。

 そして数秘術を実際に使ってみることにした。

 まずは簡単そうなものをユリウスは想像し、下位魔法のファイアーボールを模倣した。


「では、ファイアーボール」


 そう言いながら手を前に突き出しす。

 突き出した掌から極小の火球が出現し、それを目の前の木に目掛けて放つ。

 しかしその下級が着弾した木には焦げ目すら付いていない。


「……火力が皆無だな。ははは」


 その光景を見てユリウスは呆然としながら呟くと同時にあることを悟る。

 数秘術は回数を重ねて強化され、さらに火力を上げるためには慣れが必要なスキルである。

 そのことに気がつき暇さえあれば火力を抑えて練習しようと心に決めたのだった。


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