第37話 元剣聖が作った鉄の剣
ユリウスは工房を後にし、ゼナ達と合流した。
「ゼナ完成したぞ」
「え!?……早くない?」
「そうか?こんなもんだろ」
ユリウスは手に持っている剣を差し出し、ゼナに渡した。
するとゼナは剣を少しだけ鞘からだし、刀身を眺めると剣を鞘に入れた。
「へ~思っていたよりいい剣かも。試し切りしてもいい?」
「店の中は勘弁してくれ……。やるなら店の前の少し開けたところでやってくれ」
奥から鍛冶屋の親父が出てくるやいなや、二人の会話が聞こえていたようでそう言ってきた。
それを聞くと二人が外に出て行くのに続き、ソフィーが後をついていき親父が店の入り口で立ち止まり、三人の様子を見ていた。
「じゃあいくよ~!」
ゼナは腰に付けた鞘から剣を抜くと構えを取った。
(ほぉーなかなかしかっりした構えじゃないか!)
ユリウスは内心でその構えを称賛しながら、その先の行く末を見守っていた。
「フッ!」
ゼナは勢いよく左上から右下へを剣を振った。
「おいバカッ!そんな勢いでやると……」
ユリウスは途中まで何かを言いかけたが、ゼナの方が言うよりも早く剣を振っていた。
しかし振り切ったと思うとゼナの手の中には剣が無かった。
「え?」
ゼナはその感触に疑問に覚え、手に視線を送ると案の定その手には剣が握られていなかった。
そしてゼナが感触に違和感を覚えた地点から軌跡を辿っていくと、そこには振り切られる寸前の地点に深々と地面に刺さり、そこから五十センチから一メートルほどの亀裂を石畳の地面に作っている剣の姿を捉えた。
「え?なんで!?」
「普通の剣を振り切るくらいの力で握るとこうなるってことを言い忘れてた。すまない」
ユリウスはゼナの疑問に答えを与えた後、申し訳なさそうな表情をしながら誤った。
「どういうことなの?」
「ゼナの筋力や癖に合わせて使いやすくするために、剣を軽くして切れ味を上げたんだよ。その分、刀身を少し細くして、さらにちょっと薄くしたせいで耐久力が低下したけど、今の太刀筋なら恐らく相当なことが無ければ折れないはずだよ」
「そんなことができるの?」
「ああ可能だ。……まぁしかし、エンチャントが出来ない分、剣の構造を弄ってそれっぽくしただけなんだけどね」
「でも耐久力が落ちたって言ってたけど、それって結構致命的なんじゃない?」
「そうでもないよ。大剣を全力で振り下ろした攻撃だと恐らく折れるくらいだから、相当やばい戦い方をしないで普通にやるだけなら問題ない」
ユリウスは剣の解説を始め、ゼナは刺さった剣を抜き、ユリウスの話を聞きながらまた素振りを何回かやると鞘に入れた。
「なるほどね~。確かに私の戦い方ならこれが一番なのかなー」
「ま、やるだけやってみろ」
「そうだね!」
そして二人の会話が切れたところで、その様子を見ていた鍛冶屋の親父がユリウスの元に歩いてきた。
「あんちゃん何もんだ?」
「ただの通りすがりの剣……魔法使い志望の剣士だよ」
ユリウスは途中で言葉を切り、小さく咳払いすると途中から言い直した。
「だがしかしよ……」
ユリウスは鍛冶屋の親父が言い切る前に口を開いた。
「あと二本打っても良いか?」
「あ、ああ別に構わんが条件としてあんちゃんの打ち方を教えてくれ。こっちも商売だから新しい技術は先取りしたいんだ」
「別にいいけど、これ感覚的な奴だから口だとわかりずらいから体で覚えてもらうけど良いか?」
「それで構わない」
勝手に話を進めるとユリウスはゼナの方に向き直った。
「すまないけどそういう事になっちまったからここで別れても良いか?」
「う~ん……あたしも残るよ。この剣の使い方を実戦で教えてもらいたいから。ソフィーはどうする?」
「わ、私もゼナと一緒に残ることにする」
ユリウスは「了解だ」と一言言うと鍛冶屋の親父と店の中に消えた。
それから暫くすると、工房から二本の剣を携えたユリウスが顔を出した。
それと一緒に鍛冶屋の親父が汗だくになりながら出てきた。
カウンターまで行くと二人は工房で話していた事をまとめていた。
「籠手とチェストプレートは後日取りに来るから出来たらここに手紙を出してくれ」
「あいよ。とりあえずその二つで金二枚に銀六枚だけどどうする?」
「前払いで頼むわ」
そう言うとユリウスは財布から現金を取り出し、会計を済ませると二人の元に向かった。
「すまん、待たせた」
「だ、大丈夫だよ。私も新しくこの防具買って付けてたところだから」
ソフィーが緊張しながらユリウスにそう返した。
ゼナの方を向くと親指を立て、気にしていないと合図を出していた。
そして三人は鍛冶屋を後にし、王都を出るため門を目指して歩いていた。
王都を出ると三人は近くの森を訪れた。
「えーと、なんで試し切りで森に?」
「実戦って言ってらからさ」
「軽く模擬戦的なのを予想してたんだけど……」
ゼナは正面の光景に固唾を飲み込みながら、ユリウスに話していた。
「ゼナ横!!」
その時、ソフィーがゼナの死角から襲い掛かろうとしている魔物に気が付き、咄嗟に大声で知らせた。
ゼナは間一髪のところで避けるとすぐさま体勢を立て直し、魔物に一太刀入れた。
「あ、危なかったー。ソフィーありがとう!」
「うん。どういたしまして!」
二人がそんなやり取りとしている中、ユリウスが割り込んだ。
「そんな事よりお二人さん。面白そうなのが来たよ~」
ユリウスは軽口で言ったのは正面に来ていた大型の熊の形をした魔物だった。
「「…………」」
それを見た二人は絶句していた。
その魔物はベテラン冒険者でも油断すると全滅まで行かなくても、十分パーティーに大きな被害が出る程の強さを持っているからだ。
「ほら試しにその剣で斬って見たら」
「いやいやいや、む、無理!あたしじゃ絶対無理!!」
「俺が押さえるからその隙にやっちまえ!」
「あたしじゃあ……行っちゃったよ。……はぁぁぁ」
それだけ言い残してユリウスは熊の魔物目掛けて突っ込んで行くと、ゼナは小さくを溜息を吐くとそれに続いた。
ソフィーはゼナに魔物が近づかないようファイアーボールで支援していた。
「お!来た来た。……俺が攻撃を受け流すからその隙にあいつの右腕を落としちまえ」
「だからあたしじゃあ……」
熊の魔物はちょうどそのタイミングでユリウス目掛け攻撃を仕掛け、ゼナは弱音を吐くことが出来なかった。
「もーー!どうにでもなれ!!」
ユリウスが受け流したのを確認すると、ゼナは熊の腕の下に潜り込むと剣を勢いよく振り上げた。
すると熊の腕はまるでバターでも切るかのようにすっぱりと切断された。
それを見て一瞬安堵を覚え、油断したゼナを攻撃しようとした熊の魔物にユリウスが止めを刺した。
「ふぅー。これで全部か。ゼナ大丈夫か?」
「し、死ぬかと思った」
ユリウスは熊の魔物を倒したらすぐに身を翻し、ソフィーが牽制していた魔物達を一掃していた。
「ユリウスってもしかして脳筋なの?」
「失礼な!俺は試し斬りと言えば魔物でやってたからのその癖だ!」
「その発想はない。普通は木人とかで切れ味や耐久力を見てからやるものだから!偶に模擬戦をやるくらいだよ?ね、ソフィー」
ゼナがソフィーの方を向くと、反射的にユリウスもそちらを向いた。
そこにはゼナの意見に賛成して、コクコクと可愛らしく頷くソフィーの姿があった。
「ま、まーあれだ!価値観の違いってやつだ!は、はははは」
「うーん、絶対違うような気がする」
ゼナがそう言うとそれに続きソフィーが口を開いた。
「ユリウスさんは強いから私たちとは考え方が違うんだよ」
「なんかこー慰めになってない気が……」
そんな事を話しながらユリウスとゼナは素材を剥ぎ取り、ソフィーがその素材を品質順にまとめていた。
そして持てる分だけ持つと王都への帰路に着いた。
門に着くと門番の兵士が目を丸くしながら三人を見ており、通過に少し時間が掛かったのだった。
それから中に入ると三人は素材をギルドに売り、ギルドのシャワー室のような所で汗と魔物の血洗い流すと近くのカフェに向かい軽食を食べていた。
「そういえばなんで急いで剣の調達を?」
「あたし達二人は一週間後くらいにある学園の入学試験を受けるもんでね。結構急いでたんだよ」
「ゼナは剣術科志望だから使いやすい物をってね」
「なるほど。確かになじませる時間も必要だからな」
ユリウスは何気なくその会話を聞いていたが、入学試験と言う単語を頭の中で何回か繰り返してい言っていると自分も受けることを思い出した。
「あ!そういえば俺も入学試験受けるんだった」
「え!そうなの」
それを聞いたソフィーもその偶然に驚いていた。
勿論ゼナも驚いていた。
「ユリウス君はあんなに強いからてっきり名の知れた冒険者だと思ってたよ」
「あたしもソフィーと同じくそう思ってた」
そう言うとゼナは手元にある紅茶の入ったカップを手に取り、口まで運ぶと少しだけ飲んで受け皿に置いた。
「ユ、ユリウス君はやっぱゼナと同じ剣術科志望なの?」
「いや違うよ。俺は魔法科志望だ」
「剣の腕があれだけあるのに?」
「強くなるのに行き詰ったていうか、昔からの夢を叶えるためって言った方が正しいのかな」
ユリウスの言葉に二人は驚きを隠せずにはいられなかった。
先ほどのユリウスの剣捌きを見れば誰でも同じ反応を示すであろう。
そしてソフィーはユリウスの夢に興味を持った
「夢って?」
「ああ、それは魔法剣士になることだよ。昔から魔法は上手く使えなくてな。だからそれまでは剣を磨こうと思って磨いてら、魔法使いから魔法剣士になってたってわけさ」
「いいねそうやって夢に向かうのって」
ソフィーが純粋にその意見に共感しているのを見て、ユリウスは罪悪感を覚えた。
(こんなに純粋に受け止められると、半分嘘なのが心に刺さる)
ユリウスは内心でそう思っていた。
「あ!もうこんな時間!ユリウス、あたし達はもう行くね。今日は他にもやることがあるから」
「ああ。俺もそろそろ連れの所に戻らないといけないからお互いちょうどいいタイミングだな。お互い試験頑張ろうや」
「うん!ユ、ユリウス君も頑張ってね」
ユリウスが再び奢り、カフェを出るとお互い軽く手を振って別れたのだった。
「ソフィー途中からユリウスの事さんじゃなくて君付けだったね」
「え?い、いや意味はないよゼナ」
「はは~ん。少し慌ててるのが怪しいな~」
ゼナはソフィーに小悪魔のような表情を向けながら話しかけ、ニヤニヤとしながら攻めていた。
「そしていつも男の人には無口なソフィーが今日はやけに積極的だったじゃん」
「そ、そんなことないよ!」
「もしかしなくてもユリウスにほっれちゃった?」
ソフィーは顔を真っ赤にしながらゼナの質問応えたが、ついには俯いてしまった。
「う、うん」
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