第30話 元剣聖VSドラゴンゾンビ
ユリウスは体を捻じり最小限のダメージでやり過ごしたが、それでもドラゴンゾンビの攻撃を直撃したため、胸部を裂かれさらに右腕の上腕部半ばから切断され、右腕からは大量の血が噴き出ていた。
そして切断された右腕は、地面で二回跳ねてから少し転がり、そうして止まった地点に小さな赤い水溜りを作った。
ユリウスは地面に着地すると右腕を押えながら後退し、ドラゴンゾンビとの距離を取った。
「なんとか右腕とちょっとの被害で済んだか~。それにしても最悪なタイミングで折れちまったな」
ユリウスは少し顔を険しくしたがすぐに何事もなかったかのように、ドラゴンゾンビを睨みつけた。
「さてさてさーて。どう戦おうかな。腕も回収しないとだし……」
そう言いながらユリウスは操糸術を使い、左手の人差し指に糸を巻き付け始めた。
そしてあることを思い出し、ギルに聞こえるよう叫んだ。
「おいギル!避難はまだ終わらないのか!これ以上持たせるのは流石にキツイぞ!」
「もう少しだけ耐えてくれ!あと少し……だいたい三分くらいで終わらせるから!」
「了解!三分だな?」
「うん、そう!」
それを確認するとユリウスは数秘術を発動させた。
「なら、まずは腕の止血からだな。……血流を右腕と胸のあたりに行かないよう操作してっと」
ユリウスはぶつぶつ言いながら数秘術で止血を始めた。
だがこれをやると演算領域の一部を止血に取られ、更にSPを常に消費することになるためユリウスは大きな血管だけ血流操作を行い、他の小さい血管は無視することで消費量を抑えた。
無論抑えられていない血管からは常に血が少しずつ漏れ出ている。
SPとは魔力と似たような物である。
魔法は魔力が尽きると使えなくなるのと同じで、数秘術はこれを使い切ると使用できなくなるのだ。
そしてSP切れにより起きる作用は魔力切れと違い、眩暈などではなく純粋に疲労感がどっしりとくる。
二徹が終わった時の様な疲労感がその一瞬に凝縮され、それを感じるのがSP切れによる疲労感である。
そのためユリウスは数秘術を回復に使わないのだ。
そして応急的な止血を終えると、ユリウスは人差し指と中指を同時に下に動かした。
「……刺突爆雷」
ユリウスは数秘術を使い爆発性が高い分子を高密度に圧縮し、水素などで周りをコーティングし槍状の半透明な物を作成し、圧縮した分子を先端に取り付けた。
そして圧縮した分子に信管の代わりになる世界には存在しない疑似的な分子を作成し、それの最先端に取り付けた。
水素等でコーティングしたのは誘爆を起こさせ、さらに爆破によるダメージを伸ばすためであった。
ユリウスはWWⅡ時に日本が開発した刺突爆雷という対戦車兵器の構造と、まったく同じ名前の魔法を参考にしてこの技を編み出した。
そしてこの技で作成された半透明な槍はドラゴンゾンビの背中の穴に打ち込まれ、敵の臓器に触れた瞬間に爆発を起こし、ドラゴンゾンビの背中を吹き飛ばした。
それによりドラゴンゾンビは大きく態勢を崩した。
「魔法ならこの後に辺りを火の海にできたんだけどな~。ま、そんなこと言ってるよりこの隙に攻めないとな」
次にユリウスは操糸術を起動し、左の手の人差し指に巻き付けていた糸を解き、一部を垂らした。
次の瞬間、ユリウスは糸の射程まで行くとドラゴンゾンビの懐に潜り込み、糸を超高速に振動させ敵の首辺りに狙いを定めて腕を振り、そこにある鱗の隙間に糸を入れ、勢いのまま腕を振り切り、再び首を切断した。
この時ユリウスの指まで糸で切断されなかったのは、数秘術で相殺したからだ。
すると再びドラゴンゾンビは切断された首から腐った血の様な物をまき散らした。
だが今回ドラゴンゾンビは首を再生しなかった、否できなかったのだ。
刺突爆雷によるダメージが大きく、回復が間に合わなかったのだ。
それでもドラゴンゾンビの肉片は体に集結するため、少しずつ地を這いながら集まってきていた。
ユリウスは数秘術で作成した小爆発を起こす物体を片手間で作り、ドラゴンゾンビを目指して地面を這っている肉片に落とし、さらに細かくした。
「さて、細切れの時間だ!!」
そう言うとユリウスは左腕を乱雑に振り、糸でドラゴンゾンビの腕を切断し、さらには鱗の間に糸を入れ、体にさらに傷をつけていった。
ユリウスは着実にゆっくりとドラゴンゾンビを追い詰めていった。
ドラゴンゾンビはどんどん傷が付いていくため、回復が完全に追いつかなくなり敵は手詰まりになったかの様に見えた。
だがドラゴンゾンビは自身に新たに命を与えた核に魔力を更に注いだ。
これによりユリウスにも見えるほど核は発光し、ドラゴンゾンビの肺に魔力が供給されて行った。
ユリウスは嫌な予感を覚え、咄嗟に糸を人差し指に巻くと同時にバックステップで後方に後退を始め、その際についでと言わんばかりに右腕を回収した。
ドラゴンゾンビの肺に集まった魔力はドラゴンブレスに変換され、制御が効かない状態で放たれた。
それにより暴発が起き、ドラゴンゾンビの胸部から紫色の毒が辺りに撒かれ、敵の体の周囲を飲み込み触れた物を腐らせ、さらに腐らなかった物は酸で溶かされて行った。
「おおー!少し遅れたらあそこにいた人の様に溶けてたな」
ユリウスはその現状を笑いながらそう言った。
ドラゴンゾンビの近くにいた狂乱状態に陥っていた人は今のブレスの暴発に巻き込まれ、骨まで残らず溶けた。
「とりあえず腕をインベントリに入れようかな。……てかこれ入れたらアイテム名が〝ユリウスの腕〝になりそうだな」
ユリウスは苦笑いを浮かべながら、インベントリに腕を入れた。
そしてインベントリに入れた腕のアイテム名はユリウスの予想通りの物になっていた。
それからしばらくの間、ドラゴンゾンビは自身の周りに毒を展開し続け、肉体の再生に尽力していた。
この毒は二発目のブレスよりも酸や腐食の効果が高まっている。
(流石にあれをゴリ押しするのは無理だな。やろうと思えばできなくはないだろうが、SPが先に切れて溶けるのがおちだな。耐えられたとしても他の技を使う余裕は無くなる……か)
ユリウスはこの硬直状態を歯痒い思いで見ていた。
「あ!そうだ!おいギル!今のうちに避難誘導を素早く終わらせろ!」
「そう言うと思ってた!だからもうやってる」
「さっすがー!!……とそうだ今のうちにポーションで回復しとくか」
避難誘導の状況を確認すると、ユリウスは腰に付けているポーチに手を伸ばし、そこから一本のポーションを取り出して無造作に開けるとそのまま一気飲みした。
ポーションのおかげで傷が少し回復し、出血量が減った。
そしてポーションを飲み終わると空瓶を捨て、もう一つ別のポーションを取り出した。
取り出したもう一つのポーションは解毒効果のある物だった。
ユリウスは毒が自分の体を侵しているかもしれないと考え、念の為に解毒ポーションも飲んだのだった。
「さて、ここまで待ってもあれを解く気配はないか。下手に爆風とかが出る攻撃をすると周りが悲惨なことになりそうだしやめておくか」
ユリウスは苦笑いを浮かべながら、毒の防壁の中にいるドラゴンゾンビを見た。
「おい、アリサにルミア!お前ら早くここから逃げろ!邪魔だ!ここにいられると足手まといで思うように戦えない!」
ユリウスは二人に聞こえるよう大声で話しかけた。
「ご、ごめんなさいなの!でも……もの凄く怖くて足が動かないの……」
「ユウ君ごめんね。わ、私もアリサちゃんと同じで……その……」
二人は俯きながら、自分の情けなさと恐怖で動けない悔しさそして恥ずかしさで胸がいっぱいになっており、スカートの裾を手で強く握りながらユリウスに返事を返していた。
それを見たユリウスは少し言い過ぎたかなと思い、左手で頭を掻いた。
だがそれでもユリウスは早く二人がこの場から立ち去って、安全な場所に行って欲しいという思いが心の中にあった。
「おい!そこのお前に聞きたいことがある!!」
「お、俺ですか」
「お前以外に誰がいる?」
ユリウスは隊長格だと思われる騎士に指を指して話しかけた。
隊長格だと思われる騎士は一瞬途惑いの表情を見せたがすぐに落ち着き、ユリウスの要件に耳を傾けた。
「単刀直入に言う。この街を壊しても良いか?」
「……と、言いますと?」
騎士は一瞬こいつは何を言っているんだと思い、聞き間違いかもしれないと心のどこかで思い問い返した。
「だから街を壊しても良いかと聞いている。街の被害を気にしながらだと確実に死ぬからだ!だから戦闘によるやむを得ない破壊をしてもいいと言う許可が欲しいんだ!」
「分かりました。お、じゃなくて私の権限で許可を出します。何があっても貴方の責任にはなりませんので遠慮なく戦って下さい!」
「感謝する!!」
ユリウスが言い終わるとほぼ同じくして、再生が完了したドラゴンゾンビが毒霧を解いて姿を現した。
辺りにあった毒霧は翼を広げた瞬間に周りに霧散し、周囲を溶かし尽くした。
ユリウスらは射程内にいなかった為、被害は出なかった。
ドラゴンゾンビは始祖帰りの変異が終わり、完全体となっていた。
だがユリウスは絶望なんてしていなかった。
彼はむしろこの逆境を楽しんでいた。
その証に口元は笑っており、目には殺意の籠った闘志が燃え上がっていた。
「さて、ここからが本番か!」
ユリウスがそう言うと、彼の正面から声が聞こえた。
「褒めてやろう人間よ!この我をここまで追い詰めたことをな!だが今からは我も本気を出そう、貴様に最早勝機はないと思え!」
「それは光栄だな!だがいつからお前に勝ち目があると思っていた?この腐ったトカゲ野郎!」
ユリウスは不敵の笑みを浮かべながそう言い放った。
「我を人間風情が侮辱するか!だが良い、我を追い詰めた褒美としてその発言を取り消すならばその命だけは見逃してやろう」
「それなら簡単なことだ。死ね!」
「ならばその愚かな選択に後悔しながら死ぬがよい!!」
ドラゴンゾンビはそれを聞き激情し、その瞳には怒りを映し出していた。
そして龍は翼を広げ、高らかに咆哮を上げた。
その咆哮は周辺の建物を倒壊させるほどの衝撃を放っていた。
そしてその咆哮には先の死の恐怖とは比べものにならないほどの絶望を乗せていた。
それに当てられたアリサとルミアは脚から力が抜け、腰を抜しその場座り込んだ。
さらに二人は慌て股間を押さえたが、恐怖に抗えず再び失禁してしまった。
二人の瞳には絶望を映しており、そして二人は自分が情けなく無力なのが悔しいと思いながら、ユリウスを見ていた。
咆哮が止むと同時ユリウスは動き出した。
「ははは!吹き飛べ!!」
数秘術を使い大爆発起こし、周辺の全てを吹き飛ばした。
その威力はアリサ達の方へ爆風が行かないようセーブしてはいたが、それでもドラゴンゾンビの鱗を何枚か消し飛ばし、腐敗している肉を焦がした。
そしてそのタイミングでギルから報が届いた。
「避難完了だ!思っきり暴れて来い!アリサ達への被害は僕が何とかするから遠慮せずやっちゃえ!」
「了解だ!二人は任せたからな!」
そしてユリウスはニヤリと口元を動かした。
人差し指と中指をクイッと動かす無数の刺突爆雷が発動し、ドラゴンゾンビの前足を吹き飛ばし、翼の膜を破った。
それと同時ドラゴンゾンビも反撃に出た。
自身の周囲に紫色の毒の槍を展開し、一斉にユリウス目掛けて放った。
ユリウスは無駄のない動きで槍を全て紙一重で躱しながら突き進んだ。
糸の射程内に入った瞬間操糸術を発動させ、指に巻いて糸を解くとそのまま腕ごと振って、ドラゴンゾンビの鱗の間を狙い攻撃した。
だが鱗の間に入った瞬間、ドラゴンゾンビは上手く体を動かして、鱗と鱗で糸を挟むと腕を動かし強引に切断した。
ユリウスは糸を切られ、切られた糸を指から解いてそのまま捨てると、予備の糸を指にしっかり巻き付けて装備した。
(流石にこの程度の技だと二回目はないか……)
そう考察するとユリウスは一旦距離を開けるため、後方へ下がろうとしたがドラゴンゾンビがそんな事を許すはずもなく、魔法で追撃を仕掛けてきた。
ユリウスは追撃を躱したが、その魔法は爆発魔法であった為、地面と接触するとその場で爆破した。
「クソッ!」
ユリウスは爆風で吹っ飛ばされたが受け身を取って、ダメージを軽減した。
「爆ぜろ!」
ユリウスはそう言って手を握ると、それに呼応したかのようにドラゴンゾンビを中心にして爆発が起きた。
数秘術で技自体の設定を自身にはダメージが通らないよう弄っている為、ユリウス本人には爆風すら感じないがアリサ達には諸に爆風が行ったが、それは宣言通りギルが魔力障壁を展開してガードした。
砂塵が晴れると、そこにはドラゴンゾンビがいた辺りを中心に、小規模なクレーターができていた。
そしてその近くに転がっている騎士の死体に剣が付いていることに気が付くと、ユリウスはまだ視界がはっきりしない内にそこまで駆けて行った。
途中で完全に視界が晴れたがそこに強烈な閃光を数秘術で発生させ、ドラゴンゾンビの視界を再び奪うと剣を回収して、一旦距離を取った。
「よし!これなら糸に頼る必要はないな」
ユリウスは上機嫌にそう言うと軽く剣を振って、感覚を確かめた。
そしてユリウスは再びドラゴンゾンビに向けて突っ込んで行った。
ドラゴンゾンビはそれを迎撃するために、息を吸い込んだ後ドラゴンブレスを放った。
だがユリウスは軽く剣を振ると、その剣圧とそれで生まれた風でブレスを掻き消した。
そしてドラゴンゾンビは瞬時にブレスの種類を切り替え、球状にして放った。
無数に放たれた毒球のブレスを、ユリウスは剣の間合いに入った瞬間に斬り捨てた。
斬り捨てられた毒球のブレスはユリウスの後方で炸裂し、毒霧を発生させたが彼は数秘術を発動させ中和した。
(そろそろSPが三分の二を切りそうだな。早いとこケリをつけないとこっちがきつくなるな)
ユリウスは体感的の疲れでSPの残量を計ると、少しだけ焦燥感を覚えたのだった。
そしてユリウスは剣の間合いまで来ると、ドラゴンゾンビに向かって剣技を放った。
「一の太刀無形の型!荒刃落暉!」
その剣技によりドラゴンゾンビは瞬時に大ダメージを受けた。
前足を細切れにされ、流れる様な刃で胸部を裂かれ、避けきれなかった頭部の一部が切り落とされた。
だが剣への負担が大きかったのか、剣の刀身部には亀裂が走り、今にも折れそうな状態になった。
それでもユリウスは追撃の一太刀を加えたが、その直後に刀身が粉々に砕け散った。
それを予期していた為、ユリウスは砕け散った瞬間に折れた剣を捨て、バックステップで後退を始めた。
ドラゴンゾンビは自身で追撃ができる状態ではなかった為、魔法での追撃に移った。
無数に展開された毒球と業火の槍は後退するユリウス目掛けて放たれた。
その全てを回避しきることができず、直撃してしまう寸前にユリウスの眼前に魔力障壁が二重に展開された。
「サンキュー!ギル!」
ユリウスは誰がやったのか大体の見当がついていた為、その者に魔法を回避しながらお礼を言った。
(まったく昔のお前ならこんな奴瞬殺だったのに……。そんな姿になるなんて無様だな。まあ俺も恐らくは人のこと言えないのだろうがな。ま、頑張ってくれ俺はめんどいから後方支援に努めるとするさ)
ギルはそんな事を思いながらユリウスを支援したのだった。
そんなユリウスは冷静に周りを見渡し、剣になりそうな物を探し始めた。
そしてワイバーンがゾンビ化した際に踏みつぶされた騎士だった物を見つけた。
だがドラゴンゾンビの追撃による魔法でユリウスは回避に専念し、下手に動けなくなっていた。
そんな中ユリウスは数秘術を発動させ、再び大爆発を起こした。
「爆ぜろ!」
だがドラゴンゾンビはお構いなしに魔法を連射し続けた。
しかしユリウスの狙いはそこで巻き起こる砂塵にあったのだ。
ユリウスは数秘術を用いて舞い上がった砂塵を風を発生させて一か所に集めた。
そしてその砂塵の外側に高密度に圧縮された水素の球を無数に設置し、砂塵の中で小爆発を起こした。
「喰らえ!これが粉塵爆発だ!」
そこでは大爆発が起きた後、同時に圧縮された水素が誘爆し更に強力な爆発が起こった。
その爆発を諸に喰らったドラゴンゾンビは怯んで攻撃の雨が止んだ。
それを好機と見たユリウスはかつては騎士だった物に近づき、剣を回収した。
そしてそのままドラゴンゾンビに向かって行き、剣の間合いに入ると同時に再び剣技を放った。
「龍殺一閃」
剣線上にあったドラゴンゾンビの体は綺麗に切断され、一部の肉や骨は消し飛んでいた。
そして剣はまたしてもユリウスの剣技に耐え切れず砕け散ってしまった。
連撃を入れられないことに舌打ちをしたユリウスは再び攻撃手段を失った為、バックステップで後退した。
それを見ていた運搬隊隊長の騎士は生き残っている面子に高らかにあることを告げた。
「お前ら!今すぐ持ってる剣を彼に向かって投げるんだ!!あの化け物を彼なら倒せるかもしれない!それくらいはできるだろ!!」
「「はっ!了解です!!」」
騎士一同は隊長の声を聞き、希望を持ち始め、動かない体に何とか力を入れ剣を無造作に投げた。
流石にユリウスの元にまで届かなかったが、それでもユリウスはありがたく感じた。
今のユリウスにとって剣は使い捨ての道具に過ぎないが、それがたくさんあれば勝機が見えてくるからだ。
「ねぇルミア。私達も何か援護できることをしようなの」
「そうだねアリサちゃん。だけど一回失敗したらあれに目を付けられちゃうから、チャンスは一度だよ?」
「わかってるなの。だからお兄ちゃんの次の攻撃に合わせるから今はすぐ使えるよう魔法を構築させようなの」
「うん」
アリサ達二人は互いの顔を見て頷き合うと、その場から立ち上がり魔法の詠唱に入った。
二人は勇猛に戦うユリウスの姿に呼応され、さらに今の攻撃でもしかしたらという希望が見え、それを糧にして震える足に活を入れて立ち上がっていた。
ユリウスが剣の回収を行こうとしたが、流石のドラゴンゾンビもそれを許すほど馬鹿ではなく、ドラゴンブレスで妨害に移った。
しかしそこでギルが魔力障壁を多重展開し、数秒の時間稼ぎをした。
ユリウスにとってはその数秒があれば剣を拾うには十分過ぎる時間であった。
そして剣を回収したユリウスは、剣を振ってブレスを掻き消すと再びドラゴンゾンビに突っ込んで行った。
ユリウスはアリサ達を一瞬目尻で確認し、何かをやろうとしていることに気が付き、こっそりと数秘術で指示を送っていた。
ドラゴンゾンビは複数の属性魔法でユリウスを迎撃したが、ユリウスは縮地を使い瞬時に距離を詰め、その攻撃を全てやり過ごした。
そしてドラゴンゾンビは右前脚での薙ぎ払いを行い、それをジャンプで回避したと同時にユリウスは龍殺しの剣技を放つ体勢に入った。
それに合わせてアリサ達二人の支援魔法がユリウスに向かって放たれた。
「付与耐久力上昇」
「能力偽装」
ルミアは一時的にステータスを誤魔化して能力を上げる魔法を使い、アリサはユリウスの剣に向かって耐久力が増すエンチャントを付与した。
そしてユリウスが剣技を使う瞬間にドラゴンゾンビもあがきの一撃をユリウスに向かって放った。
「我、龍を断つ剣なり!……龍殺剣!」
その技によりドラゴンゾンビの九割程が消し飛び、そしてそれと同時にユリウスの左足に足掻きの一撃が命中し、太もも半ばから切断されたのだった。
そしてドラゴンゾンビがいた場所には核だと思われる物が浮遊していた。
それを見たユリウスは、直感でこれを壊せば終わりだと感じ、崩れた体勢から強引に左腕を動かし、核にエンチャントのおかげで辛うじで折れていない剣を向けて数秘術を発動させた。
「ライトニング!!」
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