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第1話 剣聖の覚醒

 ベットには一人の少年がいた。

 名をユリウス・L・アルバートという。

 ユリウスは英爵家の次男である。

 英爵とは国の危機や世界を救った英雄に送られる貴族位のことである。


 ユリウスは外を見ながら自分に記憶が戻ったことを悟る。

 いつも何か足りない気がしてたのがこのことだと気がつく。だがそんなことはあまり気にしてはいない。

そして「いい朝だ」と背伸びをしながら呟く。


「そういえば今日は俺の今世の誕生日か」


 ユリウスは六歳の誕生日を迎えた。

 この国では五歳か六歳になったときスキルの鑑定をするしきたりがある。

 だが絶対にその歳でないといけないというわけでもない。ただそれくらいの歳が将来を決める目安になりやすいからだ。あくまでも伝統みたいなものなので強制ではない。

 そしてユリウスが六歳になったらと望んだため六歳になった日が鑑定日になったのだ。

 そのため今日は待ちに待った日でもあるのだ。

 今日から剣の修行や魔法についての勉強を本格的にして良いと言われていたからでもある。

 そう考えていると部屋の扉がノックされた。


「開いてるよ」


 そういうとユリウスの母であるクレア・L・アルバートが入ってきた。


「早く準備してね。今日はユリウスが楽しみにしていたスキル鑑定をするからね」

「うん!わかった!」


 クレアはそれだけ伝えると部屋を出て行く。

 そしてクレアは扉越しに言い忘れたことを思い出しユリウスへと言う。


「朝食を食べたら鑑定するからね。そうすればお昼には結果が出るから」


それを聞きながらユリウスは着替えを始めていた。

 スキル鑑定の魔法は鑑定後紙に複写するのに時間がかかる。

 スキルを鑑定した際の情報を文字にし、その詳細を記すためだ。

 この世界で言うスキルとは、自分の得意な分野がわかるみたいな意味を持つ。

 要するに自分の強さの証になるということだ。

 スキルが無くとも剣術を学べば、それに関係するものを習得できる。

 だがその習得速度は自身のスキルの有無により変わってくる。

 スキルによっては成長ができないものや一部のもののみ習得できないなどあるがこれは例外中の例外である。

 スキルにはランクが存在し、EからSまである。

 そしてそれらにあてはまらない規格外のものをEXと表す。

 EからSまでは努力しだいでランクを上げれるがEXにはそれだけでは上げることができない。


「了解。すぐ行く」


 それを聞くとクレアはリビングへ去っていく。

 ユリウスは着替えを終え、クレアを追うようにリビングへと向かう。

 リビングでは母クレアと妹のアリサが待っていた。


「お兄ちゃんおはよう、そしてお誕生日おめでとうなの」

「ユリウス、誕生日おめでとう」

「ありがとう」


 その後も楽しく会話をしながら食事を終える。

 そして食事を終えたクレアは先に執務部屋へ向かう。


「そうだ。お兄ちゃんスキル鑑定がんばってなの」

「おう……といっても、これにかぎっては俺は何もしないからなー」

「その様子だと緊張とかもしてないね」

「まーな。でもどちらかというと俺は楽しみで仕方ないのだ」


 アリサと他愛もない話を始める。

 

「お兄ちゃんならエクストラスキルを五つくらい所持してても不思議ではないなの」

「いやべつにようやく魔法が使えるようになると思っているだけだ。それ以外は望まないよ」

「むーお兄ちゃんなら絶対あるなの!」


アリサはユリウスの顔を覗き込みながら言う。

 ユリウスもそうは言いつつも何処かで期待しているのか、それは表情に出ていた。

 それを見たアリサは可愛らしく微笑する。

 

「もうすぐ到着だね。がんばってなの」

「ああ、じゃあまた後でな」

「うん」


 ユリウスはそう言いアリサと別れ、執務室に向かう。

 




 鑑定終了から数時間後。

 ユリウスはメイドのフェリアから、結果が出たから執務室にいくよう言われ執務室に向かう。

 そして執務室に到着した。


「来たわね」


 そう言い少し険しい顔をした母クレアが出迎える。


「どうしたの?母さん。もしかして鑑定結果が芳しくなかったのか?」

「……ええ、鑑定の結果を伝えるわ。あなたは近接戦闘系スキルや魔法系スキル、そしてそれ以外のスキルも覚えることはできない」


 母クレアは重い口を開けそう言い放つ。


「……え?」


 それを聞いた瞬間、ユリウスは呆然としていた。

 彼の口からは驚愕と呆然が入り混じったような声が漏れ、それは周囲に小さく部屋に響く。

 ユリウスはこの時現実を受け入れられず、自分の聞き間違えだと何度も言い聞かせ目を逸らそうとしていた。


 彼は別に無才ということを現実逃避したわけではない。昔そう言われ続けていたから別に気にはしていなかったが、あいつが渡したはずの物が無いことがわかり、ユリウスは現実を受け入れたくなかったのだ。


 この世界の人間は初級魔法の中でも生活魔法と呼ばれる位階最下位であるファイアーなどの火を出す魔法や水を出す程度の事は、スキルの有無に関係なく使うことが出来るが、ユリウスはこの世界の人間ではなく別の世界の理をその魂に宿す為、スキルなしに魔法を使うことはできないのだ。


 そのため夢を叶えるにはスキルが絶対に必要なのだ。

 故にユリウスは眼前に居る母へと再度問いかけた。


「……母さん、今なんて言ったか教えて欲しい」


 ユリウスは母が自分を驚かせるために冗談を言っているんだと思い込んでいた。

 否、彼はそう思いたかったのだ。

 すると少し間を開けてからクレアが再び口を開いた。


「……ならもう一度だけ言いましょう。あなたのスキル鑑定の結果は、今後一切のスキルが習得できないことが判明したわ。要するにあなたには何の才能もないただの無能ということよ」



 母クレアは淡々とした顔で、そのことを告げたのだった。


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