第27話 遺跡探索終了そして宿へ
ユリウスは巨大なスケルトンの前に飛び出し、スケルトンの胸の辺りまで跳躍し、そして左斜め下に斬り払た。
「———閃」
ユリウスの容赦ない一撃で巨大なスケルトンの半分が消し飛び、そして結界に無数の亀裂が走った後砕け散った。
巨大なスケルトンは活動を停止し、ガラガラと音を立てながら崩れていった。
そしてさっきまで巨大なスケルトンがいた場所には、骨の山が出来ていた。
「無事か?お前ら」
「ユウ、これを無事とは言わないよ」
ギルは自分の傷などを見せながら言った。
「ハハハ!たしかにそうだな。とりあえずお疲れさん」
「ありがとう。でも、一つ言うならもう少し早く来てほしかったな~」
「いやーこっちも立て込んでたからな。次があれば気を付けよう」
ユリウスはそう言いながらアリサの方へ行き、頭を撫でた。
「よしよーし、よく頑張ったな!」
「ありがとうなの」
「ルミアお前もな」
「うん」
ユリウスがアリサを撫でているとルミアも合流し、ルミアの頭も撫でていた。
二人とも嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「ルミアに頼みがあるんだがいいか?」
「うん、いいよ!」
「俺の脚に回復魔法をお願いしたい」
「……?」
ルミアがなんでと言いたげに首を傾げたので、ユリウスがズボンの裾を上げ悲惨な状態を見せた。
先の移動のせいでユリウスは体の限界を一時的に超えて走ったため、脚には無数の裂傷があり筋肉は断裂している状態だった。
そのため現在、脚は血塗れになっていた。
「わ、わかったよ。ヒール」
それを見たルミアは慌てて回復魔法を使った。
回復魔法により傷は徐々に塞がったが、それと入れ替わるように恒例の筋肉痛がユリウスを襲った。
「あーいつものやつきたわ」
「もう恒例になってきたよね」
「それを言うな。これ地味にきついんだから」
「ははは」
ユリウスは痛みに耐えながら、ギルとやり取りをしていた。
「そうだった。ユウに聞きたかったんだけど、さっきの巨大なスケルトンは何だったの?」
「おそらく種類はスケルトンジャイアントのはずだ」
「じゃあ、無限に回復していたのは?」
ギルのそれを聞き、ユリウスはエレインの言葉を思い出していた。
「ああ、それは確か龍脈から魔力を吸い上げているんだったか。この部屋には特殊な付与をされていて、遺跡の入り口の明りを確保するための魔道具が龍脈から魔力を吸い上げているから、そのおこぼれをこの部屋に送ることで無限再生とかいうぶっ飛んだギミックに仕上がっているらしい」
「確かにそれなら無限再生できる理由になるね」
ギルは頷きながら納得していたが、アリサやルミアは頭の上に?でも浮かんだように首を傾げた。
「ユウ君、龍脈って何?」
「私もわからないなの」
「ギル説明は任せたぞ。俺は置いてきた荷物を取りに行ってくる、来いハクタク」
ユリウスはギルの肩を触ってから来た道を戻り、前の部屋に戻って行った。
「わかったよ。早く戻って来てね」
「了解だ」
ユリウスは小走りしながら軽く手を振った。
「じゃあ龍脈について簡単に説明するよ」
「お願いなの」
アリサの返事を聞き、ギルは一回頷いてから説明に入った。
「龍脈は膨大な魔力が流れている場所、すなわち通り道を示すんだ。その魔力は地下深くを流れていて、世界の様々な場所にあり、そしてその全てが繋がっているんだ。龍脈には今の魔法技術だと吸い上げる以外の干渉はできないから基本的には意味を成さないし、龍脈を媒介にした魔法も当然ない。魔力を吸い上げるのは大型の魔道具しかないんだよ。だからその魔道具は結界とかにしか使えない。こんなところかな、途中から龍脈についてではなくなったけど、まあまだ全てを解明されてるわけじゃないからこれくらいが今わかってることかな」
「へーそうなんだ。ってことはこの遺跡はなんらかの魔道具で龍脈から魔力供給してるんだね」
「うん、そうなるね。でも古代遺跡だから、今よりも優れた魔道具の可能性もあるかな。昔の方が技術は上らしいから」
「確かに」
ギルの説明をルミアとアリサは頷きながら聞いていた。
説明が終わる頃に荷物を取りに行っていたユリウスとハクタクが合流した。
「お待たせー先に進もうか」
「そうだね。ちょうど説明も終わったところだし」
ギルがそう言うのに合わせ、各自持ってきている荷物を背負いと奥の道に入りそのまま一番奥の部屋まで歩いて行った。
「ここがこの遺跡の最深部なのかな」
「多分そうだ。祭壇みたいなのがあるかしな」
最深部の部屋には祭壇とその横にまた小部屋への入り口が二つあった。
ユリウス達まず手始めに祭壇に上りそこにある大きな鏡の前に立った。
「大きい鏡なの」
「たしかにな。こりゃー見事な鏡だわ」
ユリウス達は鏡の前で綺麗に装飾されたのを見て感嘆していた。
そしてギルが近くにあった石碑に気が付き、他三人を呼んだ。
「ここに石碑があるよ」
「ほんとだ。……でも古代文字だから読めないね」
ルミアがそう言うとユリウスが興味を持ち、石碑に顔を近づけ古代文字をまじまじと見た。
「ふむ……この鏡では死者と互いに思い合っている者と邂逅できるであろう、か。えーと、この先は死者の扉に繋がる架け橋となり……うーん、ここから石碑の劣化で読めないな」
ユリウスは周りのことを忘れて、独り言のように呟いていた。
「え!?お兄ちゃん読めるの!?」
「え?ああ、いやなんだえーと、そうだ思い出した。前家の書斎にあった古びた本に載ってたから知ってるだけだよ」
そんな言い訳にギルが疑いの目線を送っていたが、ユリウスはそれを気にせず「さて」と一言いって再び鏡に向き直った。
そしてギルはどこか懐かし物を見るような視線を一瞬石碑に送ったのだった。
(それにしてもこの鏡が死者と邂逅する為の物なら、さっきいたあの場所と霧は何だったんだ?それになぜヒエログリフが使われているんだ。これは俺が前々世にいた国の言語だし、しかも聖魔大戦時代からある途轍も無く古い言語だ。そんな物がなぜ異世界にあるんだ。……まーとりあえず今は、エレインと再会できたことだけ喜んで他のことは忘れるとするか)
ユリウスは色々思考した結果、判断材料が乏しいため結論を出すのを諦めた。
「ユウところでここには何もないの?」
「いや、このよくわからない鏡以外だと、お宝が宝物庫にあるって書いてあった」
「宝物庫か、もしかして祭壇下の小部屋かな」
「おそらくな」
ギルはそれを聞くと祭壇を降りて行った。
それに続いてユリウス達も降りて行った。
「アリサどっちの小部屋が正解だと思う?」
ユリウスは部屋の入口近くまで下がり二つの入り口を見て悩んでいた。
「うーん迷うなの。……そうだ!コイントスで決めよう。表なら右、そして裏なら左ってことにしようよ」
「ならそれで行くか」
そしてユリウスが親指でコインを弾いた。
「ユウ君達決め方が雑だよ」
「ルミア、ユウ達がああなのはいつものことだよ」
コインが空中を回っている間にルミアとギルは苦笑いをしながら見ていた。
そしてユリウスがコインを受け止めた。
左手を退かすとそこにあったコインの面は表だった。
「よし右だな!」
「右なの!」
ユリウスとアリサが同時に言った。
そして一行は右にの部屋に歩いて行った。
「ウソ―!当たってるよ」
適当に決めたが本当に宝物庫に繋がっており、ギルが驚きの声を上げた。
「す、すごい。黄金がこんなに一杯」
「まあ遺跡だから俺はあまり驚かないな」
ユリウスは定番を見るような目で宝の山を見ていた。
「こんなにたくさんの黄金見初めて見るなの!……あ、そうそう左の部屋は魔法陣があったなの」
「多分帰りようだと思うよ」
アリサは祭壇に上る前に、左の部屋を覗いていた。
ギルは遺跡の傾向的を考え、その答えに辿り着いた。
それからユリウス達は各自詰めれるだけ宝を鞄に詰めまくり、帰り用の魔法陣に入り転移前の遺跡の転移魔法陣があった部屋に戻ってきた。
転移魔法陣にギル達を先に行かせ、ユリウスはこっそり残りの宝をインベントリに入れたのだった。
そして例のごとく帰りもしっかりと罠をうっかりで起動したりして大惨事を起こしながらなんとか無事に宿屋まで帰ったのだった。
「はぁー疲れたなの」
「まさか帰りにまた罠を踏むとは思ってなかった」
一行は皆疲れ切った顔をしていた。
宿の女将が食事を持ってくると全員それを美味しくいただき疲れを忘れていったのだった。
そして次の日の朝ユリウスはあることを宿の女将に聞くため話しかけた。
「女将さん、王都行きの馬車っていつ頃出るかわかりますか?」
「今日はたぶんないかもね」
「なんでですか?」
「王都までの道中で大型の魔物が出たって話だから、それの討伐が終わらないと動けないらしいわよ。これは噂だけど、ドラゴンを討伐したからそれを運ぶためともいわれてるね。うーん、そーだねーどうしても乗りたいって言うなら隣町のマーティンボロまで行きな。そこならもしかしたら出てるかもしれないわよ」
「それは大変だすね。情報ありがとうございます」
ユリウスがそう言うと女将は「いーのーいーの気にしないで」といって奥に去って行った。
「じゃあお宝もそっちで換金しちゃおう」
「そうだね」
そしてユリウス達はマーティンボロに向かうのだった。
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