第25話 死者の遺跡
ユリウス達が転移した先にはもう一つの遺跡が存在した。
その遺跡の外観は墓所と言えた。
「死者の遺跡キター!」
ユリウスは想像通りの遺跡が現れ喜んでいたが、アリサとルミアの二人は違った。
「アリサちゃん……」
「うん。不気味だよね……」
二人はその雰囲気に少し怯え怖気づいていた。
「じゃあ、ユウ行くか!」
「だな。見てても埒が明かないからな」
そうしてユリウスとギルが歩みを進めると、アリサが「ちょっと待って!」と言いながらルミアと共に小走り追いついた。そしてその後ろにハクタクがついてきた。
「それにしてもなんで少し明るいんだ?」
「ユウ君たぶん魔法だよ」
「……そうなの?」
「うん。少しだけど魔力の反応があるから多分付与魔法でこうなってると思う」
「まじか」
ルミアは魔力感知の魔法を使い、どのような物かザックリと分析した。
そうしてユリウス達は遺跡の入り口付近まで到着した。
「今のところ何も起きないし出ないね」
「でも、油断しちゃダメなの。さっきの遺跡と同じ目に合うなの」
「そうだね」
ギルの発言にアリサが補足の説明っぽく付け加えた。
それから中に入ろうとした時右側にある、墓が沢山ある辺りから土から這い出る音が鳴り、何かが現れた。
その音を聞き、ユリウス達は戦闘を避けるため小走りで遺跡の中へと入って行った。
中は先ほどの遺跡よりコケなどが多く生えていたり、風化した箇所が多かったりとそのボロさが見て伺える。
しかも先ほどの遺跡と違い明かりがほぼない為、完全に真っ暗であった。
「何も見えね~~」
「どうせユウは夜目が効くから見えてるんでしょ」
「まあな。でも、いささかここまで暗いとほとんど見えないな。見えて壁かなと思う物とお前らくらいだ」
「やっぱユウでもそれくらいしか見えないか。僕もそれくらいだからもう少し見えてると思ってた」
「流石にな……」
ユリウスとギルは苦笑いを浮かべながら話していた。
「私はもう何も見えないよ。ユウ君達すら、もはや見えないよ~」
「私もなの」
二人ははぐれないよう手をつなぎながらユリウス達の話に乱入した。
「ちょっと待ってろ、ランタンつけるから」
ユリウスはランタンを点けた。
ランタンの中の火がゆらゆらと燃えながら辺りを照らした。
「これでお前らもランタンを点けれるだろ」
「うん。ありがとうなの」
そしてユリウスのランタンの明かりを頼りに、他の面子もランタンを点けた。
暗い間、ハクタクは臭いでユリウス達の場所を感知しついて来ていた。
「それにしても何でランタン消えてたんだろう?」
「これは僕の予想だけど、多分転移した時に何らかの原因で消えたんじゃないかな」
「そうだね。私もそれしか思いつかないよ」
ランタンの火が消えたことを、ギルとルミアが考えてる間にユリウスは鞄を下ろし、中から火の点いてない松明を取り出した。
そして鞄を背負い終えると小走りでギル達に追いつき、そこで指をパチンッと鳴らし、また松明に火を点けた。
「お兄ちゃん、何本松明持ってきてるの?」
「全部で三本持ってきてたけど、一個はなくして残りこれ込みで二本かな」
「用意周到なの」
「まあ、二本は予備だったけど結果オーライだろ」
「なの!」
アリサをたしかにという表情でユリウスに返事を返し、ユリウスは少し先行して当たりそうな蜘蛛の巣を松明で炙り除去した。
「荒技だね」
「だね」
ルミアとギルは目を棒にして互いの意見に共感した。
そんなこんな二つ目の遺跡に入り、一時間と少しが経過した頃、ユリウス達に近づいてくる者たちがいた。
カランカランと骨がぶつかり合うような音を立てながら、少しずつ迫ってきた。
しばらくして姿を現したのは、直立二足歩行で歩く骨、そうスケルトンであった。
「「きゃぁぁぁ!」」
「おっと!遺跡と言ったらこれ、みたいな定番のやつキター!」
「定番来ちゃったね」
アリサとルミアはスケルトンを見て悲鳴を上げ、ユリウスとギルは定番のやつを前にワクワクして心が小躍りしそうだった。そしてハクタクは骨を見て目を輝かせていた。
「なあギル、こいつって剣じゃなくても殺れるかな」
「さぁね。試したことなからなんとも」
そんなことはお構いなしに、スケルトン達はユリウス達を襲いに来た。
それを確認すると二人は剣と銃を構え、戦闘態勢に入った。
「さて、銃が効くか試してみますか」
「それはいいけど油断はしないでよ」
それを最後に戦闘が始まった。
ユリウスはスケルトンの頭部に一発撃ち込んだが、頭部に穴が開くだけで何事もなかったように攻撃を仕掛けてきた。
「えーー効かないのかよ。期待してたのに……」
「あいつらの膝を撃ち抜いて破壊してくれれば僕が止めをさすよ」
「それはやだ。自分で殺したい」
「子供みたいな理由だね」
「うっせー」
ユリウスは銃をしまい、剣(枝)をスケルトンに居合切りを決めて抜刀した。
ユリウスの居合で前衛にいた敵を複数体同時に撃破し、スケルトンは体がバラバラになり白骨死体へと戻った。
ギルもそれに続き軽々倒し、無双していた。
ハクタクは二人に戦闘を任せ、骨をしゃぶっていた。
「おいハクタク働け!」
「……」
「おーーい!」
ハクタクはユリウスの声を無視し、骨に夢中になっていた。
そしてアリサ達も落ち着き、戦闘に参加した。
「よし!あとは任せた」
「え!?ちゃんと戦ってよ」
そうしてユリウスは、自分が相手をしていたスケルトンをルミアに押し付け、後衛に下がった。
ルミアは一瞬困惑するも戦闘に集中した。
「言い忘れてたけど、お前ら魔法は極力使うなよ」
「わかってるなの」
アリサが近づいてきたスケルトンを一撃で屠りながら、返事を返し小範囲内のスケルトンを浄化魔法で撃破していた。
それからはほぼ危なげなく撃破していき、スケルトンの群れは壊滅した。
「ご苦労!……グヘッ!」
「お兄ちゃんのバカッ!」
アリサはユリウスをどついたが、運悪くみぞおちに入り変な声を出した。
「不意打ち過ぎるだろ。てか、アリサお前さっきちびったろ」
「えっ。……」
アリサは顔を赤くしながら無言で頷いた。
「じ、実は私も……」
「ハハハ。まだまだ子供だね~」
「むううバカー!!」
アリサが頬を膨らませながら一言そういった。
「ほらユウ煽ってないで進むぞ」
ギルがそういうとユリウスは「ああ」と言って、ギルに続いて歩き始めた。
道中は相も変わらずトラップを踏んだり、群れているスケルトンを討伐しりし、進んでいった。
「なんか敵がパターン化してきたなー」
「でも安全だからいいんじゃないかな」
そんなことを言っていると、ユリウスが床にあるトラップのスイッチを踏んだ。
ガコンッという音が鳴ると、両サイドの壁から斧が出現しユリウス達は一瞬「え?」という表情をすると、全力で疾走し始めると同時に斧が通路目がけて振り下ろされた。
「いやーーこれ死ぬぅぅー!!」
「踏んだ張本人が何言ってるんだ?」
「それよか前!前!なんかいるぞ」
「うーん?あれはゾンビかな」
「おいおい悠長だなお前は……。接敵するぞ」
ユリウスが言うより早くギル達は剣を抜き、戦闘態勢に入った。
ユリウスは銃を抜き構えると、そのままトリガーを引きゾンビの頭部めがけて発砲した。
パスパスという音と共に銃弾が放たれ、ゾンビの頭部を貫いた。
腐敗した頭部を貫通したと同時に、腐った脳みそがぶちまけられた。
アリサ達もすれ違いざまにゾンビを切断し各個撃破していった。
それと同時に腐った肉や内臓が辺りに散らばった。
「ゾンビってそんなに強くないね」
「いやいやルミア、普通は少し苦戦するくらいの強さなんだぞ」
「そうなんだ。てっきり冒険者になれるくらいの人は、これくらいお茶の子さいさいだと思ってたよ」
「その認識はおかしいからな。俺らが平均より強いだけだから、その認識は変えといた方がいいぞ」
「わかった!」
ユリウスが珍しくまともな事を言い、ルミアの認識を正したのだった。
「てか、いつまで走ればいいんだ!?」
「そんなの決まってるだろユウ。途切れるまでだ!」
「ひぇぇぇ!」
ユリウスがそんな何とも言えない声を上げたが、唐突に先頭にいるアリサの襟を掴んだ。
「……グヘッ!!な、何するのお兄ちゃん!?」
「そこ落とし穴だ気を付けろ」
「「え!?」」
アリサとルミアが驚きの声を上げた。
「だって何もないなの」
アリサがそんなことを言うと、ユリウスはポーチから小石を取り出し正面の床に投げた。
投擲した石が当たるはずの床をすり抜けていき、偽装された床の下にある空間の底に石が当たりコツンという音が響いた。
「ルミア偽装解除系の魔法いけるか?」
「これ結構高度な付与術だから今の私だと数秒しか消せないけどいい?」
「やってくれ」
「わかった。……偽装解除」
ルミアが偽装解除の魔法を使い、床に付与されている魔法を一時的に解除した。
するとその下には、無数の槍で敷き詰められた空間が存在し、その槍には何体もの白骨死体が串刺しになっていた。
そしてその偽装されていた面積は、横幅は通路にピッタリで縦が数メートルあった。
「おいおい……これはえげつねー罠だな」
「たぶんこっちが本命なんだろうね。斧の罠は囮で、しかもそれを発動しなくても落ちるって類か……」
ギルはその質の悪さに「うわー」といった感じの表情だった。
「あ、危なかったなの。お兄ちゃんありがとう」
「これからは気を付けろよ」
「うん」
アリサはホッとし安心した表情を浮かべた。
「それにしても、ユウ君よく気づいたね」
「完全に勘だな。まあそれ以外の要因は、偽装されてるとことされてないとこで、本当にほんの少しタイルがずれてたからな、だから設計ミスじゃなければもしかしてと思っただけだ」
「そんな些細な事で気づくなんてすごいよ」
「そ、そうか?」
ルミアはユリウスを尊敬の眼差しで見ており、ユリウスは頬を掻いて照れ隠しの様に別の方を向いた。
「てかこんな感想言ってる場合じゃねーだろ!どっか逃げれる場所を探せ!どちらにせよこのままだと斧に両断される」
「「わかった!(なの)」」
ふと我に返ったユリウスは、全員に指示を出し安全地帯に繋がる何かを探し始めた。
そしてユリウス達が行動を取るより少し早く、トラップの偽装が戻っていた。
そして全員、手当たり次第壁や床を調べまくっていた。
「やばいぞ!すぐそこまで来てる」
ギルが後ろを確認し焦燥感あふれる表情をしながらいった。
それから数秒の間を置き、ガコンッという音が鳴り響き、ガガガと音を立てながら隠し扉が開いた。
「あったなの!」
その声を聞き、一同はアリサの方を見た。
すると隠し扉を指さすアリサが目に入り、その従い扉の奥に入った。
「ナイスだぜアリサ」
「えへへ」
アリサはユリウスに褒められ、嬉しそうにしていたが少し照れていた。
「それにしてもこの奥の床にさっきの偽装トラップないよな?」
ユリウスは先ほどの罠を思い出しながら、嫌な顔をしながら答えた。
「ユウ君不吉なこと言わないで……」
「そうだぞユウ。流石にあれを初見で回避するのは結構辛いものがある」
「はいはいわかった。俺が悪かった」
ユリウスは両手を上げ降参の意思を示した。
それからの探索はさっきよりも慎重になり、進む速度が低下していた。
そして開けた場所が目に入り、一行は罠に注意しながら進んだ。
「なんかマッチョなスケルトンがいるんだが……」
「いやいや肉がないからマッチョとかそんな表現無理だと思うんだけど」
ギルが変な物を見たような微妙な表情でそれを見ていった。
「筋肉とかが無いのにそんな表現をするなんて、流石お兄ちゃんなの!」
「アリサちゃんそこは尊敬しちゃダメだよ」
ルミアがユリウスの変な所を尊敬したアリサを、懸命にそこは尊敬しないよう阻止していた。
そして今ユリウス達が対峙しているスケルトンは他のスケルトンと違い、がたいが良く普通のスケルトンより大きい見た目をしていた。
「どうするユウ?如何にも強そうだけど」
「そうだなー……まあ、ここまで来たんだしあのスケルトンマッチョと一戦交えるか」
「了解。だけどマッチョではないよ。肉ないし……」
そういうとスケルトンマッチョと命名された、正面にいる個体に戦闘を挑んだ。
部屋に入るなり最初に入ったアリサに飛び掛かり、持っていた剣で斬りこんできた。
それを寸での所で剣で受けると、そのままスケルトンの剣を受け流し、カウンターを喰らわせようとしたが、綺麗な身のこなしでそれを回避しスケルトンはバックステップで後退した。
「わーお!やるね」
「感心してないで手伝ってなの」
スケルトンの身のこなしにユリウスは驚いており、他の面子も似たような反応をした。
「わかったわかった」
そう言いながらユリウスは銃を出し、パスパスという音と共にスケルトンに鉛弾をお見舞いし命中したが、ほとんどダメージが通ってなかった。
「ファイアーボール」
「合わせるよ。アイシクルピラー」
ルミアとギルが魔法を放ち、着弾させたが威力が足りず、敵の魔法防御力を突破できなかった為、ダメージが通らなかった。
ハクタクはアリサと共に前線で敵を牽制し、その間にユリウスは鞄から出したかの様に見えるようインベントリから水平二連式のダブル・バレル・ショットガンを取り出した。
そしてショットガンの通常弾も同時に出し、いくつかをポケットに入れ、残りをポーチに無造作に入れた。
ドンッという思い音が鳴り響き、アリサやハクタクに当たらないよう撃った。
「反動ヤベー!リココンしないとまともに当たらねーぞこれ」
リココンとはリコイルコントロールの略であり、リコイルとは銃を撃った際上に跳ね上がる反動の事を指す。主にFPSやTPSなどのシューティングゲーム全般で使われる単語でもある。
またしてもユリウスは銃の性能実験をやらなかった為、反動の計算ができていなかった。
そして二発目を撃ち今度は命中させ、敵を怯ませた。
その隙を狙ってアリサとギルが切り込み、ルミアが後方から魔法を放った。
「ファイアー・ランス」
魔法が着弾するとその部位には穴が開き、その瞬間にアリサとギルの息の合った連撃を入れ、ダメージを入れた。
そしてユリウスはショットガンの銃身手前に付いている開閉レバーを右にずらし、銃身を折り弾倉を出した。そしてその中にある薬莢を出しポケットに入っているショットガンの通常弾を二発分差し込み、折れた銃身を上に上げ、リロードを完了した。
ユリウスは隙を見て、二発連続で撃ち敵が怯んだところをアリサ達が攻撃するというパターンで繰り返し攻撃をしていた。
そして弱ってきたところでユリウスがショットガンを足に一発と胴に一発入れ、のけ反らせたところをアリサが剣技で仕留めた。
「——瞬閃」
アリサは敵を斬り終えると同時に納刀した。
そしてスケルトンは糸が切れたかのように崩れおち、体が崩壊していった。
そのときカランカランという音がし、それは地面と骨がぶつかって鳴った音であった。
「お疲れ~」
「お疲れ様なの」
「ワン!」
お互い労いの言葉を言い終えたくらいに唐突にあり得ない場所に霧が発生した。
「お前ら背中合わせになれ!はぐれるな」
…………
だが誰も反応せず、辺りにはユリウス以外いなくなっていた。
「クソッ!!分断された!」
ユリウス達はその謎の霧の効果で分断され、とりあえずユリウスはアリサ達を見つけるため前に歩みを進めた。
そしてしばらく歩くと、ユリウスは霧の奥にアリサ達とはまた違う人の気配を感じた。
「誰だ!」
ユリウスがそういうとその気配はユリウスの方に振り返った。
「もしかしてお前は……」
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