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第24話 探索準備そして探索開始

 現在、ユリウス達はアームの街の宿屋にいる。

 そしてハクタクは別の建物にいる。

 この宿ではテイムした魔物はそれ専用の場所がある為、そこに預ける決まりになっている。


「お前ら探索に使わない物は抜けよ。主に着替えとか」

「え!?でも……」

「いいな!」

「……はいなの」


 アリサはユリウスの圧に負け、しょんぼりとしながら着替えを鞄から抜いた。


「ユウ、食料とかはどうする?」

「食料と水は全員均等に持つようにするつもりだよ」

「ユウ君なんで?」

「そりゃ遺跡だからだよ。ほら、トラップとか踏んで孤立しても大丈夫なように」

「言われてみればたしかにそうだね。私、全然思いつかなかったよ」

「なら、いい勉強になったんじゃないか」


 そんなことを言いながら、今朝から準備の為に買ってきたポーションやロープなどの道具を見やすいように分けている。

 ポーションや解毒系の物は均等に分け、他の道具は得意な物を各自持った。


「後は詰める作業か」


 ユリウスはそう呟くといくつかのポーションと数個の干し肉を腰に付けたポーチに入れ、余りを鞄に詰めた。

 アリサとルミアもユリウスのやっていることを見て学び、それを真似してポーションと干し肉をいくつか腰のポーチに入れた。

 ギルはユリウスと同じく勝手に独走して準備を進めていた。

 そしてユリウスはよく見るあれを作っていた。


「お兄ちゃん何作ってるの?」

「松明だよ。これがあればランタンより広い範囲を照らせるからな」

「でも、それなら魔法で十分なの」

「いや俺が使えないから必要なんだ。それに魔力は戦闘に温存しといてもらいたいから」

「何が出るかわからないから?」

「そう」


 そんな話をしながらユリウスは松明を完成させた。

 そして鞄に入れ終わるとユリウスはマガジンポーチにもしっかりマガジンを入れ、それが終わると銃の先端にサプレッサーを取り付けた。


「ユウ君それは?」

「ああ、これか。これはサプレッサーっていう消音器だ。この武器音がでかいだろ?だから遺跡でこんなの使ったら音が籠ってうるさいからこれを付けてるんだ」

「あはは。たしかにそうだね」


 そしてユリウスは二丁分付け終わるとガンホルダーに銃を入れ、仮眠を取る為ベッドに横になった。


「もう寝るの?」

「ああ、夜に向かうつもりだからな」

「そうだったなの」


 アリサは忘れてたと言いそうな顔でそう言った。

 それから他の面子もユリウスが教えたことを守り、鞄に必要最低限の物を入れ仮眠を取った。


 そしてユリウス達は日が暮れ始めた頃に起き、夕食を食べに行った。


「まだ早いから意外と空いてるね」

「そうだな~。よしあそこに座るか」


 ユリウスは壁側にあるテーブル席を指さし、全員に伝えた。

 そして席に座り少しすると、奥から水を持った宿の女将が出てきた。


「あんたら何にするか決めたのかい?」

「俺はおすすめで頼む」

「じゃあ僕もそれで」

「私はこの肉野菜の炒め煮にするなの」

「私はこの料理でお願いします」


 メニュー表を広げアリサとルミアは料理の名前を指さし、女将はそれを紙にメモし「ちょっと待っててね」と言い残し去って行った。

 しばらくすると女将が料理を乗せたおぼんを片手に持って出てきた。


「はい、お待ちどうね」


 料理をユリウス達の前に並べると「おかわりするなら呼びなよ」と言い、奥の調理室に戻って行った。


「やっぱうまいなここの料理わ」

「そうだね」


 ユリウス達は感想を言い合いながら話を続け、料理が三分の一を切ったあたりで本題の遺跡についての話に入った。


「ところでユウ君。詳しい場所は分かったの」

「ああ、わかったぜ。遺跡の近場まで下見に行ったしな」


 そこでルミアがどんな場所だったと言いたげな顔でユリウスに話かけた。

 

「どうだった?」

「ザ・森って感じなレベルになってるくらいの深い場所だったな」

「それならいつもより警戒して進まないとね」

「そうだな」

 

 アリサは今の会話を聞いて驚いた表情をしていた。


「ルミア今のでよくわかったね」

「うーん、何となく?」

「なんかすごい!」


 そんなルミアを見てアリサは感嘆の声を上げた。

 それを見ていたユリウスはクスリと笑った。


「それで実際どうだった?」

「うーん。なんともって感じかな。なんかこうスゴイ気配的なのも感じなかった」

「それじゃあ全然参考にならないよユウ」

「あははは」

「はぁぁぁ。聞いた僕が馬鹿だった」

「ひでえな」


 ギルは眉間を押さえた。

 それをアリサとルミアは笑いながら見ていた。

 そしてなんやかんやあって夕食を食べ終わり、部屋に戻ってきた。


「じゃあ各自、荷物の再確認をしてくれ」


 そうしてユリウス達は詰め忘れが無いかの確認を終えると、借りている部屋に鍵をかけ受付に一旦鍵を返した。

 そしてユリウス達は宿屋を後にし、街の北東にある森に向かった。

 森に入ったユリウス達を最初に出迎えたのは、複数体の狼の形をした魔物であった。

 ユリウス達はその魔物を難なく蹴散らしたが、それを討伐しているときユリウスがハクタクを間違えて斬りそうになり、それをアリサが慌てて剣の間合いに入り防ぎ、ハクタクはアリサの方に急いで避難した。

 それからは何事もなく、目的の遺跡の前に到着した。


「これが死者の遺跡か!なんか思ってたのと違う」

「まあ、ツルが巻き付いてるあたり遺跡感はすごいんだけどね」

「それはわかるんだが、名前的に墓がずらりと並んでるのを想像してた」


 ユリウスは想像してた物と違い肩を落とした。


「わー!これが遺跡なんだ!初めて見たなの」

「私も初めて見たよ。でも、なんかイメージ通りでビックリした」


 アリサは目を輝かせており、ルミアは驚きの表情をしていた。


「よーしお前ら行くぞ!」

「おーー!なの」


 アリサは片手を突き上げると、そのままユリウスについて行った。


「ユウその前にランタン出しとけよ」

「やべっ!忘れてた」


 ユリウスが反射的に言うと、鞄にさげていたランタンを外し、ユリウス達はそれを腰にさげた。

 ランタンに火を点すとそのまま中に入って行った。


「やっぱり中は暗いな」

「壊れた壁やら天井やらから、偶に日の光があるくらいしかないからね」

「そうだギル、俺の鞄の中から松明出してくれ」

「わかった。……どれどれ……これかな」


 ギルはぶつぶつ言いながら鞄を漁り、中から松明を見つけだし鞄から出した。


「はいこれ」

「お!サンキュー」


 ユリウスが礼を言うと同時に、松明の近くで指をパチンと鳴らし火を点けた。

 火は数秘術を使い、摩擦熱を増幅させて発生した熱で点けていた。

 松明を持ちながら歩いていると、近くにいくつかの壁掛け用の松明を見つけ、それに松明をかざして火を点けた。

 勿論、古くて点火しない物もいくつかあった。


「とりあえずここらの光源は確保したし、一旦休憩にするか」

「賛成~。流石にここまで休憩なしだと大変だよ」

「ハハ。たしかに。一つ気を付けてほしいのが罠とか踏むなよ」

「わかってるよー」


 そう言いとながらルミアは荷物を下ろしその場に座った。

 それに続いて、他のメンバーもその場に座った。

 そしてユリウスは鞄から紙と羽ペンを取り出すと、その紙にペンを走らせ大雑把なマッピングを始めた。


「お兄ちゃん何やってるの?」

「ああ、これか。これはマッピングっていうんだ。今来た道を大まかに書き記してるんだよ」

「すんなり帰れるようにするため?」

「まあ、そんなとこかな。でも、迷わないようするってのが一番の理由だな」

「なるほどなの。でもそれなら移動しながらの方がいいじゃないの?」

「本来はたしかにそうやってやるべきものだけど、俺は移動しながらこれをやるのは苦手だもんで、やらないだけだ」

「じゃあ今度、私も試してみるなの」


 アリサと会話をしながらユリウスはスラスラとペンを走らせ、現在地までの大まかな地図を完成させた。 

 その工程をアリサは興味深そうに見て、メモ用の小さな紙に参考になりそうなことを、魔力で作成した文字で綴っていった。

 そしてユリウスはマッピングを終えると紙と羽ペンを鞄に入れ、手を体の後ろの方に置いた。

 すると、手を置いた瞬間ガコンッという音と共に、ユリウスは何かが沈む感覚を覚えた。


「あ……」

「はぁぁぁ」

「「…………」」 


 その音を聞くとギルはため息を吐き、アリサとルミアは絶句し言葉が出なかった。

 そしてその場の全員が慌てて荷物をまとめ、鞄に無造作に詰め込むと、道が塞がれていない方へ走り出した。

 塞がれていない道に入ると同時に、ユリウス達がいた場所にドゴンッという重い音が鳴り響いた。

 それを聞き四人と一匹は恐る恐る後ろを振り向くと、通路の幅にピッタリな巨大な丸い岩が転がって来て、その場の全員が走る速度を上げた。


「ユウ!何やってんだよ」

「ハハハ。やっちまったぜ」

「笑い事じゃないなのー!」

「遺跡のあるあるだね~」

「お兄ちゃんそんなこと言ってる場合じゃないなの!」


 そのやり取りをやりながら身を翻しユリウスは岩の方を向いた。


「よっと……いっちょあがり」


 剣(枝)を数回振り、岩を切り刻んだ。


「うそー!!枝で斬れるんだ」

「ワンッ!」


 ルミアが驚きの声を上げ、それに応えるべくハクタクが一鳴きした。

 だが、なくなったことを喜ぶのも束の間だった。

 岩が切り刻まれなくなると同時に、また奥からドゴンッという先ほどと同じ音が鳴り響いた。


「マジかー!」

「この罠殺す気満々に作られてるよ」


 ユリウスは叫び、ギルは呆れ気味で呟いた。

 

「そりゃ侵入者対策だからな。……お、あそこ逃げ込めそうだぞ」


 ユリウスが通路にある窪みを見つけ、そこへ向かいながら指をさした。

 全員その窪みに入り、少しすると転がって来ている岩が眼前を通り過ぎた。


「ふぅー、なんとか何とかやり過ごせたね」

「ひ、ひどい目にあった」


 ルミアにギルは適当に返し、息を整えていた。

 他のメンバーも同じように息を整えていたが、ルミアが壁に体を預けるようによっかかるとガコンッという音と共に、何かが沈みスイッチが入ったような音がした。

 音が鳴った瞬間、ユリウスは何かを察しメンバー全員に向けて言葉を発した。


「全員ここから出ろ!!」


 それを聞くと他のメンバーもユリウスに続いて瞬時に窪みから通路に出た。

 全員が窪みから出るのと同じくして、さっきまでいた場所が上下から突き出された槍で隙間なく敷き詰められていた。


「あ、危なかったなの」

「なんか人の心理を上手く突いたような作りだな、おい!」


 ユリウスは愚痴を言いながら歩みを進めた。

 それに続き他のメンバーも歩き始めた時である。

 ギルが床にあった罠のスイッチを踏んだ。


「伏せろ!!」


 ギルが咄嗟に叫ぶとその場に全員伏せ、さっきまで胴があった位置に矢が飛んでいき壁に刺さった。

 その矢の先端は怪しげな色をしており、見てすぐ毒だとわかる。


「この遺跡怖いのだが……」

「……死者の遺跡というだけあるね」


 ギルが苦笑い気味に言い、立ち上がった。


「後、罠踏んでないのアリサちゃんだけだね」

「おいルミア、フラグを建てるな!」

「え?フラグって何?」

「なるほど、ルミアは知らなかったのか」


 ユリウスが言った単語にルミアは首を傾げた為、ユリウスはルミアにフラグについて解説した。

 その説明を聞きアリサも「へー」と言いながらそれを理解した。

 ギルは知っていた為、何も反応しなかった。

 そんなことを話しながら進み少しして、フラグが回収された。

 床にあった罠のスイッチをアリアが踏み、ガコンッという音が鳴ると少し間を開けてから進行方向の床がなくなり、その下には槍が敷き詰められおり、罠に引っ掛かった者たちが骨になって刺さっていた。

 そして「なんだ」と一同が思った瞬間、ユリウス達がいた床がガタンッという音と共に急な傾斜になった。


「そういうことか」

「す、滑るなの」


 それからユリウス達は傾斜になった床の欠けた部分に手をかけ、落ちないよう耐えてからしばらくして罠の発動時間が切れ、床が元に戻った。

 その時ハクタクは傾斜になった床より手前にいたため何事もなかった。


「アリサのが一番凶悪だった」

「ま、まあそういうときもあるよ」

「フォローになってないなの」


 ユリウスの言葉にルミアがフォローを入れたが、アリサは疲れたと表情に出しながら言った。

 それからは罠のオンパレードだった。

 この遺跡はアンデット系の敵がいない代わりに、罠が大量にある場所だったのだ。


「てか、ユウ松明は?」

「罠の連続でなくした」

「だろうと思ったよ」


 ユリウスが笑いながら答えると、ギルは(うん、知ってた)と言いたげな表情で言った。


「ここが一番奥?」

「アリサちゃんたぶんそうだよ」


 ユリウス達は行き止まりで何もないがここが最終地点であることはその部屋が物語っていた。

 そして全員が部屋の真ん中に到着すると、同時に魔法陣が起動した。


「まじかよ。転移の魔法陣だ!全員背中合わせになれ!」


 ユリウスの声に反応し咄嗟に全員背中合わせになり、別の場所に飛ばされた。


「ここはどこなの?」

「たぶん遺跡の中だ。そしてなぜか遺跡の中に遺跡がある」


 ユリウス達が転移させれた先にはもう一つの遺跡があった。 

いつも読んで下さり有難うございます。

『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。


更新は毎週木曜日の予定です。


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