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第21話 剣聖、能力検証をする

この日、ユリウスはいつもの森に一人でいた。

 アリサとギルは先日の騒動の報告と貴族パーティーに参加している為王都におり、ルミアは屋敷に残ると言った為、今は屋敷でお菓子作りを学んでいた。

 

ユリウスはいつも使っている場所ではなく、そこより離れた深層付近の少し開けた場所にいる。


「さてさてさーて、なにからやろうかな」


 ユリウスは考える素振りを見せ、「そうだ」と呟くと直ぐに行動に移した。


「あの力はの使い方わっと。……たしか胸の内に意識を集中させて、非活性化領域にある力を覚醒させ潜在意識と融合させ、力を開放するって感じだったはず」


 手順を確認するため口ずさみながら、一つ一つ丁寧に実行に移していった。

 すると、ユリウスは徐々に禍々しい気配を纏い始めた。

 そして右手から徐々に闇が侵食を始めたが、しかしその侵食は右腕の下腕部で止まり、ユリウスがどれほど闇を展開しようと試みてもそれ以上展開することはなかった。

 

「あ、あれ?昔みたいに全身武装は出ないとわかってたがまさか腕一本すらまともに闇を展開できないとは……」


 ユリウスは唖然としながらも、闇の感触を確かめるため右手を開いたり、閉じたりしていた。

 それから「ふむ」と言うと木の前に立ち、右手で木の幹を掴むと約半分くらいを握りつぶした。


「やっぱ力も大分弱体化してるな。まさかこれくらいの木を完全に握りつぶせないとは……。まぁ闇を展開して手の形で肥大化できないから当たり前か」


 そして次にユリウスは木を右手で殴りつけた。

 殴られた木は、拳が当たった部分が砕け散り殴られた方向に向かって倒れた。

 さらに他の木に向かって右手で引っ掻くと当たった指の分だけ跡が付いた。


「引っ掻きだと爪が剥がれるかと思ったが大丈夫そうだな。……でもこいつも貫くほどの火力が出なかったな」


 そしてユリウスはインベントリから短剣を一本取りだした。

 すると、その短剣を勢いよく右腕の闇が展開している部分に向かって切りつけた。

 切りつけた場所には動脈があり、かなりの血が出てはいたがそこまで深くは切れていなかった。

 傷は闇によって即座に再生されたが、見た目では切れた場所が瞬時にくっついたという方が適切な表現だった。


「いってー!……予想通りやっぱ防御力すら低下してるか。昔は、こんな短剣なら剣の方が折れるはずだけど、今はこんなもんか。……やっぱ瞬時にくっついてもダメージは残るのね」


 ユリウスはインベントリを開き、手鏡を取り出した。

 そして、自分の顔を確認するように覗き込んだ。


「やっぱねぇ……か。魔王印……いや、この世界に合わせるなら魔王の紋章もしくは魔王紋か。あの騒動の時、額に一瞬浮かび上がったのにな~、まさか紋章を浮かび上がらせることすらできないほど弱体化してるとは」


 ユリウスは他の事も試そうとした。

 まず展開している闇を凝縮し、武器にしようと試みたが量が足りずまともに使える物にはならず断念し、次は闇を一点集中して防御力を向上させたが、なんとか短剣の刃が通らない程度しか上昇せず、その他にも試していたがかつてユリウスが使っていた能力のほぼ全てが弱体化しており、無いよりマシ程度になっていた。


「もしかして……」


 そう呟くとユリウスは手鏡をインベントリに入れ、展開している闇を解除した為元の腕に戻った。

 そしてユリウスは解除した分を使い、魔王の紋章を浮かび上がらせようと試みた。

 すると少しずつだが、額に紋章らしき物が浮かび上がり始めたが中途半端な形で止まった。その形はまだ紋章の形になりきれておらず、紋章のどこかの部分だということが分かるくらいしか浮かび上がらなかった。

 そして再び手鏡を出し、ユリウスは紋章の形を確認した。


「おいおいまじか!?たったのこれだけしか出せないのか!これじゃあ力のほとんどが使えないじゃねえか。……なら、俺の第五紋?を触媒に侵食させればなんとかいけるかな?」


 その案を実行する為、用済みになった手鏡をインベントリに入れ、右手にある自分の紋章を上書きするイメージをし、数秘術の補助を使いながら紋章を変質させていった。すると紋章が歪な形になり、禍々しさが増していきユリウスの第五紋が魔王の紋章へと姿を変えた。


「おお!できたできた」


 そして、ユリウスは試しに近くの木を殴った。

 木はびくともせずユリウスの殴った方の手から出血していた。それからも走る、跳ぶなど基礎運動をし、何が上昇したか試していた。



「まじかー。紋章だと全体の身体能力が向上するけど、上がり幅が合ってないようなもんだなこれは……」


 それが分かるとユリウスは紋章の侵食を解除し、一つ気になることがありそれを試そうとした。


「たしかあの時、一瞬だったが魔王の紋章が完全体で出たってことは、何か条件でもあるのか?」


 そう言うとユリウスは闇を展開し、意識的に掛けていた制限を外し、暴走する可能性がある状態になった。

 闇が制御ができないほど展開し、暴走するかしないかの辺りまで開放すると額に全盛期と比べると小さいが、紋章が浮かび上がってきたが、それと同時に魔王の力がユリウスの制御下を離れかけ、慌てて解除した。


「……なるほど。暴走すれすれでやっと力が使えるのか。流石にこれは当面封印だな~。危険すぎるし、それに使ったところでこれに関してほぼ成長しないからな」


 ユリウスのこの闇の力はかつて魔族や魔王の血肉をふんだんに浴び、さらに魂が元々魔の存在に近いものであった為、偶然適合し使えるようになった。このスキルをもし成長させるには再び血肉を浴るか、他のとある条件でなくてはならず現状では不可能に等しかった。

 さらに今のユリウスの体では、仮に使えても力に耐えきることがギリギリできるかできないかの二択の為、ユリウスはこれを封印したのだ。

 

「クソー!あの頃の、魔王の姿で魔法を使って剣を振り回す俺の夢がーー!はぁぁ、まぁできない物は仕方ないか……。じゃあ次に呼吸法を試してみるか。まず剣聖とか言われてて、神を殺せるくらいから使ってたやつからやろうかな」


 そう一人でぶつぶついいながら、ユリウスはまず呼吸を落ち着かせた。

 そして全盛期の呼吸法を始めたが、その瞬間ユリウスの体が耐え切れず心臓が破裂しそうになり、ユリウスは慌てて心臓に闇を展開して破裂を回避したが、右肺が破裂し左肺に大きな穴が開き、肺がボロボロになったしまった。

 それと同時にユリウスは吐血した。


「かひゅー……ひゅーひゅぅー……かひゅー」

(こ、呼吸ができない。これは割とやばいかも)


 そしてユリウスは心臓に展開していた闇を解除し、先に破裂した右肺に展開し、その次に左肺に展開して瞬時に治した。


「ダメージは残ってるけどなんとか治った、か。無窮の呼吸は流石に無理があったか」


 無窮の呼吸とは呼吸法の極意である。

 その能力は、空気を吸うと同時に心臓を活性化させ、超高速で動かし高効率で酸素などを無駄なく循環させる為、身体能力などの人間の体にある、ありとあらゆる機能その全てを超大幅強化することができる。

 例えば、スライムなどの最下級の雑魚モンスターしか殺せない者がこれを使うことで、古龍クラスのドラゴンを殺すことができるようになるくらいの強化である。数値化するならば元のステータス等を全て百倍もしくはそれ以上に跳ね上げることができる。無論そんな品物を並の人が使うと死ぬ。そして今回ユリウスは魔王の力があった為、運よく生き延びれたのだ。


「……お!こいつが無理ならあれを試して見るか」


 そう呟くとユリウスは無窮の呼吸の下位互換である活性の呼吸を試し始めた。

 先と違い体は何とか耐えていたが、それでも悲鳴を上げ始め徐々に体に痛みが走り出した。

 肺がまだ貧弱の為、やはり長時間使うことはできなかった。


「はぁはぁ……はぁ、な、なんとか無事成功したが、流石に肺をちゃんと鍛えて無かったから負荷が大きいな」


 息を切らしながら呟きその場に仰向けで倒れた。


 活性の呼吸とはいくつかある呼吸法を全て極めることで習得できる物であり、無窮の呼吸と同じで能力があるが、上がり幅は二~十倍である。

 そして無窮の呼吸はこの呼吸法を極め、さらに昇華させたものである。

 他の呼吸法は、攻撃力が上がるなどの限定的な物ばかりであり、それらを全て取得して初めてこの領域に来れる。

 

 ユリウスはかつてとある師の元で修行しており、師はある戦いにより戦死したがその教えはきっちり受け継ぎ、血がにじむ様な努力をユリウスはし、それこそ命を落としかける事も珍しくないほどのことをやりやっと昇華させたのだ。


「ふむ、まあ成功かな。まだ、短時間しかできないからもっと鍛錬しないとな~。それにしても師匠の教えが使えないのは辛いが、まあこれさえ使えればまた使えるようになるか。どうせ師匠なら『そんな事で悩んでたら強くなれないぞー』とか言いそうだしな。ハハハ」

 

 ユリウスはそう笑いながら空を眺め、それから少し仮眠を取った。

 それから一時間半が経ち、ユリウスは目を覚まし背伸びをすると近くの木に背を預けた。


「さて、次はレベルがどれくらい上がってるか確認だな」


 そしてユリウスは管理魔法コンソールを開き、スキルの欄も同時に開いた。


「お、レベルが上がってるな~。てか、なんだこのSPってのは。そしてステータスあまり変わってない気がするんだが……」


 現在のステータス欄にはこうなっていた。


 ―――ユリウス・L・アルバート+2 七歳 Lv25


    MP――――――――

    SP 232/250

    筋力 B++ 耐久 B-

    俊敏 A+  知力 A

    魔力 ??? 幸運 EX

    成長途中のため変動有り  


 それからユリウスはSPと書かれた欄をタップし開いた。


 ―――SPとは

   スキルポイントの略である。

   数値は目安の為、0になってもスキルを使えますが、暫くすると体への負荷が増加します。


「なるほど。ま、現状そこまでばかすか使わないから問題ないか。次はスキルの確認かな。……お!増えてる増えてる」


 ――――追加スキル一覧

     魔王(弱体化・大) EX

     魔王化カースド・マリス 

     魔王外装(使用不可)EX

     魔王の宵闇(弱体化・超) C-

     鍛冶 EX

     次Lv40にて開放


 それからユリウスはスキルを一つずつタップし、確認していった。



いつも読んで下さり有難うございます。

『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。


更新は毎週木曜日の予定です。

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