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第19話 事後調査

 ユリウスは仰向けに倒れ、夜空をながめていた。

 技の反動で全身に筋肉痛で激痛が走り、動けずにいた。


「クソー!早く反動無しで剣技が使えるようになりてー!!」


 一人、夜空に向かい叫んでいるとギル達が歩いてきた。


「相変わらずだね~。剣技使って倒れるとかまだまだだな」

「ほっとけ!」

「でも折れない剣は欲しいよね」

「いや、もうこれ折れてるじゃなくて砕けてるが正解な気がするんだが……」

「ははは。たしかに。……で、ユウ動けるかい?」

「どう見ても無理だろ。もうピクリとも動かねー」

「じゃあ肩貸すよ」


 ギルはそう言うとユリウスを起こし右側を支えた。


「じゃあ反対は私が持つよ」


 ルミアがもう片方の肩を持った。


「今ならお兄ちゃんに攻撃し放題なの」

「アリサさん、あのーそれだけはやめてもらえますか?」

「えーやだ!魔物さん達を私達に擦り付けた罰なの」


 そうしてアリサは、全身に激痛が走っている状態のユリウスをつつき始めた。

 アリサのつつきを喰らいユリウスは悶絶しており、アリサはその様を楽しんでいた。

 

 そんなこんなありながら、ユリウス達は街に戻って行った。

 そしてそれから一時間が経った。

 

「ユウ、体の方はどう?」

「なんとか動けるくらいには回復したよ。まだいろんな所が痛いけどね」


 そして屋敷の方からアリサ達、女子勢が歩いてきた。


「あ、お兄ちゃん動けるようになったんだ」

「な、なんとかな」

「それならよかったなの。あ、そうだ先にお風呂入らせてもらったなの」

「了解だ」


 アリサ達はフィニアの計らいもあり、早く汚れを落としたいと言った為ユリウスが復帰する前に風呂を済ませようと言う話になっていた。 


「ユウ君これからどうするの?」

「ああ、それなら後片付けを手伝おうと思ってる」

「なら私達も手伝うよ」

「いや、ルミアお前たちはそろそろ休めよ眠いんだろ」

「ううん、大丈夫!全然眠くないよ」

「嘘つけ、虚ろな目になってるぞ」


 ルミアはウトウトしながらそう答えた。


「眠い状態で素材の解体とかはやめろ危険だから。それにお前らは女の子なんだから美容とかに関わるぞ。ついでに言うと背が伸びないぞ」

「むうう、それならお兄ちゃんも一緒に寝るなの」

「いや俺は……いやなんでもないそうするか」


 ユリウスは立ち上がりギルの方を向き、アイコンタクトを交わした。

 ギルはその意図を読み取り、頷いて返した。


「じゃあ、ほらお前ら行くぞ」

「「うん!」」


 ユリウスはそう言うとアリサ達を率いて自分の部屋に行った。


「ほらお前らもベッドに入れ、俺も着替えたら寝るから」

「わかったよ」 


 そうして二人はベッドに入った。

 そしてアリサが少し寝ぼけ気味に話しかけてきた。


「お兄ちゃん大好きなの。将来はお兄ちゃんのお嫁さんになるなの!」

「それは嬉しいな将来が楽しみだ。俺も大好きだぞアリサ、お休み」

「えへへ、お休みなの」


 ユリウスはアリサの額に口付けをした。


「アリサちゃんばっかずるいよ。私もユウ君のお嫁さんになる」

「ありがとなルミア嬉しいぞ。これは将来、両手に花だな」


 そしてルミアにも額に口付けをした。

 勿論ユリウスはこのやり取りを間に受けてはいなかった。

 子供のそれと解釈していた。


 それからユリウスはアリサとルミアに「二人ともお休みと」言い、二人が寝るのを見届けた。


「フィニア居るんだろ?」


 そう言うと部屋の扉が開き、そこから寝間着姿のフィニアが現れた。


「わかってたんですか」

「まあな。たぶん大丈夫だろうけどフィニアこいつらを頼む」

「わかりました。元々そのつもりでしたし」


 返事を聞くとユリウスは部屋を後にした。

 そしてユリウスはギルと合流した。


「二人は?」

「ぐっすりだ」

「じゃあいくか」

「そうだな。あいつらが抜けた分、俺が頑張んないとな」

「妹思いだね~」

「そりゃ可愛い妹達なんだから大切にするさ」


 ユリウスとギルはそんな事を話しながら、魔物の片づけに参加した。


「それにしても凄い数だね」

「たしかにな。これ余裕で夜明けがくるぞ」

「ははは。なんかやる気がなくなるなー」


 ギルは苦笑いしながら、ユリウスと共に魔物から素材を剥ぎ取り始めた。


「お、やんちゃ坊主どもじゃねえか」

「あ、どうもおじさん」

「ははは!俺はぎりぎりまだそんな歳じゃねえぞ?」

「いやいやその見た目なら十分おじさんじゃね」

「ははは!やっぱそう見えるのか」


 がたいの良い中年の男は愉快に笑いながら話していた。


「それにしてもお前らは解体上手いな。普通に並の冒険者よりうまいぞ」

「そうですか?僕たちはユウにいろいろ教わったから」

「そうなのか。まあ頑張るのだぞ諸君、俺は邪魔になるからこの辺でじゃあな……っと忘れてた剥ぎ終わった奴は回収してくぞ」

「あ、お願いします」


 そう言い中年の男は軽く手を振り、魔物の死体を担ぎ去って行った。


「なんか嵐が去った感がやばい」

「ユウ言いたいことはわかる」


 そして二人は黙々と素材を剥ぎ取り、食べられる魔物と食えない魔物とで分けていた。

 二人の後ろには素材が山の様にできていた。


 定期的に素材を回収する係の人がユリウス達の所に着て、その膨大な量を見て毎度驚いていた。


「いくつか良さそうな素材を貰えたし割と満足」

「ユウは大群を斬れて満足してたんじゃないの?」

「それが一番満足した。まぁ、とりあえず今度素材を使って武具を揃えようかな」

「だね~。それよりもそろそろ行かなくていいの」

「そうだな。じゃあちょっくら調査行ってくるわ」

「了解だよ」


 ギルの返事を聞きユリウスは椅子代わりにしていた少し大きめの丸太から腰を上げ立つと、森の方へ駆けていった。


「ふむ酷い有様だな。まー俺がやったんだが……ははは」


一人苦笑いを浮かべながら、倒木だらけの森を進んで行った。

 そこは木々の隙間から月明かりが入り込み、幻想的な光景が広がっていた。

そして進んで行く度に徐々に気温が下がっていった。


「肌寒のだが……」


ユリウスは腕を擦りながら小走りを続けた。


 それから少し経ち、ユリウスは辺りがおかしい事に気付いた。


「はぁ!?このクソ暑い季節になぜ霜が降りてんだ!」


 溶け始めてはいるが辺りには霜が降り、所々が白くなっていた。

 今の季節は夏であり、霜が降りるなんてありえない季節である。

 ユリウスは近くの葉を採り、確かめるかのように触れた。


「一応は冷たいな」


 そう呟くと葉を捨て、再び深層に向かい駆けて行った。

 進む度に風景は冬のそれへと姿を変えていった。

 そして元凶だと思われる場所に到着した。


「おいおいおい!辺り一面氷漬けじゃねえか」


 木々は勿論のこと地面すらも氷漬けになっており、そこに月明かりが反射し絶景ともいえる綺麗な風景が広がっていた。

 歩く度にパキパキと氷が割れる音がした。

 そしてユリウスは何かが居たであろう場所まで歩みを進めた。

 何かが居たであろう場所の付近は氷が厚く張っており、地面の氷からも割れる音がしなくなるほどである。 

 木々も例外なく分厚い氷に閉じ込められていた。


「うわっ!幻想的だな~。……とか言ってる場合じゃないな」


 ユリウスは付近の探索を始めた。

 そしてとある物を見つけた。


「これは龍鱗……いや龍鱗片か」


 その鱗には白氷がまだついており、鱗本来の色である灰色がかけた部分から確認できる。

 鱗は白氷により欠けた部分以外からは、少し青みがかって見えていた。


「……氷結龍、か。まさかこんな大物が来ていたとはな」


 ユリウスは鱗を月にかざし、鱗についた白氷が輝くように鮮やかな色を織りなした。


「まさか古龍が縄張りから出て動き始めるとは。……世界かもしくは生態系に何か起きたのか?」


 そして古龍とはお伽話に出てくる伝説の龍である。

 個々に固有の特殊魔力を持ち、その力は常に自然へ干渉し続ける為、自然災害を具現化した化身と言っても過言ではない。

 間違いなく神龍種を除けば地上最強種に分類される。


「いくつか鱗片が落ちてるし貰っとくか」


 そう言うとユリウスは少し大きめの奴を一つポーチに入れ、残りは全てをインベントリに入れた。

 勿論もうすぐ来るであろう調査隊の為にいくつかは残していた。

 それからも辺りを探索していたが魔物は一匹たりとも出会わなかった。


「だいたい直径五百メートル位が氷漬けにされてるのか。……ってことは力を抑制してたってことか。とりあえず戻って報告だな」


 帰路に着き、戻っている最中にグレンが派遣した調査隊とすれ違いユリウスはこの先のことを龍鱗片を見せ、状況を説明しギルの元に戻った。


「いくつか龍鱗片を残してきたから後は調査隊に任せようかな」

「……ユウお帰り~」

「おう!戻った」


 ユリウスは声を掛けられた方を向いた。

 するとギルが手を振りながらユリウスの元まで歩いてきていた。


「なんかあった?」

「やべーのがあったぞ。……ほれ」


 ユリウスは腰に付けているポーチから龍鱗片を出し、ギルに見せた。


「こ、これってまさか!?」

「そのまさかだ。古龍の鱗の欠片だ」

「なんでそんな強い龍がここに?」

「多分、生態系とかに何かあったのかもしれないな。というわけで報告行ってくる」

「じゃあ僕も休憩がてらついてくよ」


 ギルの返事を聞き、ユリウスは歩みを進め魔物の処理をしているグレンの元まで行った。


「よう、ユウ!今回はすごかったぞ。死ぬかと思ったけどな。ハハハハハ」


 そう言うや否やグレンは豪快に笑った。


「それでなにかあったのか」

「うん。森の奥まで調査に行ったんだが実は……」


 ユリウスはグレンに何が起きていたのかを話し、龍鱗片と共に周囲が氷漬けになっていたことを伝えた。


「それが事実なら大変なことになるぞ。そしてこの鱗、凄まじい力を秘めてそうだな」


 グレンは龍鱗片を見ながらそう言い、ユリウスに返した。


「とりあえずこれはお前が持ってろ。アリサ達も見たがるだろうしな」


 グレンは紙にユリウスの報告をまとめながら答えた。

 そして、書き終えると「お疲れさん」と声をかけた。

 書き終えた紙はシスに屋敷まで持っていかせたのだった。


「父さんもお疲れ~。とりあえず報告はこれくらいかな」

「ああ、二人とも今日はご苦労だったな」


 それを聞くと二人はグレンの元を離れ、魔物の処理に戻った。


「ユウは休まなくていいの?」

「うん。これ位の夜更かしは慣れてるからな」

「ギルこそ大丈夫なのか」

「大丈夫だよ~。見張り番の練習してるから、これもその一環だと思ってやってるし」

「なるほどな~」


 二人は話しながら魔物の解体を続けた。

 そして食べることができない魔物がある程度溜まると、魔物を燃やすためにキャンプファイヤーの様に燃やしている場所に持っていき、炎の中に一体ずつ放り投げた。

 それを繰り返し、気付けば明け方になっていたのだった。

いつも読んで下さり有難うございます。

『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。


更新は毎週木曜日の予定です。

土曜日に上陸予定の台風の被害によっては次回更新が遅れる場合があります。

その際は申し訳ございません。

これかも応援よろしくお願いします。



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