第13話 ルミアのスキル判明
第14話 ルミアのスキル判明
「参った。俺の負けだ。ほんとにお前スキル無しなのか」
グレンは、そう言いながら剣を鞘に納めると、ユリウスの肩に腕をかけてきた。
「それにしてもユリウスなんだ!?今のは?俺も長いこと剣士として戦ってるが、あんなのは見たことがないぞ」
「さ、さーなんだろうね。何かできるかなと思って縮地したらなんか凄いの出来た。あはは」
苦笑いをしながら、少し片言気味に言うと誤魔化すように「はは」と笑った。
(ヤベー、ついめんどくさくなって使っちまった。ま、まぁ何とか誤魔化せるよね、多分)
ユリウスは、内心で問い詰められないか、不安でしかたなかった。
そのときアリサとその隣にルミアがおり、一緒にテクテクと近寄ってきた。
「お兄ちゃんすごい!なの。父上に勝っちゃうなんて!」
「いやいや父さんがまだ本気を出してないから勝てたんだよ」
「そうなの?」
「ああ。だってこんなところで本気出したら庭が、とんでもない事になっちゃうだろ」
「たしかになの。流石お兄ちゃんなの」
アリサは、改めて兄ユリウスを尊敬したのだった。
「いやいや、あれでも結構全力だったぞユリウス」
グレンが、そうユリウスに言った。
「父さん、まだ全力じゃないっしょ。だってここだと周りを気にして満足に剣技を使えないからね」
「たしかに、ちゃんとした戦闘じゃないからそこまではできてないが、出せる範囲では全力だった。それにユリウスお前まだ本気出してないだろ。戦ってて思ったが、お前少し技の調子を確かめる程度でやってた感じがした。まるで準備運動をするような感じだった」
「いや、流石に俺も父さんに負けないように、必死だっただけさ」
「どうだかな」
(たしかに父さんの言う通り、技が使えるか試してたけど、まさか見抜かれるとは)
ユリウスは、これ以上なんか喋るとぼろが出るかもと思い話題を変えた。
「そういえば父さん、兄さんとは稽古しないの?」
「いやするぞ。多分もうすぐで来るはずだ。……お、噂をすれば」
屋敷から稽古用の服を着替えた、シスが庭に現れた。
シスは、珍しい面子だなと呟くと、そのままグレン達の方へ歩いてきた。
「父さん、ユリウスがいるなんて珍しいね」
「ああ、アリサから色々言われてな、それでちゃんと参加してもらうことにしたんだ。というわけでシス今日は、ユリウスと一本模擬戦してやれ」
「いいの?それだと簡単じゃない」
「なーに負けたらいつもより稽古の内容をさらに、増やすだけさ」
「ユリウスには悪いけど、それなら本気でやんないとね」
グレンは、シスがユリウスの方へ顔を向け話している時、ゲスい顔になっていた。
それを見たアリサ達2人は、大人げないと思ったのだった。
そしてユリウスは、帯剣している2本の剣の内1本を、模擬戦専用の武器が並んでいる場所に戻すと、シスの方へと歩きある程度の場所までいくと、距離を取るようにそこで止まった。
「兄さん、こんなもんでいいか?」
「ユリウスの好きな場所からでいいよ」
このときやはりシスも侮っていた。
そしてその状況を見ている3人中2人は、ニヤニヤしながら楽しんでいた。
そう、二人ともユリウスに負けた組である。
そうこうしていると、ルミアが開始の合図を出した。
「ユリウスに先攻は譲るよ」
「ならお言葉に甘えるとするかな」
そう答えるとユリウスは、駆け足でシスの所まで行き、斬りかかろうとした。
だが、その時シスが先に、剣を振りに斬り込んできた。
しかし、ユリウスはその剣を弾くと、シスの首元に剣を突き付けた。
そうシスは、ユリウスに瞬殺されたのだ。
「俺の勝ちだな兄さん」
「クソー、負けたか。ユウ強すぎじゃない?」
そう話していると、アリサが横から話しかけてきた。
「だってユウお兄ちゃんは父上との模擬戦で勝ってるなの。ついでに言うと私も負けてるなの」
それを、肯定するように隣にいるルミアが、コクコクと頷いている。
「そりゃ勝てないよ。てか勝てないと知ってて父上は、俺にユリウスと戦わせたのか。クソー!!嵌められた」
「というわけで、これからは稽古のメニューは倍だ」
「ひぃぃぃぃーーー!」
そんな2人のやり取りの隣では、アリサとルミアの二人が盛り上がっていた。
「ユウ君のあの技とかすごかった」
「うんうん。お兄ちゃんの受け流しからのカウンターとかもなの」
そんな時、屋敷からタオルを持ったサラが、ユリウス達に近づいてきた。
「ほれ。お疲れさん」
そう言いながら、持っていたタオルをアリサやユリウスに渡した。
今しがた来たシスは、これからが本番のため何も渡さなかった。
無論グレンにもだ。
「そうだ!ユリウス今度わたしと一戦してくれないか」
「サラって、戦えたんだ」
「そりゃ、昔は前衛に立ってあいつらと一緒に戦ってたからな」
「まぁ、また今度な」
サラは「そうだった」と言い何かを思い出し、ルミアの方に向き直ると本題を言った。
「ルミア、お前のスキル鑑定の結果が出てるから一息したら執務室にこい」
「わ、わかりました」
そう告げるとサラは、屋敷に去っていった。
ユリウス達もそれに続き、屋敷の中に戻って行った。
「それにしてもさっきの模擬戦は凄かったの。もっと見たいなの」
「たしかに、今度はちゃんと本気を出した父さんとやりたいな」
ルミアも会話に加わり盛り上がった。
「またやるときも私に教えてね。観戦したいし、これからの参考にもしていきたいから」
「それなら安心しろ。しっかり教えてやるからな。それにもし剣に興味があれば、スキルが無くても教えてやるぜ」
「それは楽しみ。そういえば私、ちょっとなら魔法使えるよ」
それを聞いた2人は驚きの声をあげ「聞いてないぞ(よ)」と2人とも声をそろえて言った。
「ルミアは、何が使えるなの?」
「え、えーと支援系と回復系がちょっとかな」
ルミアは、ユリウスとアリサの圧に押され少し後ずさった。
そんなこんなしていると、執務室の前に到着した。
いつも道理に、ドアをノックした。
すると、勝手にドアが開かれたと思うと、そこにはサラがいた。
「相変わらずサラは早いな」
「そりゃ、鑑定とかの仕事の後だしな」
それから3人が入室したのを確認してサラは、ドアを閉めた。
3人は、ソファに腰かけた。
「みんな来たわね、じゃあルミアちゃんの鑑定結果を言うわね」
「ちょっと待った。それ俺が見ても大丈夫だよな?発表の瞬間に、紙に書かれてるのを見てみたい」
「ええ、大丈夫よ。だけどルミアちゃんがいいならだけど」
そう言い、ルミアを見ると笑顔で「いいよ」と言った。
それを聞くと、アリサも「見てみたいなの」といいユリウスと一緒にクレアの後方へといくと、クレアを中心に右にユリウス、左にアリサがいた。
準備ができたのを確認すると、もったいぶっていたサラが鑑定結果が、書かれた紙をクレアに渡した。
「じゃあ、開くわよ」
そう言いながら、クレアは丸められた紙を広げた。
すると、それを見ていた全員が「はぁっ!」と、驚きの声を各々あげた。
そこには、こう記されていた。
万能の才 B+
増幅の巫女 EX
魔導の智恵 A
万能の才とは
特殊スキルを除く、全てのスキルが使用可能であり、一定のレベルの武技や魔法であれば、無条件で使用が可能である。
そして一部の特殊スキルであれば、使用さえすれば使った範囲内の技が使用可能となる。さらにほとんどの特殊スキルが、習得可能になる。だがその分、何かを極めたことにより習得できる、スキルは習得が難しくなる。
そしてこのスキルの成長速度は、他のスキルに比べると結構遅い。
増幅の巫女とは
ありとあらゆる力を倍以上にできる。攻撃魔法であれば、最下位魔法を上位魔法と、同等の威力にすることが可能である。
しかし使い慣れないと、1.5倍から2倍までしか上昇させれない。そしてある条件下でなら、任意の者の魔力を一時的に増やすことが可能である。これも同じく使い勝手が悪く、慣れないと倍化できる範囲が狭まる。
魔導の智恵とは
ありとあらゆる空間で魔法を行使可能にするスキルである。
例えば、魔法が存在せず魔力すらない世界で、魔法の行使を可能にするなどである。
ルミアのスキルは、まさしく天才と呼ぶべきものであり、勇者になることすら容易にできるものばかりであったが、このスキルは万能ゆえに使い勝手が非常に悪いのだ。
そして1番の危険性は、このスキルが露見した際のリスクである。
この世界には特殊な魔法や道具が存在する。
それらの中には、一部のスキルに限定はされるが他者のスキルを強制的に使用することが、できる物がある。
そしてルミアは、その中でも最強格である増幅系のスキル持ちである。
これを知っているクレアは頭を抱えた。
「……まずいわね」
クレアは、そう呟いた。
そしてユリウスはと言うと……
「な、なんてチートなんだ!」
ユリウスは、それを唖然としながら眺め、そう呟いた。
アリサは、ちゃんスキルの凄さに圧倒され、唯々絶句していた。
そんな様子を見ていたルミアは、どうしたの?と言いたげな顔で首を傾げていた。
「ルミアちゃんとりあえ鑑定結果について話すわね」
クレアは、そう告げるとルミアにスキルを教え、どんなスキルなのかも詳しく説明した。
それを聞いた、ルミアも驚いていた。そして少し間を開け、対策はどうすればとクレアに訪ねていた。
「そうね。あなたには偽装スキル習得してもらうわ。多分だけど、ルミアちゃんのスキルならすぐ使える様になると思うの。だから他にやりたいことはあると思うけど、先にこっちを優先してもらうことにするわ」
「わかった!私のためにありがとう」
「ふふ。気にしないで、家族なんだから当然よ」
クレアは、微笑しながら答えた。
「さて」と言いながら立ち上がると、クレアはこの場をサラに預け「ちょっと書斎に行ってくるわね」と言い残すと、執務室をあとにした。
「じゃあ、ここいらで解散だな。後は自由行動だ」
「なら俺はいつもの所に行くとするか。お前らはどうする?」
ユリウスは、アリサ達に問いかけた。
「行くなの」
「私も行ってみたい」
2人の返事を聞くとユリウス達は昼食済ませ、いつもの森に入っていった。
目的地に到着すると、ギルが先に来ていた。
先に、着いたギルは斬り込みの練習のために近くの木を木人の代りにしていた。
「おっす。早いなギル」
「僕も少し前に着いたばかりだよ。少し早くこっちの用事が済んだもんでね」
「そうか。そんで一つ、結構大事な話があるからちょいと聞いてくれ」
ユリウスは、いつにもまして真剣な顔で言った。
それを見たギルは、よっぽどの物なんだと思いその話を聞くと答えた。
それからルミアのことについて話した。
ユリウスがこの話をした理由は、もし自分がルミアの近くいなくて、守ることができない状況の時、お前に守って欲しいからというものであった。
ギルも、その意図を汲んで「わかった」と答えた。
そして、この空気を変えるためユリウスは、前に話した数秘術についての話題に変えた。
「そうだ、お前らに言っときたいことがあったんだ」
「どうしたの?改まって」
「ああ、前に数秘術を見せたろ。あれについてだ」
ギルとアリサは、どうしたんだろと思い小首を傾げ、当然それについて知らないルミアは、ユリウスに質問をした。
ユリウスは、数秘術について話し、実際にやって見せた。
それを、見たルミアは、前のアリサ達の様な反応をした。
だがギルが「それは、魔法じゃないよ。前に見たとき、僕たちがちゃんと確認したから」そう言うとアリサがコクコクと頷いてるのを見て、ルミアはこんなものもあるんだと言い納得した。
「それでお兄ちゃん、それがどうかしたなの?」
「ああ、お前たちにこれについての認識を変えてもらいたくてな。俺は、この数秘術を魔法であると言い張ることにした。理由は、ルミアと似たような物だ。変に珍しい物だと、返って面倒ごとを呼び寄せるかもしれないからだ。そん時に、ルミアに飛び火しないとも言い切れないからだ。だから数秘術については、常に魔法そのものに隠蔽魔法が付与されてるってことにしたい」
それを聞いたギルとアリサの2人は、たしかにと声をそろえて言った。
ルミアはありがとうと微笑しながら答えた。
「なるほど。つまり普通の魔力感知だと感知できないってことにするんだね」
「そういうことだ。だから誰かに聞かれたら、ギルが言った様な感じに答えて欲しい」
それを聞くと、アリサは「わかった!なの」となぜか右手を挙げて答え、ルミアは「わかったよ」と言った。
そしてここに魔法が使えない出来損ないの魔法剣士が誕生した。
いつも読んで下さり有難うございます。
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