第五十七話 賭け
「行くぞ!」
手を突き出して号令をかけ、回り込むように三方に散る。
「何をするかと思えば、ただの挟撃か。つまらん……実につまらん! お前には失望したぞ」
呆れ顔でため息を吐きながら、ぞんざいに三方向へ巨大なエネルギー塊を放ってくる。高速で躱すが、しつこく追尾してくる。振り切れんか!
オフィエルがエネルギー塊で消し飛ぶ。それに一拍遅れる形でサタンも消し飛んでしまった。
「まあ、それなりに楽しかったぞ小僧。挟撃とはこうやるものだ」
僭称者の目の前まで迫ったが、奴が突き出した手に4つ目の巨大なエネルギー塊が形成される。まばゆい光が前後から襲い来る。回避が可能な距離ではない。
「さらばだ」
不快な高笑いとともに、視界がホワイトアウトする。
◆ ◆ ◆
しかし、直後俺は奴の背後を取っていた。オフィエルと左手を繋いだ状態で、だ。そのオフィエルはサタンともう片方の手を握っている。驚愕の表情で僭称者がこちらを振り向く。ウォッチャーで背後の異常に気づいたか。だが、その表情が見たかった!!
からくりはこうだ。まず、サタンとオフィエルに透明化の魔法をかけ、同時に二人の幻影を飛ばす。先程三方に別れたサタンとオフィエルだ。そして、挟撃を俺の奥の手だと思った僭称者は高を括るだろうとも予想した。
そしてここからがかなりの博打だったが、奴にやられる振りをして量子ジャンプを試みた。細かい理屈は知らんが、観測されることによって存在が確定するとかいうアレだ。かなり無茶苦茶な試みだが、「やれる」という蛮勇にも似た謎の自信と、何より手を握ることを承諾の意思表明とした念話において、二人が快諾してくれたことによってもぎ取ったチャンスだ。
ありったけの魔力を込めた拳を僭称者に繰り出す――!
次回は明日(2018.6.25)掲載です。久しぶりの連日更新!
量子ジャンプの元ネタは某ガ○ダムです。私の脳内CVではルシフェル良太は宮野真守氏ですので、勝手ながらオマージュを捧げさせていただきました。




