第五十四話 窮鼠、牙を研ぐ
雲だけが広がる光差す世界。眼前であの僭称者が、ふてぶてしく頬杖をついてにやけていた。先程のアロハシャツではなく、いかにも神ですと言わんばかりのキトンを纏い、宙に浮く黄金の玉座に腰掛けている。サタンとオフィエルの姿は見当たらなかった。
「何だ、出てきたのか。せっかくお前のための楽園を用意してやったのに」
「……貴様という奴は、どこまで人の心を踏みにじれば気が済むんだ! あれからどれぐらい経った! そして、サタンとオフィエルをどこにやった!」
袖口で涙を拭い、一喝する。
「教える必要があるか?」
「俺の人物眼が確かなら、教える。常に余裕を見せながら風上に立って居たい、貴様そういう奴だ」
指を突き付けドヤ顔で指摘すると、僭称者が鼻で嘲笑う。
「呆れた奴だ。まあいい、教えてやろう。天界の牢獄だ。ただし、嘘かも知れんぞ?」
意地悪くにやける僭称者。しかし、そんな挑発に動じる訳もない。
「それは貴様の今までの行動と合致しない。貴様は永遠の支配者という立場に飽いている。そこに俺という貴様に対抗する面白いゲームのコマが現れた。戦力の逐次投入などという馬鹿げた真似をして目の前まで俺たちをおびき寄せたのは、エキサイティングなゲームがしたいからだろう? 反吐が出そうな性格をしているな」
奴はにやけ顔を崩さず、手を動かそうとした。危機を察知して一気に距離を開けると、寸前まで居た場所で巨大な爆発が起こる。茶番は終わりということか!
そのまま高速で襲い来る光弾を回避しながら策を練る。奴は玉座を降り、ノーキャストで光弾を繰り出しながら猛追してくる。
まず、奴の方が実力的に上手であることを認めねばなるまい。故に俺一人では勝てない。サタンとオフィエルの助けが絶対必要だ。無論、打算抜きで二人を救助したいという気持ちも十二分にある。
ではどうするか? そこでこいつを使う。手を振ると、極小の光点が多数周囲に現れる。俺のためのウォッチャーを創った。こいつらに天界の牢獄を探させる。
「征け」
一言命じると、光点が方々に散って行く。実際には命令は要らないのかも知れないが、まあ気分というやつだ。
あとは時間を稼ぐ! 逃げを打ちながら、光弾を放って僭称者を牽制する。さらには、数十体に及ぶ分身を創り出し撹乱を試みる。
僭称者よ、今は猫の遊びで追い回される鼠を演じておいてやろう。しかし、その傲慢さが貴様を滅ぼすのだ。




