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第四十八話 気高き強敵よ

「裁きの雷光! 冷厳なる氷塊! 蝕む腐毒! 吹き荒ぶ烈風! 剛頑なる石岩! 光輝の聖弾! 猛り盛る聖炎!!」


 ミカエルが短縮詠唱で初代セクンダディの七種の攻撃魔法を放つ。エテメンアンキの機動力で(かわ)し、あるいは障壁で防ぐが、光の矢を一発食らったら障壁がかなり(えぐ)れた。これは複数貰うと確実にアウトだ。天使たちが全て自分の中にあるというだけはある。しかし、短縮詠唱。魔力が上がればそういうのもあるのか! ならば、俺もできるはず!


「魔弾!!」


 奴よりさらに短縮した詠唱を試みると、幾百もの魔法陣が虚空に出現し、膨大な数の光の矢が飛んで行くが、向こうが同時に行使(キャスト)した魔法によって相殺されてしまった。力量、互角というところか。


 激しい魔法の応酬の最中(さなか)、俺は目の端に映ったサタンの変化に気づいた。背から伸びる翼の根本、失われた四枚の羽根の根本が輝いている。予想が正しいならこれは――!


「顕現せよ! 魔槍グングニール!」


 赤髪の天使の声とともに、奴の掲げた手に光り輝く槍が現れる。あれはラジエルが使っていた槍! 奴ごと地に埋葬したはずだが、貴様作り出せるのか! 勢い良く放たれた投げ槍を機動力で(かわ)すが、こいつがまたしつこく追ってくる。光の矢をぶつけて破壊すると、砕け散り消滅した。


 力が拮抗している現状、俺の今の役割は派手に立ち回り、とにかく目立つことだ。そうすれば――勝つ!


「ミカエル! ひとつ剣で語り合うとしようかァッ!!」


「望む所! 炎剣フラベルムの錆にしてくれよう!」


 俺がこの世界に来た最初の日の戦いで、ウリエルが作り出した光剣を再現し斬りかかる。敵は燃え盛る両手剣でこれを受け、幾太刀も斬り結ぶ。まさに実力伯仲。至近距離から攻撃魔法を撃ち込むなどしてみるが、敵の障壁がなかなか堅い。目まぐるしく位置を変えながら切り結ぶ刹那、勝利の女神は俺に微笑んだようだ。


 牽制の氷塊魔法を放ちながら距離を後ろ飛びで一気に空けると、ミカエルの背後からエネルギーの塊が襲いかかり、翼を一枚もぎ取っていった。ミカエルを挟んだ向こうには、四枚の羽根を持つサタン。


「ぬかった……!」


 ミカエルが己の過ちに無念の声を上げる。俺の役割は、奴の意識を完全にサタンから逸らすことだった。俺は卑怯者だろうか? しかし、サタンは最初から居たわけだし、地上の皆に勝利を約束したのだ。敗北し、人類の大虐殺を赦すことこそがもっとも責められることだろう。


「魔弾! 炎龍! 牙! 邪霊! 波導! 江流!」


 親指を伸ばしたピースサインの変形を手首の部分で交差させるかっこいいポーズを決めながら、幾多の大天使たちを(ほふ)ってきた魔法を一気に叩き込む。向こうも相殺を試みるが、力の源である翼を一枚欠いた状態では、徐々に押されるのみである。


 最後の天使ミカエルは、フィニシュブローとなった暗黒空間の魔法に飲み込まれ、雄叫びとともに消えていった。


 さらば、気高き強敵よ――。

 いつものおまけです。作中では炎の剣として出てきた「フラベルム」ですが、本来は炎の扇です。また、作中ではミカエルのみが用いていますが、リアル天使学では熾天使と呼ばれる最上位の天使の標準的な武装です。


 このフラベルムにはトリスアギオン(聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな)という文字が刻まれているそうです。ちなみに作中ベアトリーチェが歌っていたのがこのトリスアギオンだったりします。

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