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第四十六話 ミカエルの決意

 白い雲が広がる天上の世界。一面の白雲広がる中、五十万弱の天使が片膝で(ひざまず)いている。これが残存する天使の全て。その先頭に、赤髪のミカエルが居た。


「天使たちよ」


 彼らの前に光る球体が出現し、しわがれた声を響かせる。天使たちは、(こうべ)を垂れたまま、動かない。


「ウォッチャーからの報告を聞いたであろう。あのルシフェル・アシュタロスは偽物であった。ならば、茶番はこれで終いにする。ミカエル、貴様に全ての天使の権能を与える」


「はっ」


 ミカエルはその意味がわからなかったが、承諾した。神は絶対だからだ。


 しかしその刹那、後方から凄まじい悲鳴が大音響となって後方から聞こえてきた。驚いて振り返ると、後方に並んでいた下級天使たちがもがき苦しみながら、光の粒子へと変じていく様が視界に入る。


「主よ! 何をなさっているのですか!?」


 思わず立ち上がり光る球体に問いかけるが、答えはない。


 元天使の光の粒子が、ミカエルの体内に吸い込まれていく。体が(まばゆ)いオーラに包まれ、彼は体の隅々まで底知れぬ力が(みなぎ)ってくるのを感じた。


「お前には、この場に居た天使のみならず、今まで散っていった天使……ラファエルらセクンダディや数多(あまた)の下級天使もだ、そのすべての力の残滓(ざんし)をも与えた。ルシフェル……改めてそう呼ぶが、奴も間もなく天界へ来るだろう。この期に及んでは大群は要らぬ。その力を以て奴を滅せよ」


「はっ!」


 ミカエルは考える。神が何を考えているかは分からない。ただ、その命に従うだけだ。もはや自分はひたすらに堕落した人間たちを焼き尽くす、ひとつの燃え盛る巨大な炎であれば良いと。ただ、それだけを思った。

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