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第三十八話 好きなだけ甘えていいんだよ?

 真っ暗な空間。天地左右も分からず、そこにただ居るという感覚。


 気分が悪い。ここから出たい。


 いきなり何かに足を掴まれた。


「私たちだって生きているのに。まだ死にたくなかったのに……!」


 天使だ。俺が殺した名もない天使の誰かだ。眼球はなく、暗い眼孔が覗いている。


「よくも殺したな」


「呪ってやる」


「ただ命令に従っただけなのに」


 幾人もの天使が足に絡みついてくる。引き剥がそうともがくが、まったく振り払うことが出来ない。


 さらに、ウリエル、ザカリエル、アナエルら、今まで(ほふ)ってきたセクンダディが恨み言とともに体を引きちぎろうとする。


 体に激痛が走る。痛い。苦しい。


 やがて、俺の体は八ツ裂きにされた。


 ◆ ◆ ◆


 視界が広がる。見慣れたテントの中だ。そうか、夢だったのか。嫌な夢を見た。あんな悪夢を見ても、漫画みたいにガバッと起きないもんなんだな。体中汗だくだ。水差しからコップに水を移して飲む。寝起きの喉に染み渡って旨い。


 テントの入口から顔を出すと、二人の衛兵が敬礼して「おはようございます、異常ありません」と言葉をかけてくる。空を見れば、東の空が白み始めている。


「少し出かけてくる」


 二人にそれだけ言い残し、ザイドハーマをうろつくことにした。


 天使の命か。考えたこともなかったな。いや、敢えて考えないようにしていたのかも知れない。だが、俺を慕う者のために戦うと決めたのだ。ここで信念がぶれてどうする。


「ルシくん!」


 海の見える高台で物思いにふけっていると、背後から突然呼び止められた。この呼び方をするのは当然――。


「サタンか。奇遇だな」


「んー……?」


 どうしたサタン。俺の顔に何かついているか? などと思っていると、突然両手で頬を軽く押さえられた。


「ルシくん、凄く疲れた顔してる」


 心の底から心配そうな声音だ。


「あのさ、ルシくん。私はルシくんのお姉ちゃんだから、好きなだけ甘えていいんだよ? 辛いこととか、全部吐き出していいの」


 そう言って、彼女は俺を抱きしめた。サタンは百七十センチ以上はある長身なので、こういう構図が非常に様になる。いい匂いだな。胸は固いけど、それがいい。そこがいい。


「すまんな、サタン。少し甘える」


 彼女の手が、優しく後頭部を撫でる。俺が誰かにこんな風に甘えたのは生まれて初めてかもしれない。


「嫌な夢を見たよ。殺してきた天使たちが恨みつらみをぶつけてくるんだ。最後は体を引きちぎられて終わった。後悔などしていないつもりだったんだがな」


 サタンはそれを聞くと、ぎゅっと強く体を抱きしめた。


 どのぐらいそうしていただろう。気づけば、キャンプの方向から起床時間を知らせるラッパの音が響き渡ってくる。彼女の胸元から顔を上げると、すっかり朝になっていた。


「行こうか」


 サタンと手を繋ぎ、キャンプ地へ向かった。彼女のおかげで、まだ頑張れそうだ。

 年上キャラ出してえ! という欲求から出したサタンですが、年上ならではの甘えるイベントをやっていなかったので挾みました。いいよね、年上……。


 今回のおまけは後期ヒロインのデータです。


マルコ・キアス

年齢17歳

身長155センチ

体重51.5キロ


サタン

年齢?歳

身長174センチ

体重59キロ


オフィエル (リリス)

年齢?歳

身長130センチ

体重32キロ


シェム・ハザー

年齢20歳

身長169センチ

体重57キロ


 ラドネス人が栄養状態の割に発育が良いですが、これはキャラの個性を付けるためにあえてやっています。サタンとオフィエルの年齢が不明なのは、密かに今後の伏線です。

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