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第二十九話 ユコの決意、ルシフェルの決意

 日が傾き、空が夕焼けに染まる頃、パダールを出て最初の野営拠点設置の最中、俺は馬手にある妙な頼みをした。


「妊娠馬の尿を桶に集めて持って来てくれ」


 というものである。最近は簡単なラドネス語は話せるようになっていたので通訳は必要なかったが、まあ変な目で見られたものだ。だが、これはユコのために必要なことなのである。


 さて、工作の時間だ。底を切ったワインボトルんをひっくり返し、小石、砂利、砂、消し炭、細かい砂、毛糸の順に詰め込んで層構造にする。あとは手近な木の枝に吊るし、飲み口にコップを置く。


「ルシフェル様、これは一体何ですか?」


()過装置だ。これを通せば、泥水などを飲料水に変えることができる」

 

 一部始終を見守っていたユコに、ビンを指で弾いて自慢の品を説明する。そこに、ナイスタイミングで馬手が桶を持ってやって来た。


「仰る通りに集めておきましたが……。こんな物、一体どうするのでございます?」


「こうするのだよ!」


 桶を受け取り、尿を濾過装置に注ぎ込む。()過装置の説明を受けていない馬手は、何の奇行かと目を白黒させている。説明を受けたユコでさえ、かなり引いている有様だ。


「さて、あとは()過が終わるのを待つだけだ。これは時間がかかるからな、明日の朝また見に来よう」


 ◆ ◆ ◆


 翌朝。ひやりとした空気に包まれる中、ユコとともに濾過装置の様子を見る。コップにやや濁った、しかし尿とは違う色合いの液体が溜まっていた。匂いを嗅いでみたが、臭みはない。成功だ。


「さ、ぐっとやるといい」


 コップを差し出すと、あからさまに嫌そうな顔をされた。まあ、いきなりこんな物を飲めと言われても困るわな。


「妊娠した馬の尿には、体を女性化させる物質がふんだんに含まれいているのだ。我はそれを()して、飲めるものにしたのだよ」


「これを飲めば女になれるんですか!?」


 効果を説明したら、今度は凄い食いつきようだ。


「限界はあるがね。例えば、男性器が女性器に変化したりはしない。だから、子供を産むという望みを叶えることはできない。効果が出るまで数ヶ月時間もかかる。ただ、飲み続ければ、身長はさほど伸びず、胸は膨らみ、女らしい骨格を持った体に成長できるはずだ。去勢と合わせればヒゲが生えたり声が低くなるのも予防できるだろう」


 ユコが固唾を飲む。


「改めて問うておこう。男の体に一切未練はないな? 後戻りはできぬぞ?」


「まったくありません! 毎日が辛くて仕方がないくらいです!」


 真剣この上ない表情だ。コップを改めて差し出すと、最初臭いを嗅ぎ、そして一気に飲み干した。


「ルシフェル様は、本当に何でもご存じなのですね」


「そんなに完璧な存在ではないよ」


 俺の力が及べば、ユコを魔法で本当の女にしてやれるのに。今のところ、できるのはせいぜいここまでだ。いつか魔法を探求して、彼、いや彼女の望みを叶えてやりたい。改めてそう心に誓った。

 多分、異世界転生・転移数多しと言えど、現地人の男の娘にホルモン療法施したのはルシフェルぐらいじゃなかろうかという自負があります。念の為に申し添えておきますが、くれぐれも真似しないでください。ホルモン異常を敢えて起こすというのは、非常にリスキーな行為です。最悪死にます。


 私が男の娘を描くと、どうにもガチの性同一性障害者になるようです。男の娘属性の方的に、こういう展開は果たしてどうなんでしょうか?


 さて、今回のおまけはルシフェルについて二回目です。


 彼は、書いていると、どうも小学生時代は結構ハイスペックな人間だったんじゃないかと我ながら思います。現代知識を色々持ち込ませていたら、こいつ本当に引きこもりの中学生かいな? という感じになってきてしまいました。中二病さえ発症しなければ、案外エリート街道を進んでいたかもしれませんね。


2018.9.13追記


 最近ふと気づいたんですが、これ肝心の女性ホルモンも()しちゃってるんじゃないでしょうか……。とほほ。

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