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第二十二話 覚醒

 大過なく日は経ち、七日目の昼過ぎにバルム砦からところてん方式で後詰が来た。大通りがなかなか賑やかな光景になっている。さらに帝都に疎開していた人々が数日後には戻ってくると言うから、もっと賑やかになるのだろうな。


 いつまでも眺めていてもしょうがないので、ベルを残して館に戻ることにした。ただ、一つ思い付いたことがあるので、あるもの(・・・・)を帝都から取り寄せるよう、指示しておく。


 夕飯の時刻になってもベルが戻ってこないので、先に食べることにした。皇女も大変だな。


「リリスちゃんさ、髪型変えてみたら似合うんじゃない?」


 一足先に食事を終えてしまったシトリーがそんなことを言いながら、魚を食んでいるリリスの髪をいじり始めた。やることないからって、邪魔だろうそれは。


「例えば、ベル様みたいにツインテールにしてみたり?」


 そんなことを言いながらリリスの髪をツインテール風に持った時、皆があっと声を上げて固まった。


「「オフィエル!!」」


 その姿は、バルム砦を襲ってきた大天使オフィエルに瓜二つだった。道理で誰かに似てると思ったら、オフィエルだったのか!


 次の瞬間、リリスは手にした肉切りナイフをシトリーの喉元に付きつけた。


「すべて思い出したよ……! そうだよっ、残念オフィエルちゃんでした! 動かないでね、動いたらこいつ刺し殺しちゃうよ!」


 リリス、いやオフィエルが凶悪な笑みを浮かべる。皆、凍りついたように動けない。


「リリス、変な冗談やめようよ。シトちゃんを離して……!」


「その名前で呼ぶな! オフィエルちゃんはオフィエルちゃんだよっ! ……ちがう、リリスこんなことしたくない……。 黙れ! ひっこめ!」


 オフィエルの様子がおかしい。謎の一人芝居を始めたぞ……? 二つの人格が競合しているのか!


「オフィエル、いやリリスよ。お前にはシトリーは刺せない」


「できる!」


 腕に力を込めるオフィエル。しかし、ナイフを突き刺すことができない。


「オフィエルちゃんは、人一人殺すぐらいどうってことないんだよ! できるんだ!」


 しかし、口だけでそれ以上ナイフは動かない。


「人間のことを好きになってしまったんだよ、君は」


「うっ……うぇぇ……」


 彼女はとうとう涙ぐんで、ナイフを落とした。そんなオフィエル=リリスをそっと抱きしめるシトリーであった。

 日常ネタが思いつかないので、一気に時間を飛ばし、リリスの正体が判明する回でした。そんなわけで、今回のおまけはリリスについてです。


 テコ入れの一環で幼女キャラを出したのは以前述べましたが、ちょっと特異なキャラだからということで、堕天使ではないリリスをネーミングの元ネタに持ってきました。その際、リリスについて調べてみたら、サマエルの妻であるとする説があり、「ちょうどいいからサマエルと仲の良かったオフィエルを正体にしちゃえ」と考えて出来上がったキャラです。


 念のために一言添えておきますと、オフィエルとサマエルが仲がいいという設定は、本作の創作ですので悪しからず (一応、二人とも元ネタの時点で同じセクンダディですが)。

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