第十九話 リリスのいちにち
チュンチュンという鳥の声で目がさめたよ。お兄ちゃんはまだねてるね。おこしたらかわいそうだよね。きのう、がんばって『うどん』作ってたもの。
少しだけまどを開けて、お日様の光を入れたら、ちょっとまぶしい。おなか空いたな。ごはん食べに行こうっと。
◆ ◆ ◆
「おはよー」
「お早うございます、リリス。今お魚焼いてあげるからね」
ユコお姉ちゃんがいたから朝のごあいさつをして、いすにすわって足をぶらぶらさせてたら、パンとやいたお魚を出してくれた。お魚おいしいな。パンはがんばって食べるけど、かたいなあ。
「お早う、二人とも。リリス、きちんと食べて大きくなるんだよ~」
「お早う~。今日も元気だね」
シトリーお姉ちゃんとウィネお姉ちゃんに頭なでられちゃった。えへへ。リリスの向かいに、二人ともならんで座って仲良しさんだね。
「お姉ちゃんたちはけっこんしてるの?」
「まだだけど、この戦いが終わったら結婚しようか、シトちゃん?」
「そうだね~、それもいいね。ルシフェル様に祝福してもらったら最高だよね」
リリスも、大人になったらお兄ちゃんとけっこんできるのかな。およめさんってすてき。
「うおー! 腹減ったぞー! 飯食わせろ!」
「朝から騒々しすぎます、あなたは。もう少し大人しくなさい。皆、お早う」
シトリーお姉ちゃんとウィネお姉ちゃんが、ベルお姉ちゃんに立ち上がってごあいさつ。前、リリスもまねしようとしたら、「リリスはまだ小さいからいいんですよ」って言われちゃったから、ふつうに朝のごあいさつ。
マルコお姉ちゃんが、「よーしよしよし」って言いながらだきしめてくる。ベルお姉ちゃんにも頭なでてもらっちゃった。それにしても、なんでマルコお姉ちゃんはベルお姉ちゃんに、ひもでつながれてるのかなあ?
「ベル様、お早うございます。皆さんもお早うございます」
「おっはよー、みんなー!」
フォルお姉ちゃんとサタンお姉ちゃんもおはよう! また頭なでられちゃった。サタンお姉ちゃんは、何かなつかしい感じがするの。ふしぎ。
「諸君、お早う。リリス、先に食事してたのか。ユコ、魚は足りるか?」
「そろそろ厳しいですね。一応、干し肉とパンは残ってますけど……」
お兄ちゃんもやっとおきてきた。みんな立ち上がって、おにいちゃんにごあいさつ。「リリスはまだすわったままでいいぞ」って言われてるから、すわったままごあいさつ。お兄ちゃんにも頭をなでられちゃった。うれしいなあ。
「ふむ、ではまた手分けして釣りと狩りをしよう」
今日はみんなでつりだー! わーい! でも、リリスはまたお勉強かな?
◆ ◆ ◆
お昼。みんなでつりに来たよ。リリスはユコお姉ちゃんと言葉のお勉強。
「ユコー! ビクが一杯になってしまった。新しいのを持ってきてくれ」
「かしこまりました、ルシフェル様! リリス、ちょっと行ってくるから待っててね」
行っちゃった。……ひまだなあ。
……。
あ、アリさんが葉っぱ運んでる。どこに運んで行くのかな? おっかけてみよう。
◆ ◆ ◆
こんな所にお家があったんだー。
……あれ? ここどこ? 木がいっぱい生えてる。森の中? どうしよう、早くもどらないと。
◆ ◆ ◆
やだ、道がわからないよ……。そうだ、森ならマルコお姉ちゃんたちがいるはず!
「マルコおねーちゃーん! シトリーおねーちゃーん! ウィネおねーちゃーん……!」
返事が返ってこないよ……。どうしよう、どうしよう。なんだか、お空も赤くなってきた……。
ガサリと、後ろで音がした。だれか気付いてくれたんだ!
「こわか……」
ふり返ると、おそろしい大きなけものと目が合った。やだ、こわい!
「だれか助けてーっ!」
なきながら大声でさけんだら、いきなりけものに光のやがとんできて、けものをたおしちゃった!
「リリスー! その声リリスだな! 今行くぞ!」
お兄ちゃんの声だ! こっちにどんどん向かってくる!
「リリス! 無事なんだな!?」
お兄ちゃん! お兄ちゃんだ! こわかったよ! 会いたかったよ!
「リリス、だいじょうぶだよ! けがしてないよ! こわかったよー!」
安心したら、もっとなみだが出てきちゃった。お兄ちゃんがぎゅうってだきしめてくる。
「皆ー! リリスは保護したぞ! こっちだ!」
そうしたら、お兄ちゃんの声でお姉ちゃんたちが集まってきた。みんなで、リリスが見つかったことをよろこんでくれる。
「ごめんなさい! リリス、もうかってにどこか行ったりしない!」
ユコお姉ちゃんがかしてくれたハンカチでなみだをふきながら、みんなにごめんなさいする。
こうして、みんなといっしょにお家に帰りました。お兄ちゃんもお姉ちゃんたちも、みんな大すき!
今後のために一度リリス視点を挟む必要があったので、彼女のメイン回です。
幼さを出すために、リリスの発言と心の声を小学三年生までにで習う漢字を調べて絞ってたら、滅茶苦茶時間がかかりました……。なんだか、児童文学みたいなテイストになってますね。
ちなみに、何で小三にしたかと言いますと、実は最初小四までの漢字で書いてたんですが、小四になるとわりと難しい漢字も使うようになって、いまいち幼さが出なかったので一学年下げた次第です。
朝のシーンは、「ルシフェルが居ないとみんなどういう風に喋り、振る舞うか」の描写だったりします。