第一話 †漆黒の堕天使†様、降☆臨!
読んでみたいという声を受け、掲載に踏み切りました。
122 †漆黒の堕天使†ルシフェル・アシュタロス 2016/11/11(金) 19:34:47
我を崇めよ
123 名無しさん@666ちゃんねる 2016/11/11(金) 19:37:32
出たよクソコテ()
124 名無しさん@666ちゃんねる 2016/11/11(金) 19:39:15
>>122
厨房乙
ルシフェルなのかアシュタロスなのかはっきりしろよ
126 †漆黒の堕天使†ルシフェル・アシュタロス 2016/11/11(金) 19:41:22
>>123-124
愚民どもめ。地獄の業火に焼かれよ
……ふう、下らん奴らだ。黒のルームウェアを着た、666ちゃんねるの名物コテハン『ルシフェル・アシュタロス』こと、俺『鈴木良太』は、PCのキーボードをタイプする手を止め、手元の五百ミリペットボトル入りの「ほ~い紅茶」を一口飲んだ。
少し休憩しよう。椅子を反転させ、自室を見渡す。蛍光灯に照らされた室内には、シングルベッドに本棚にクローゼット。左手の閉め切ったカーテンの上にはエアコン。右手に出入り口のドア。そして後ろにさっきまで使っていた机とPC一式。それだけ。味気ない部屋だが、ここが俺の聖域だ。中二の五月に、中二病を発症しいじめられて引きこもりになってから、もう半年と少しか。
少し目を閉じて、再びPCに向き直る。PC越しに見知らぬ連中と罵り合う日々。こんな毎日、誰かが壊してくれないだろうか。
そんな思索にふけっていると、突然足元がまばゆい光に包まれた!
◆ ◆ ◆
光が収まると、そこには異様な光景が広がっていた。俺を取り囲む群衆と篝火。しかも、どうやら夜の古めかしいヨーロピアンな町並みのド真ん中。俺は少し高い広い台に尻もちついて乗ってるようで、そこには魔法陣らしきものが描かれている。
は!? 意味分かんないんですけど!! ……いかん、地が出た。
何か、よくわからない言葉でみんなざわざわしてるし。何これ、怖い。
「あなたが漆黒の堕天使様ですか!?」
黒ローブの一人が、俺に問いかけてきた。フードを目深に被ってるせいで顔がよく見えないが、声の感じからすると若い女のようだ。ていうか日本語?
「いかにも。我は漆黒の堕天使、ルシフェル・アシュタロス!」
立ち上がり、顔に指の隙間から目が見えるように右手を当てるという、かっこいいポーズで思わず即答する。ローブ女が謎言語で群衆に語ると、歓声が沸き起こった。
「ルシフェル様! 我々をお救い下さい!!」
いや、お救い下さい言われても。
「状況を説明せよ。我は深淵の最奥、ジュデッカに居た期間が永いのでな」
これはあれだ。ラノベでよくある異世界転移ってやつと見た。とりあえず、状況を把握せねば。
「申し訳ありません、ルシフェル様! 我々人類は、神に滅ぼされようとしています。最後の頼み綱として、召喚の儀にて、ルシフェル様を召喚した次第です!」
召喚って、あーた。やっぱり異世界に来ちゃったかー。
「フ、我に任せよ」
言っちゃったよ。俺、見栄っ張りなんだよ。安請け合いしちゃったよ! どうすんだ。今更、「人違いです。実は本名、鈴木良太です」とか切り出せねえ。
◆ ◆ ◆
「伝れーい!! バルム砦陥落! 天使の軍勢が王都に向かっています!!」
馬に乗った若い女が、俺達に向かって駆けながら声を張り上げる。胸の強調された黒基調のミニスカ衣装。エロいな、おい!
「迎え撃ちましょう、ルシフェル様!」
ローブ女がローブを脱ぐと、馬上の女のようなエロ衣装が顕になる。赤髪のボリュームがあるツインテールの、小柄ながらも豊満な胸の美少女だ。
他の黒ローブたちも、ローブを一斉に脱ぐ。みんなそろって同じようなエロ衣装の少女だ。なんか、猫耳娘とかいるし……。
「私はベル・ゼーブル。ラドネス帝国皇女にして、魔導師部隊を任されています。ベルとお呼びください」
ツインテールたちと群衆が恭しく跪く。
不意に、ラッパの音が鳴り響いた。夜空にちかちかと多数の光点が瞬く。澄み切った星空だが、さっきはここまで星がなかった気がする。群衆に動揺が走り、期待の眼差しとルシフェルコールが俺に向けられる。どうやら、あの光が天使のようだ。光が徐々に大きくなっていく。
「「深淵の魔と堕天使の叡智の下、守護の障壁を展開せり!」」
エロ衣装少女隊、もとい魔導師部隊が天使たちに向かって手を突き出し中二ワードで詠唱すると、手の先に巨大な光り輝く魔法陣が現れ、続いて淡い光の壁がそびえ立つ。天使たちが、人型と視認できるぐらいの位置まで迫っている。
「「光輝の魔弾よ、深淵の魔より出し力よ、敵を穿て!」」
「「光輝の聖弾よ、天上の光より出し力よ、敵を穿て!」」
魔導師隊と天使たちの詠唱が同時に終わり、互いを眼前に形成された魔法陣から出現した無数の光の矢が襲う。天使たちもかなりの数落ちたが、障壁を貫通した天使たちの光の矢が、魔導師隊や群衆を負傷させる。
なんとなく、この世界の魔法とやらが理解できてきたぞ。どうやら、中二ワードでそれっぽい詠唱をすると魔法が発動するようだ。一つ試してみよう。
「インフェルノの業火よ、漆黒の堕天使の名の下命ず! 灼熱の爆炎となりて、敵を滅せよ!!」
手をかざし唱えると巨大な魔法陣が現れ、大爆発が天使の大半をなぎ倒す。俺、凄ぇ! 群衆から歓声が上がった。
「我が名はセクンダディが一人、大天使ウリエル! 名のある将と見た! 名を名乗れ!!」
一回り大きい、長い金髪の六枚羽根の天使が前に進み出て、声を荒らげる。ウリエルってあのウリエルかよ。この世界にはガチでいるのか。
「良かろう、下郎! 我はルシフェル・アシュタロス!! か弱き人間どもを護るため、ジュデッカより舞い戻った!」
「ルシフェル!? あのルシフェルか! いざ尋常に勝負!!」
やっぱこの世界的に、ルシフェル有名人なのだなあ。なんか勝負挑まれたし。まあやってやろうじゃないか。
「光輝の聖弾よ、天上の光より出る力よ、敵を穿て!」
雑魚天使とは比べ物にならない巨大な魔法陣から出現した光の塊が、魔導師隊の張った障壁を軽々と貫通し、俺を直撃する!
「やったか!?」
「残念だな。効かぬ!」
土煙がもうもうと舞い、ウリエルが勝利を確信するが、俺は魔法陣状の謎バリアで防いでいた。どうやら、俺はこの世界では自動的に守られているらしい。しかし、この世界の土は龍○散か何かで出来てるのか?
「インフェルノに封じられし、聖数六六六を冠する獣よ。無間の闇から蘇り、我が敵を貪り喰らえ!」
かっこいいポーズを決めながら適当に呪文を唱えると、巨大な魔法陣が地面に描かれ、そこから七つの頭と十本の角とコウモリの翼を持つ、ヒョウのような巨大な魔物が現れた。おお、適当にやっても何とかなるもんだな!
獣は宙を飛び、炎を吐き散らし、あるいは牙にかけながら天使たちを殲滅していく。いやー、強い強い。では、ここでさらに駄目押しだ。
「光輝の魔弾よ、深淵の魔より出し力よ、敵を穿て!」
俺を取り囲むように、山ほどの魔法陣が虚空に描かれ、光の塊が出現して天使たちに襲いかかり、瞬く間に残りの殆どを撃墜する。光の矢のうちのひとつが、ウリエルの左手を吹き飛ばしていた。
「バカな……! このウリエルが敗れ去るというのか! 忌まわしき漆黒の堕天使、ルシフェルに!! せめて一太刀をッ! 光の宝剣よ! 我が手に宿れ!!」
ウリエルが詠唱しながら超高速で突っ込んで来て、右手に巨大な光の剣が出現する。奴が剣ごと激突した衝撃で、再び土煙がもうもうと舞う。
「今度こそ……やったか……っ!?」
しかし、俺は左手の人差し指と中指で軽々と切っ先を受け止めていた。ウリエルの絶望的な表情は、しばらく、忘れられそうにもない代物だった。
「冥土の土産に教えておいてやろう、ウリエルよ。それは俗に失敗フラグというのだ。深淵なる闇より出し力よ、我が腕を伝い敵を滅せよ!!」
エネルギーが左手からほとばしり、ウリエルの剣、そしてウリエル自身に増幅しながら伝わって行き、ウリエルは壮絶な断末魔を残して爆裂、光となって消滅した。指揮官を失った残り僅かな天使たちが、元来た方角へと逃げ去っていく。
魔導師隊と群衆は歓声を上げ、ルシフェルコールが響き渡り、例えようのない高揚感に包まれる。
俺を賞賛するのか。俺のことを認めてくれるというのか。人違いなのかもしれないが、俺には今、力がある。ならば、人類を護ってやろうじゃないか!!
こうして、俺は輝かしい勝利を以て、異世界人違い救世主デビューを飾ることになった。