第十六話 レッツ・ぬるぬるっ!
朝、皆で昨日の残りの魚を食んでいると、『獣』の咆哮が上がった。天使襲来の知らせだ!
館から外に出れば、東の空に雲霞の如く湧く天使。早速シャミールも召喚して、迎撃に移る。
すると、何かが一直線に飛んできて、ベルやサタンの展開する障壁を破壊したが、俺の障壁には傷一つ付けることがでずに終わる。跳ね返ったそれは、槍だった。槍が、進み出てきたボロ布のようなフード付きローブを纏った、白い長ヒゲの六枚羽根天使の手元に戻っていく。
「ひょひょひょ。さすがルシフェルじゃ、グングニールの直撃でびくともせんとはなー。わしはラジエル。見ての通りセクンダディじゃ」
キャラを作ってるのかどうなのか、コテコテのジジイ喋りで自身のヒゲを撫でる。
「じゃが、これはどうかの?」
ラジエルが指を打ち鳴らすと、地面から半透明のぬらつく触手が、俺たちを絡め取り持ち上げる。
「何だコレ、気持ち悪いぞぉ! 変なとこ触んなー!」
「お爺ちゃん、お姉さんこういうプレイはちょっとどうかと思うの……ひゃん!」
「お止めなさい、! 皇女である私がこんな……! くっ」
触手に好き放題され、ちょっと変な声が出る女性陣。好色な目つきで視姦するジジイ。あーもう滅茶苦茶だよ。俺まで絡め取られてしまってるし。さくっとしばくわ。
「三千世界をのたうつ魔手よ! 暗黒の御手よ! 地より出りて、我が敵を無間の静寂に葬れ!」
地面から無数の漆黒の手が上空に伸び、ラジエルを掴むとすごい勢いで地面に戻り、そのまま埋葬した。触手には触手である。
それにしても、実にふざけた敵だった。今までで最悪だったかも知れん。やれやれ。
日常ネタが本気で出なくて、残り少ないアイデアリストのうち「触手」から引っ張ってきてでっち上げた戦闘回。こんな回に、物のついでのように出る羽目になったグングニール哀れ。ネタ補充しないと……。
ラジエルは座天使 (ソロネ)の統率者で、世界で最初の書物を書いた (ということにキリスト教ではなってます)存在です。
最初はラジエルではなくモロナイという天使だったのですが、後に出てくる「神」のキャラに矛盾が生じてしまうため、名称を変更しました。