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第九話 サタンじゃあ仕方ないな

「いやー、地上のご飯は美味しいねえ! お肉おかわり!」


 旨そうに飯食ってんじゃねえよ、サタン。


 彼女は砦のベッドに運び込まれたが、ピンピンしていた。ふざけんな、俺の流した涙を返せ。


「サタンだからね」


 とは、彼女の弁。意味分からんわ。


 いやまあ、生きててくれて、普通に嬉しいけどな。俺を慕ってくれる者に目の前で死なれるとか、我慢ならん。


 しかし、翼は天使の力の源であり、四枚失ったことで先程までのようなでたらめな能力を発揮することはできず、人間の魔導師ぐらいの魔力しか出せないだろうと彼女は語った。


「もしかしたら、また生えてくるかもしれないけどね」


 とも言っていたが。ほんとかね?


「サタンよ。お前がなぜそこまで我に執着するのか、教えてくれまいか。あれだ、ジュデッカが永くて忘れてしまった」


「お姉ちゃんとルシくんは、人間を都合の良い下僕程度にしか見ていなかった神に、反旗を翻したの。だけど、先に私が捕まって天界の牢獄に幽閉されちゃったから、その後のことはよく知らないんだ。永遠とも思えるときを、身動き一つできず孤独に過ごすのは、本当に辛かった。いつかまた、ルシくんに会えるかもって考えることだけが、唯一の希望だった」


 彼女が切ない表情で俺を見つめてくる。吸い込まれそうなぐらい、透き通った瞳だ。改めて見ると、本当に美しい顔立ちをしている。


「それにしても、ルシくんどこか変わった? 何か昔の記憶と違うんだよね……。最初わからなくて、探しちゃったぐらいだし」


「む、あれだ。にんげ……じゃなかった、天使だって、長く生きていれば容姿や雰囲気が変わることぐらいあるだろう」


 いかん。変な汗が出てきた。やはり、本物を知ってる奴はやり辛い。でも、いつか真実を皆に話さなければいけない日が来るのだろうな。そのときには、行動と結果を以て救世主の証とするまでだ。


 ◆ ◆ ◆


 一方その頃。天界の円卓では、ラファエルが愚痴を垂れていた。


「僕は反対したからね? ね、ね? ガブリエルたちが証人!」


「主のご決断に対し、不敬であるぞ」


 ミカエルに一喝され、不承々々押し黙る。


「しかし、サタンはほぼ無力化できたのであろう。脅威はルシフェルただ一人だ」


 ケルビエルが腕組みしながら深く頷く。


「でも、そのルシフェル一人に、多数のセクンダディが倒されているのですよ」


 ベアトリーチェの言葉で、場が重い沈黙に包まれる。


「いっそ、私たち全員で彼と戦ったほうが、いいのではありません?」


「各地の人間の抵抗が、まだ根強い。そちらの手を緩めるわけにもゆかぬ」


 ガブリエルの提案を、ミカエルが眉間に皺を寄せながら否定する。


「そういえば、後任のセクンダディはどうなっているのですか?」


 ベトリーチェがミカエルに問う。


「間もなく、主がご任命なされるはずだ。ケルビエル、ベアトリーチェ。次は貴公らに、ルシフェル討伐を任せたい」


「任せられよ」

「了解いたしました」


 二人は立ち上がり、身を翻して、足元の雲の中に姿を消した。

 神話上のサタンについての説明は、有名ですので割愛します。


 テコ入れの一環として、お姉さんヒロインを用意したいと思い立ったのですが、ルシフェルが基本的に敬愛対象であり、またでたらめなほどの強キャラであるため、お姉さん風を吹かせられるようにするにはひと工夫必要でした。


 そこで、白羽の矢が立ったのがサタンです。サタンとルシフェルは同一存在と見られることが多いですが、私が某悪魔召喚ゲーム大好きっ子であることもあり、両立させました。彼女ならば、同等の戦闘力を持っており、年上にすることで見事にお姉さんにできます。


 しかし、そんな強キャラをそのまま加えては、主人公無双になりません。そこで、一度大きな見せ場を作って本来のポテンシャルをアピールした後、速攻で弱体化させるという手段を採りました。


 それにしても、べらぼうな勢いでネームド天使のストックが減っていきます。本来のセクンダディだけでも、ちょっと余るぐらいの予定だったのになあ……。

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