間に合っていない気がする。
ミルフィやオーガ達と共にトロルのいるという場所に向かって移動する。
すると丘を越えた先でそいつを発見した。
6mを超える巨体はこの森林地帯でも目立つのだ。
おまけに、奴の周りと通って来たであろう場所は木々が倒されて道ができている。
トロルは今も獲物を探して移動を行っている。
巨大な体なためか獲物を求めて今も移動しているようだ。
そして、それは俺達がいるのとは別方向だ。
「これは・・・まずいな。」
「何が悪いのよ。」
僕の言葉にミルフィが不機嫌そうに尋ねる。
「アレ。見えるかい? トロルが向かっている木々の下の所。」
僕は指さして彼女に状況を教える。
「ぁあ? なに?」
彼女は不機嫌そうに僕が指さした方角を注視する。
そこには木々の合間を移動する複数の人影が見える。
「ちょっと!何もないじゃない!」
人影が見えるはずなんだが、距離があるせいかミルフィには見えないらしい。
「冒険者の討伐隊がトロルの進行方向にいるんだよ。」
そんなミルフィと僕の背後からドフィが話しかけてきた。
風の精霊である彼は神出鬼没な存在のようだ。
「なによそれ! まずいじゃない! 早くいかないと!」
「落ち着きなよ。ミルフィ。このままじゃ冒険者の一団とトロルに挟み込まれるか。どちらかと先に戦闘になった後で強襲されるかもしれない。」
冒険者たちの行動を知って声を荒げるミルフィをドフィが宥めかす。
「そうだね。それならいっそ僕達が奇襲をかけた方が成功率が高い。」
彼らの接触は時間の問題だ。
拠点に冒険者が集まっていたのもあのトロルを討伐するためだろう。
あれだけ強大なモンスターならばいずれは必ず拠点を襲いに来る。
そうなる前に対処しようとするのは当然と言えるな。
「そうだね。彼らの戦いを監視してちょうどいいタイミングで強襲しよう。僕なら見つからずに周囲を監視できるからね。」
ドフィが僕の作戦を肯定する。
ミルフィは不服そうに頬を膨らませているがそれだけで何も言わない。
卑怯な手段は嫌だが、それしか手段がないので文句はないと言ったところだろうか。
「なら、冒険者の作戦陣形を確認して伏兵がいないかも注意して観察してくれ。」
「了解だ。じゃね。」
ドフィはそう言って姿を消してしまった。
どうやっているのか不明だが便利な能力だ。
こうして僕達は冒険者とトロルとの戦いに横槍を入れる形で参戦することが決まった。