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行商人ゴルドン②

どこに連れて行かれるのだろう。


テクテクと『鎧の英雄』の後についていく。

なぜ呼ばれたのか。いったい何の様なのか。モンスターであるはずの彼が我々と行動する理由。

全てが不明な現状での呼び出しは恐怖しかない。

正直、なんだかお漏らししそうで怖い。


「実は、これを見ていただきたいんです。」


そう言って彼は剣を抜き放つと刀身を見せつけてくる。

いや、非常に怖いのでやめていただきたい。

しかし、仕事なのでしっかりと剣を見る。

後ろにはゴードンさんのパーティも控えてくれているしきっと大丈夫と信じて・・・


見せられた剣は正直言って綺麗とは言い難いものだった。

しっかりとメンテナンスをしていないのか。ただ単に古いだけなのか。

ともかく、せっかくの名刀が残念な状態になっていた。

私も商人の端くれ、相手がモンスターとは言えど聞かれたことに関しては正確に答える。


「やっぱりか。」


私の意見を聞いて彼は納得したように頷く。

どうやら、自分でも薄々は感じていたらしい。


「それで、実はお願いなんですが・・・ 剣を売って下さい。あと、できればこの剣をメンテナンスして来て欲しいんです。お金はこれぐらいしかないのですが足りますかね?」


そう言って彼は巾着を取り出して中身を見せる。

中には金貨や銀貨が入っていた。

モンスターである彼がいったいどこでこんなものを手に入れたのかはこの際、気にしないことにした。

変に藪をつつけば死ぬことになるのは明白だ。


私にとって問題なのはこの件を『受ける』か『受けない』かだ。

相手は礼儀正しく品行方正とはいえモンスターだ。

いつ、人間に牙を剥くかわからない。

下手をすると私もモンスターに武器を売った罪を問われる可能性がある。


だが、ここで武器を売らなければこのモンスターは何をしでかすかわからない。

基本的にダンジョン内のモンスターはダンジョンから出ることはない。

このモンスターがダンジョンから出るかどうかは不明だが、ダンジョン内にある街に攻め込む可能性はある。

そこで武器を入手する可能性は大いにある。


それに、私のようにギルドに頼まれて行商人が下層の街に行くことは十分にありうる。

その行商人に私と同じように鑑定の能力があるとは限らない。

ならば、その行商人が彼と商談を成立させる可能性は十二分にあり得る。

そう考えれば、今回の商談は悪くない。


鑑定を発動したかどうかを見抜けるのは一定以上の実力者のみ。

このモンスターが何も言ってこないところを見ると気づいてはいないのだろう。

モンスターとしての格は高くてもレベル自体は低いからだろうか。


まぁ、ともかく商談は成立させても特に問題はないだろう。

特に今は強力な武器を持っているわけではない。

ダンジョンの下層で使う武器なのでそこそこの性能を持つ武器だけを仕入れて来ているが、そこまで強力なものではない。

単純な性能的にはこのモンスターが持っている剣の方が上だ。


剣の手入れの方も受けても問題ないだろう。

武器の性能を上げるわけじゃないし、お金を消費させれば強力な武器を買う可能性を減らすこともできる。

モンスター相手の商売ならば多少吹っかけても問題はないだろう。


「わかりました。お売りしましょう。何をご所望ですか?」


私はにこやかな営業スマイルを相手に向けるとアイテムボックスからアイテムを取り出して並べる。


「なんだ? こんなところで商売すんのか?」


後ろでそれを見ていたゴードンさんが話しかけてくる。


「ええ、どうやら武器がもう限界みたいでしてね。下の街で整備して返すのですが、それまでに替えの武器が必要でしょうからね。皆さんも何か購入なさいますか?」


「いや、俺達はいいよ。ここで買うと割高なんだろ?上に戻るまでに必要なのは揃えてるからな。」


ついでにゴードンさん達にも何か買わせようと思ったのだが、どうやら駄目らしい。

せっかく割高で買わせるチャンスだというのに・・・


「できれば刀がいいんですが、ありますか?」


『鎧の英雄』さんはどうやら剣よりも刀の方がお気に召すようで剣を見比べ終えるとそう言ってきた。


「あまり多くは持っていないのでこれだけですが・・・」


私はそう言って二本だけ刀を出す。

刀よりも剣の方が売れるために刀はあまり多く持っていないのだ。

彼は刀を鞘から抜くと眺め出す。

刀の性能はどちらも彼の持っている剣よりも一段劣る。

もしかしたらどちらも気に入らないかもしれない。


「もう少し長い剣が欲しいんだけど、ありませんか?」


どうやら、性能云々ではなく武器の長さが物足りないらしい。

刀よりも太刀の方がいいのだろうか。


「う~ん。これでいいですか?」


唯一持っている太刀を取り出す。

正直これを買ってくれるとうれしい。

性能的にはかなり良いものなので仕入れたのだが、使い手を選ぶ代物であるために売れ残ってしまっている商品なのだ。


「おお、これこれ。下さい。」


太刀を抜いて商品を眺めるとすぐさま気に入ったのか。

値段も聞かずに即決だった。


「まいどあり~♪」


渡されていた巾着から必要な金額を抜き取る。

以外に多く入っている巾着の中身に驚きを隠せないが、できるだけ適正価格で抜き取る。

変に怪しまれない範囲で多めに抜き取った方が、『ダンジョン内での販売だから』で誤魔化せるからだ。

まぁ、一番の理由は後ろでゴードンさん達が見てるからなんだけどね。

彼らが慕っている『鎧の英雄』からボッタクリ過ぎると悪い噂が流れかねないからな。


『鎧の英雄』から剣を預かり、さらに刀をもう一本売ることができた。

その後、私達は無事に下層の街にまで降り立つことができた。

剣は整備が済み次第、彼に渡す予定だ。

ゴードンさん達はうまくいけば上に帰る時も「『鎧の英雄』とご一緒できるかも・・・」なんて言っていたが私は御免こうむりたい。

なにせ、彼は太刀を手にしていこう。

その剣技は以前よりも研ぎ澄まされている。

どうやら、彼の本来の武装は剣ではなく太刀だったらしい。


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