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どうやら、僕は骸骨騎士らしい

刀身に映し出された全身鎧を着た骸骨の騎士。

それはどこからどう見ても僕だった。

そういえば、ヘルムの一部を開けた僕の顔を見て女魔法使いはスケルトンナイトと叫んでいた。


その時に気づくべきだった。

いや、それ以前に最初に倒れていたあの場所で気づくべきだった。

あそこにいたのはきっと僕の元仲間達だ。


そんなことにも気づかないだなんて僕はなんて酷い奴なんだ。

僕は剣を降ろして仲間達の死体から奪ったギルドカードを取り出した。


(ごめんよ皆。僕にはこれを返すことはできそうにない。)


僕は皆のギルドカードをその場に投げ捨てるとその場から逃げ出した。

だって、僕には戦う理由がないし、ギルドカードは僕が持っていても仕方がないからね。

せめて、あの冒険者たちが彼らのギルドカードをギルドに持って行ってくれることを祈って走り抜けた。


・・・

・・


どこまで走っただろうか。

死んでモンスターになったからだろうか。

かなりの距離を全力で走ったはずなのに全く疲労感がない。


とりあえず、骸骨の顔を見るのが怖いからヘルムは閉めておこう。

ヘルムを締めた僕は今度は自分の首にかかったギルドカードを取り出した。

初めからこれを見れば僕のことがある程度は分かったはずなのになぜ今までそうしなかったのだろうか。

情報は命だというのに・・・


名前 バーリー・ディロイ・ティンクソン

ランク E

技能 剣 盾 槍 武術 水・風魔法


ギルドカードにはそれだけが書いてあった。

ううむ。

思い出せることがない。


このギルドカードを見てわかるのはおそらくは貴族であったろうということだ。

普通、一般人に苗字はない。

名乗るのは貴族か、貴族を真似てつけるかぐらいだ。

まぁ、魔法が使えるからこいつはほぼ貴族で間違いない。

魔法は基本的に一般人には使えない。

魔法が使えるのは特殊な一族の血族か。

血族の血を迎えた者のみ。


偶然やそのほかにも魔法を取得する条件は多々あるが、名前の長さとギルドランクの低さから見て貴族で間違いないだろう。

貴族でもない人間が魔法を取得した場合はギルドランクが高いのが普通だ。

低いのは魔法を覚えたてか。

ギルドランクを上げる必要がなかったかのどちらかだろう。


そう考えるとあそこで死んでいた仲間は僕の仲間ではなく護衛だったのかもしれない。

何かしらの理由でギルドランクを上げる必要があってこの場所に来たのかもしれないな。

そして、実力が伴わずに全滅か。

先程のパーティの連携でどの程度の実力なのか分からないが、リビングアーマーはCランクぐらいの実力だったはずだ。


とてもではないがEランクの冒険者が勝てる相手ではない。

あのパーティの全滅は貴族の坊ちゃんが実力を見誤って奥まで来過ぎたのが原因か?

だとしたら、僕のせいじゃないか。

これは一度戻ってお墓に埋めてあげるべきだろうか?


そう思い来た道を戻ろうとしたが、僕は立ち止まってしまう。

なんたって全力で逃げてきたせいで道を覚えていない。

何より、来た道を戻ったらあの冒険者たちに出くわしかねない。

リビングアーマーと違ってスケルトンナイトの実力は確かD+ぐらいのはずだ。


彼らはそのリビングアーマーに勝利するような集団だぞ?

勝てるはずがない。

しかたがない。

ここはこの先の道を進もう。

少なくとも同じモンスターだからこの階層のモンスターが僕より強くても襲われないし、アンデットなら水も食料も睡眠も必要ない。

基本的にダンジョンは迷路のようになっているからいずれは元の場所に戻れるはずだ。


(あ、でもダンジョンの死体って時間が経つとダンジョンに吸収されちゃうんだっけ?)


場合によっては装備も何もかもが消失するらしい。

まぁ、時間とかは決まっていないらしいし、原理と法則は完全に理解されていないので場合によっては長期間残ることもあるそうだ。

白骨化するまで残っていたことからそれほど時間はたっていないはずだ。

うん。

そう信じよう。


そうして歩いているとリビングアーマーに出会った。

僕は通路を巡回するリビングアーマーの横を素通りした。

やはりというべきかモンスターだからか攻撃はしてこなかった。

あまりにも攻撃の気配がなかったので横を通る時に軽くお辞儀をしてしまった。


そうして、永いこと歩いていると今度は上に上るであろう上り坂を見つけた。

自分がモンスターだと理解した後で見つかるとは何とも運が悪い。

元護衛達の死体に手を合わせたいのだが、帰る道が判らないし、例え辿り着いたとしてもそこに死体があるとは限らない。

僕がスケルトンナイトになっているのと同様に彼らもモンスターとなって徘徊している可能性がある。

もしくは、ダンジョンに食われて死体がない可能性もある。


どのくらいでそうなるのかはわからないが、彼らが僕の護衛だったのならば死ぬんだ次期は同じはずだ。

ダンジョンに食われるにせよ。モンスターになるにせよ。時期はほぼ同じはずだ。

なら、僕が立ち去った後にそうなった可能性が高い。

探しても見つからないかもしれない。


ならば、これから生活することになるダンジョンのことを調べておく方が有用な気がするな・・・。

いや、やめよう。

もう少し散策を行ってそれから諦めよう。


ダンジョン内を歩き回るのにも慣れてきたし、なんとなくだけど方向も分かるからそのうち辿り着ける気がする。

そう思い僕はその場から離れて散策を続けた。


『マッピングを習得した』


それからしばらく歩いているとそんな声が聞こえてきた。

これが天の声と言う奴か。

生前にも味わった筈だが全く覚えがない。


まぁ、鑑定の技能を持っていない僕には自分の持つスキルも分かんないんだけどね。

でもすごく歩いたのは分かる。

マッピングの能力を使うと今まで歩いた場所が脳内になんとなく浮かび上がる。

この階層がどの程度の大きさなのかは不明だが、僕の予想が正しければ8割ほどは踏破しているはずだ。

ただ、なぜだろうか。


気のせいかも知れないが僕はその何十倍も歩いている。

理由は簡単。

僕が道に迷って何度も同じ場所を歩いているからだ。

もしかして僕って方向音痴なのだろうか?


い、いや。

そんなはずはない。

来たことがある様な気のする道を何度も通っていることには気づいていたしね!

ただ、その・・・

死体がないから確証が持てなかっただけで・・・

というか、やっぱり仲間の死体は消えていたっぽい。

最初のスタート地点がどこなのかはわからないが、マッピングにはスタート地点と思われる出発点は存在しない。

つまりは、何度か僕がモンスターとなった場所を通過しているということだ。


これで心置きなくダンジョンの散策ができる。

僕はマッピングのまだ進んでいない方向に進んでいく。

どこに向かえばいいのかわからないというのもあるが、僕の考えが正しければこの先には下に降りる下りの坂道があるはずだ。


自分がモンスターだと分かった以上は無理に出口を目指す必要はない。

逆に自身の安全確保のためにしたの階層に降りた方がいい。

同じダンジョンモンスターからは攻撃されないが人間からは攻撃されてしまう。

そう考えればここは下に降りる方が賢いというものだ。


そう思い進んでいると僕は予想通りダンジョンの下の階層に行くであろう下り坂を発見した。

ただ・・・

残念なことに下り坂があるであろう部屋には冒険者達がモンスターと戦っていた。

どうやら冒険者の人達は先程であった冒険者達とは違うらしい。

その証拠と言ってはなんだが、先程の冒険者達よりも実力は低そうだ。


魔法使いもいないようだ。

僧侶はいるようだが、戦士と狩人と盗賊の4人パーティ。

まぁ僧侶がいるだけマシかも知れないが、如何せん実力が低すぎる。

あの程度の実力でよくここまでこれたものだ。


4人の冒険者が戦っているのはリビングアーマーではなくオーガだ。

おそらくは下の階層から上がったって来たのだろう。

ゴブリンの進化形であるオーガは緑色の肌をして知るのが普通だが、今戦っているオーガは青い肌をしている。

おそらくは亜種なのだろう。

オーガの実力自体はC-とリビングアーマーよりも下だが、残念ながら亜種になるとその実力は不確定だ。

単純に能力値が伸びているものはC+だが、中には特殊な能力や魔法を使うものもいてその場合は実力が変わる。


まぁ、モンスターの中にはユニークモンスターなどもいるのでその実力は定かではないし、住んでいる場所や環境で強くなったり弱くなったりするので一概には言えないのだけどね。

まぁ、彼らもそこそこの実力はあるのだろう。

冒険者達は4人がかりならばリビングアーマーにも勝てそうな実力がありそうだ。


もっとも、オーガの亜種が3体もいては勝ち目はないだろうけどね。

さて、どうしよう。

ここで彼らを見殺しにするのは簡単だが、情報は欲しい。


彼らを助ければ何かしらの情報が手に入る可能性がある。

それに、僕は元人間だ。

ここで彼らを見殺しにするのは僕の良心が痛む。


しかたがない。

助けに入ろう。


そう結論を出した僕はすぐさま駆け出して彼らとオーガの間に立った。

丁度、冒険者側が押されていたので助太刀する形で参入で来たので冒険者から攻撃されることはない。

逆にオーガからは同じモンスターだけど冒険者を助けるために棍棒を剣で振り払ってしまったので敵意を向けられてしまった。


『さぁ!ここは僕が食い止める!今のうちに逃げたまえ!』


と、叫びたかったのだが残念ながら今の僕はアンデット系のモンスターなので口が聞けなかった。

視線や手の動きで何とか伝えようとするが、彼らは突如として現れた僕を見てポカンと口を開けている。


(しまった。どうしよう・・・)


などと考えているうちにオーガが僕に向かって棍棒を振り下ろした。

僕はまたもオーガの剣を弾いて、そのまま一撃を入れてオーガを後退させる。

仲間が傷つけられたからか、2体のオーガも目の前の冒険者よりもこちらに注意を向ける。

それを見ていた冒険者達は立ち上がって体勢を立て直す。


(よし、これで5人で戦えばオーガにだって勝てるはず・・・)


そう思った瞬間だった。


「行くぞお前ら!」


そう叫んだ戦士の一声で冒険者たちは一斉に走り出した。

何を思ったのか下の階層に向けて下り坂を一気に走りだした。


(え・・・? え・・・?)


訳のわからないうちに僕1人を残して4人の冒険者は逃げてしまった。

それに呆気に取られる僕だったが、それもほんの一瞬のことだった。

3体のオーガが襲い掛かってきたのだ。

どうやらあの4人よりも横槍を入れた僕に憤慨しているようだ。


僕は悲しくなりながらも3体のオーガと戦う破目になるのだった。


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