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どうやら、まだ生きているらしい。

「何寝てんのよ!」


バシャリと水を掛けられて僕は叩き起こされた。

いったい何が起こったのか。

理解が追い付かない。

確か清潔の能力を発動して僕の本体であるはずの骨がなくなったはずだ。

僕は体の胸部を開いて中に手を入れて確認する。


・・・

・・


うん。

スカスカだ。

中身が何もない。

いったい何がどうなっているのだろうか?


「あんた。自分がリビングアーマーだって気づいてなかったの?」


そんな僕を見てミルフィがあきれたように僕を見下ろしている。

ドフィ君やクランは少し驚いていている様子だ。

それは僕の正体にではなく、僕が自分の正体に気づいていなかったことに対してだ。

どうやら、3人はすでに僕の正体について気づいていたらしい。


「あのね。このダンジョンは私達精霊族が管理するダンジョンなのよ。だから、アンデット系のモンスターは存在しないのよ。」


ミルフィが「そんなことも知らないの?」とでも言いたげに僕に詰め寄る。

僕は何も言い返せずにただ頷くことしかなできない。


「でもさ。この階の上層にいるからリビングアーマーだと僕らは思っていたけど。ここまで強いリビングアーマーがいるかな?突然変異種にしても強すぎるよね?」


「そうね~。希少種って可能性もあるけど。それにしても強すぎるわよね~?」


ドフィ君とクランが顔を見合わせて僕の正体を探ろうとしている。

だが、確かに亜種や希少種、突然変異種など通常種と異なるモンスターである可能性はあるけれど。

それにしても僕の能力は高すぎる。


なにせ、あんな巨大なトロルを単独で倒すことに成功したのだ。

基本的に亜種で2段階、突然変異種で3段階、希少種で4段階ほど能力が上がる。

もっとも、これは特殊能力がない場合。

単純な戦闘能力が上昇している場合だ。


最初の出会ったオーガ亜種は高い回復能力が備わっているので単純な戦闘能力では一段階上程度でしかない。

今回の巨大なトロルは巨大化していた。

そのため、単純な戦闘能力自体は2段階上になりB-程度だと予測される。

しかし、あのトロルは地精霊であるクランを吸収することでさらに強化していた。


地属性の精霊は地属性や状態異常耐性だけでなく、物理耐性も上昇する。

あの巨体とタフネスに物理耐性の強化。

さらに直接食ったのならば魔力量が異常に増えているだろうし、硬化の能力を持っていても不思議ではない。

回復魔法も使えたようだし、かなり厄介な相手だったんだろう。

総合評価はA程度だろうか。


それを単独で倒すことができた僕は最低でもA+のモンスターと言うことになる。

リビングアーマーの希少種であったとしても評価はB+が限界だ。


「それ以上ってことはナイトアーマーやカオスアーマーかな? さすがにデモンアーマーやデヴィルアーマーってことはないよね?」


ドフィ君がリビングアーマーの上位種の名前を弱い順に上げていく。

ナイトはB。カオスでA+となり、それ以上ともなればSランクの強力なモンスターだ。

このダンジョンがどの程度のダンジョンかは不明だが、そこまで高ランクのモンスターが生まれる様な場所ならば生息しているモンスターもそれに準ずるはずだ。


「う~ん。でも、このダンジョンで一番強いモンスターって最下層にいるエレルちゃんとこのゴブリンキングよね? あの子でも確かA-程度の実力しかなかったんじゃないかしら?」


「なに? あいつの眷属ってそんなに強いの? ゴブリンなんてオーガより小物なのに生意気よ!」


クランの言葉にミルフィが別の所で怒鳴り声を上げる。

今はそんなことはどうでもいいと思うのだが、彼女にとっては重要なことのようだ。


「まぁ、考えても仕方ないよ。とりあえず、クランを助けるって目的は達成したんだしそれでいいんじゃない? 正体なんて結局は『鑑定』がないとわかんないしね。」


最終的に考えるのが面倒になったのかドフィ君がそう言ってはないを切った。

まぁ、確かに本人にもわかんないからこれ以上は考えても仕方ないかもしれないけどさ・・・


「それもそうね。あんた!また何かあった呼ぶからね!手伝いなさいよ!」


海産の雰囲気になった途端に、ミルフィがそんなことを言い出した。

いや、特に目的とかがないから別にいいけど。

なんでそう上から目線なのかな・・・


「じゃ、また何かあったらよろしくね。」


「本当に、ありがとうね~。」


ドフィ君もクランも別れの挨拶を述べて眷属たちと共に帰って行った。

それを見送ってから僕も上層に帰ることにした。

鎧である僕がなぜ記憶なんてものを持っているのかはわからないが、持っているということは何かしら意味があるのかもしれない。


その意味を探す為にも、一度ダンジョンの外に出て情報を集めようと思う。

声が出せるようになったので話すこともできるし、全身鎧だから中身がないことさえばれなければ人ごみに紛れても違和感はないだろう。


このダンジョンで最強の存在であろうゴブリンキングがA-相当と言うことはこのダンジョン内で僕に勝てるモンスターはいないということだ。

冒険者の実力はダンジョンのモンスターの実力に準じているか。

安全策のために少し強いパーティーが存在する程度だ。


戦って勝てる保証はなくても逃げることはできるはずだ。

当面の目標はダンジョンの外に出ることかな。


こうして、僕はダンジョンの上層目指して進むことになるのだった。


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