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僕の公園  作者: tom
3/9

夢の世界へ

第三話更新できました。まだ続くと思います。謎すぎる展開ですが(汗)



 『兄ちゃん‥‥』

ぽつりと自室の机に向かい光は呟く。


この本がまるで僕とあの兄ちゃんとの時間を物語っているように思えた。


ー”帰った時の楽しみだ”青年の声が記憶と共に甦る。


この良く言えばシンプル、悪く言えば殺伐とした本の中身は『本』というその名の通り活字や絵図などで埋め尽くされているのだろうか。


それとも、この外観と同じように中身も‥‥。


ウキウキ、ワクワク。込み上げてくる感情をよそに急に玄関から音がした。



『ただいまー』


お母さんだ。


時刻は夜の八時過ぎ。


『夕飯つくっといたの食べたー?』


母の声が近づいてくる。


『う、うんおいしかったよ』


ガサガサ


ビニール袋の音が聞こえる。


『そ、じゃああとはお風呂ね』


僕は部屋のドアを開けお母さんに

『洗ったから後は沸かすだけだよ』

と告げた。


『そう‥‥』

疲れた顔をしたお母さんを見るのはもう慣れっこだ。


両親共働きの笹野家はもらったあの本のように殺伐とした家庭のような気がする。


 


 あれからお風呂に入って寝る準備をし再びあの本の前に立った。こう言っては悪いかもしれないがさっきはお母さんに邪魔されて本の中身をちゃんと見てはいなかった。


息を短く吸い、ふーっと口から吐く。


まずは表紙をめくる。真っ白だ。何も書かれていない。


ペラペラと一気にめくっても文字一つ記されていない。


『はぁ〜』僕はため息をついた。


期待を裏切られた。


本を机の上に置き、力なくベッドに倒れる。


『何が帰った時の楽しみだ』独り呆れて枕に顔を沈め光は寝に落ちた。


 


 生温い風が顔いっぱいに当たってくる。


何だ‥‥?


何かがおかしい。

光は目を擦りながら辺りを見渡す。


『お、起きたか!』急に男の声がした。父親の声にしては若い。


そう思って声のした方へ歩んで行くと、見覚えのある黒い帽子が落ちていた。


『あれ?これってあの兄ちゃんの‥‥』


『そ、俺の』


『わぁ?!!』またいつの間に後ろに来ていたのだろうか光は驚きのあまりしりもちをついた。


『ど、どうして兄ちゃんが?!』


『ん〜、なんでだろうな〜多分、あの本のせいだな』


青年はとぼけたような顔をして手を頭の後ろで組み合わせる。


『本?』


『あー、お前が"何が帰った時の楽しみだ"とか言ってたあの本さ』


『どうしてそのこと知って‥‥』


すると遮るように『そんなことより、お前ここがどこだか分かってるか?』

と青年は言った。


そういえばここどこだ?どうしてこんなところにいるんだろう?


辺りは霧で覆われているが木々や雑草がある外だということは間違いない。


でも変だなここまでどうやってきたのか記憶がない。


頭が混乱していると、自分が寝間着でいることに気づいた。


『あれ?パジャマ着てる‥‥ってことはもしかして』


『そ、ここは夢だ』再び遮るように青年は言い切った。


落ちていた帽子を軽い調子で拾い上げ頭に載せる青年。


『そのパジャマよく似合ってんじゃん』

頭の上に手をのせられてくしゃくしゃとされた。


でもやっぱり冷たい手をしているのが分かった。


不思議だ。足だって素足なのに地面との境がないみたいに少し浮いている感じがする。足の裏を確認しても汚れていない。


『なにはともあれ俺たちは再会できた訳だ。祝福しねーとな』


再会‥‥?


『あ、あの、これは僕の夢なんじゃないんですか?』


『?そうだとも。だから俺にわざわざ敬語つかったりしてもお前の意識の中での話だから意味がなかったりする訳だ』


『え‥‥?でも』


『夢ってなんでもアリだろ?』


僕は恐らくこの時ポカンとしていたに違いない。

理屈を並べても仕方がないことに言われるがままこの夢を楽しむことにした。

読んで下さった方、ありがとうございます!

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