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Trick with Treat  作者: カオス学園文芸部
短編集『Trick with Treat』
28/46

だから試しにイタズラさせてくれ、いやさせろお願いします!@貴好

作者:貴好

ジャンル:恋愛


※本作品は掲載中の著作「ハロウィンってイタズラすること少なくないか?ぶっちゃけありえない!」の続編となっております。

「まさかあんなにもらえるなんてな」


「私達のマントが風呂敷になっちゃうくらいね~」


 ゾンビの方々は程よい酔い具合で通り過ぎ様にお菓子をたくさんくれた。

 人に優しいゾンビ、これもまたとてつもなくシュールだ。


「さて、お菓子はこれくらいでいいだろ」


「そうだね、そろそろ」


 俺達は二人で住宅街をジグザグに歩き、目的地を目指す。

 それはでっかいアスレチックがたくさんあるこの町一番の公園だ。

 でも今夜は中央区で祭りをやっているため、この辺には人が来ない。

 軽くゴーストタウンな雰囲気を味わっていると思うと少しゾクリとくる。


「お前のは?」


「これー」


 亜紀が取り出したのはティッシュ箱くらいの大きさの蓋付の箱だった。

 それを公園の奥にあるベンチへと置くと、亜紀は次に俺を見た。


「ジャックのは?」


「……これだ」


 俺は真っ白い正方形の箱をベンチの上に置かれている亜紀の箱に並べておくと背筋を伸ばした。


「念のためルール確認な。俺達は、今から俺の家へ向かう。そして九時になったらスタート。先に相手の箱を手に入れたほうの勝ち。互いに水鉄砲を所持して相手が持っている水鉄砲の水に当たったら被弾とし負けとする。そして――――」


「レース中は妨害あり、だね」


「そういうこった、よし帰るぞ」


 家に向かうが今の時間は七時半、まだ一時間半もある。じゃあなぜそんなに隙間を空けるのかといえば、道に仕かけるトラップの時間だ。

 そして今回は俺の家からスタートのため、少し離れたところに家のある亜紀は準備に使える時間を多少なりとも削られるということだ。そして俺に至っては軽めのセッティングなら済ませてあるんだよ。


 貰ったぜ、亜紀。今年の勝利は俺のモンだ。


 といっても、俺が考える勝利の定義は今年に限って「イタズラで勝つ」ことではない。

 それは、この勝負が終わる頃には慣れてくるだろう。


 頭の中で追加罠を考えながら歩いていると自然と口数が減り、お互いに無口で真っ暗な住宅街を歩く。

 これは確かにこの町の習慣を知らない人間から見れば「帽子を目深に被った魔女とカボチャの紳士が夜の街を闊歩」なんていう記事になってもおかしくは無いかもしれない。


「じゃあ、後でここ集合な」


「はいはーい、待っててねーん」


 亜紀と別れ、一人になる。思いついた罠や仕掛けを活かせるものが家にあるか、軽く物色しよう。

 えーっと、ネズミ捕り五つに厚めの板と小さい頃使った跳び箱のようなモノと―――

 これらのものを運ぶには一輪車がいるなぁ。あ、跳び箱の頭を籠のように使えばいいか。


 亜紀がどこかでこっそり観察していないかを確認して、住宅街へ戻る。

 どこの通路にこれらを配置するか、まるで将棋やなんかのボードゲームをやってるみたいだ。


「ここにこれを置いて、次にこいつらをあそこに……」


 仕掛けるものはこれくらいでいいかな、あとは担いできたバッグを跳び箱の頭の近くに置いておくだけ~っと。

 俺の布陣は完成した。この亜紀であっても絶対に通らないであろう道を使うことであいつが仕掛けたトラップを無駄打ちさせる作戦。


「さて、帰るか」


 家に急いで戻ると、昼間のうちに作っておいた持ち運び用トラップをマントの内側に固定し、マジックテープで落ちないようにする。ぶっちゃけ、腰にベルトホルスターかなんかで巻きつけたほうが奔りやすかったんじゃなかろうか。


 そんなこんなで試行錯誤しているとあっという間に残り十分をきった。

 驚くことに亜紀は三十分前からうちにいたようだ。母さんとリビングで話していたようだ。

まぁ、ゆったりしすぎるのも危険だと思う。俺も亜紀も。


「お待たせ、じゃあ始めるぞ」


「おっ、来た!」


 母さんと父さん二人でコイルお化けの改良についてあーだこーだしてもらってるうちに俺達はスタートラインに立つ。

 腕時計は走るときに手首を圧迫されそうだったから外している。代わりにカボチャの内側に仕込んである。

 相変わらずカボチャが便利でなかなか良い着心地だった。


「カウントダウン、始めるぞ」


「…………」


 亜紀は答えなかった。けれど緊迫しているよりは余裕の顔。

 カボチャの内側のデジタル表示の時計が十五になったところで、秒読み開始だ。


「十………九………八………七………」


 一秒ずつ読み上げていく。そのうちに既に身をかがめてダッシュできるようにする。

 どうせ車も通らないし、視界が狭かろうと問題は無い………ってアレ、亜紀は? どこ行った?


「三………二………一………スタート!」


『ス』を発音した瞬間に地を踏み、駆け出す。まずはお向かいさんの家前に向かう!

 走るときとなると、やっぱりカボチャの視界が悪い。揺れているせいでどこを見ているかさえわからない!

 なら、カボチャの口の部分を上げてそこを目にする。口は繋がってるおかげでちゃんと見える!


「ってあれ、あいつは……なにぃ!?」


 俺が見たのは、塀の上をまるで忍者のように駆け抜ける亜紀だった。

 向かいの歩道に着いた途端、ゴミ箱を足場にして上ったのか…?それにしたって、まずい。

 俺が用意したネズミ捕り投石器が全て無駄になっちまう……!


 あれは亜紀しか通れない道にセットしてある上に、その道の前に通せんぼしているゴミ箱が退かされたときに動く仕組みになっている…!


 仕方ない。こうなると基本コースは同じだ!俺と亜紀は分かれることなく同じ道を走る。

 しかし塀の上を走ってるくせに速度が落ちない。足を踏み外す心配をしていないのかあいつは!?


 俺はマントに仕込んだその場トラップの一つ、『クラッカー』を使った。

 紐を引っ張ると大きな音が鳴るアレをあいつのすぐ後ろで鳴らす!身構えてないと、ビビっちゃうだろうぜ!


 パァーン!と破裂音がして紙吹雪等が散らばる。実際鳴らしてる俺が一番ビビってるかも……!


「なっ……」


 聞こえていないのか……!? 俺の目は速度を落とさずに走り続ける亜紀の姿が映っていた。

 しかし聞こえていたのか、少し振り返ると亜紀は自分の耳を指差した。


「まさか、耳栓……!?」


 そんなバカな……俺が亜紀しか通れない場所に罠を張り、それ以外にはその場トラップしか用意していないところまで読んでいたのか……?


 今年のあいつは本気だ。マジで勝ち取りにきやがった! 上等、こっちも奥の手!


「残念でしたー! 私は塀の上を通れるけど、ジャックはこの先行き止まりだよー! 忘れたのー?」


「耳栓を外したか! ってあれ!? もうクラッカーがねぇ!」


 ってそれどころじゃない! この先は確か、本当に行き止まりだ!!

 しまったぁ~……行き止まりのことを完全に失念していたー!!






「――――なぁ~んてね!」


 ンなわけあるか! しっかり熟知してるよ!

 確かに曲がり角を曲がると、そこは行き止まり。しかし公園は目前、こんなところでモタモタ上っていたら亜紀は塀を降りてさらにスピードを上げてゴールに一直線だ。


 水鉄砲の射程はほぼゼロ距離じゃないと期待は出来ないし、今日の俺は飛び道具だって用意していない。

 いつもだったら設置トラップが良い具合に働いてくれるのに……!

 やっぱり前回の通せんぼ将軍×10で警戒されたのか……!


 さておき、行き止まりの壁の前に俺が設置したのが跳び箱と厚めの板、そして錘だ。

 横向きに設置された跳び箱、その上に置かれている厚めの板。手前側は地面についているが代わりに反対側が浮いている。


 簡単手作りシーソー!これで抜ける!


 曲がり角に置いておいた錘を担ぎ上げ、全力で走る!!

 錘分走るのが辛い!肩とか足が悲鳴を上げているのが分かる!


「そーっれ!!!」


 腕の力でどうにか錘を投げ飛ばし、直後に手前の板に飛び乗る。


 刹那、錘が反対側の板の上に落ち、グンっと下がり代わりに俺が飛ぶ!

 わずかでも飛ぶことが出来れば、あとは壁の上に着地すれば条件は一緒!


「嘘!?」


「残念だったな! こちとらお前の塀走りは読んでなかったけど、最短コースが行き止まりなのは承知済みよ!!」


 俺が塀から飛び降りたのと亜紀が塀から降りたのは、ほぼ同時。

 この距離なら、水鉄砲で決着をつけられる……!


 ガチャッ!!


 腰のホルスターから水鉄砲を取り出し、銃口を亜紀へと向ける。

 前方の亜紀もホルスターから銃を取り出す………しかも二丁。


「まさか行き止まりを越えるなんてねー……せっかく用意したビーダマとBB弾の海が無駄になっちゃったよ」


「えげつなっ! ……まぁ、お前用のネズミ捕り投石器が意味なくなっちまった。後で回収手伝えよな」


「こっちのセリフ~、全部合わせて百個はくだらないよー」


「本当にえげつないな! 喰らえッ!」


 引き金を引いて水を勢い良く発射する。被弾の定義は『身体が濡れること』。

 そして俺には撥水パンプキンヘッドとマント、亜紀には帽子とマントがある。

 定義的にギリギリセーフにできる盾がある。

 現に亜紀はマントで身体を守り、水を防いだ。

 つまり、水鉄砲による勝ちに関しては俺が期待できない。だけど万が一被弾に備えて最大限の防御をするなら、それはそれは大きな隙が出来るはずだ。


 残弾もとい水はあと半分程度、そして向こうには満タンの銃が二つだ。

 このマントを活かすなら、今しかない。


「よっ!!」


 前方にダイブして、亜紀と交錯する。俺の左を亜紀が通り抜ける瞬間に銃を左手に移し銃口を向ける。

 咄嗟に亜紀がマントに包まった、完全な防御で崩しどころが無い。

 それが狙いさ、撃つ気なんて端から無い。


「持ってけ、俺にゃ必要ないからなー!!」


 グロック17、こだわりの形の水鉄砲を手首を跳ね上げる形で後ろに放り投げる。

 直後「ふぎゃ!?」という女子らしからぬ悲鳴が聞こえた。おぅ、すまんよ亜紀。偶然顔の中心に当たったみたいだな。


 だが向こうはこれで二丁半、追いつかれたら負けだなこりゃ。でも、このスタートダッシュで差をつける!

 この際カボチャ取っちまうか? カボチャも時間稼ぎには一役買ってくれそうだし。


 両手でカボチャを掴むと引っ張り上げる。すると首に微かな痛みが走る。………主に絞首的な。

 しまった、慣れすぎてベルトを忘れてた。ほぼ身体に同化してしまってる!!

 そんなことにも気付かないなんてどうかしてるぜ!! ………ボケてる場合じゃない!


「隙ありぃ!! さっきの恨み!」


 そんな声が聞こえてカボチャ内で反響した瞬間、目の前が真っ暗になった。


「うおっ!? なんだこれ! 前が見えない……まさか!」


 俺か亜紀のマントがカボチャに被せられたか!? もし俺のマントだった場合背中ががら空きになり、マントを使った防御が出来なくなる!


 咄嗟に左にダイブする。亜紀は右利きだから、左に避ければ右よりは安全なはずだ!


「三つあるの忘れてない?」


「しまった……うわああああああああああ!!」


 絶叫、ジグザグに走行する。なお腕を抱きながら走るカボチャが公園に出没したっていうニュースを俺は三日後に知ることとなる。前が見えないから足が正確に踏み出せない。今にも転びそうだ。


「ちょっと、こっちきたらダメだって、きゃあっ!」


「うへぇ!? うぼぁ!!」


 案の定、まず間違いなく俺は亜紀にぶつかっただろう。

 そんでもって、お………押し倒してしまったのでは無いだろうか?


 慌ただしい手付きで首のベルトを外す。次いでカボチャを取り去って見る。

 するとどうだろうか、俺の下には亜紀が仰向けで倒れているではありませんか、なんということでしょう。


「あ、しまっ――――」


「もらいぃー!!」


 亜紀が俺に俺の愛用グロックを向けて引き金を引く。咄嗟に手を出してしまうが発射された水が俺の手のひらにか


 かる。ぶっちゃけかなり冷たい。


「やった! 私の勝ちー「というわけにはいかないんですよこれが」ーーなんで!?」


 亜紀がわけわからんという目で俺を見てくるので俺は下の、亜紀の腹を指差す。

 俺が指した先にあるのは小さな滲み、俺が手で受け止めた水がそのまま反射してお互いの身体を濡らすこととなったのだ。


「引き分けだな、でも先に濡れたのは俺だからお前からプレゼント開けろよ」


「それ、私の勝ちって言うんじゃないかなぁ~?」


「本音言っていい? お前の用意したプレゼントが欲しい」


「ちょっ……そんなぁっ、いきなり困る……分かったよ」


 亜紀は顔を赤らめて立ち上がり、ベンチに放置してあった俺のプレゼントボックスに手を伸ばす。

 そして俺、ただいま全力で笑いを堪えております。


 だ、ダメだ……今笑っちゃ、ダメだ……!!


「そ、それじゃ、開けるよー? なにかな――――にゃあ!?」


 パァーン! と、開かれた蓋から飛び出したのはメッセージカード。

 バネの力で顔面パンチを食らってしまった亜紀はまたぶっ倒れた。


「っく……っふふふ、あっははははは!! ダメだっ! ひーっ! ひーっ!」


 たまらず笑い転げた。腹部の筋肉が攣りそうになるほど酷使していると背中が伸びなくなってしまった。

 でも笑いが納まってくると、次第に公園内に静寂が訪れる。


「うー……!」


「あー、ごめんごめん。これが本当の俺からのプレゼント、ほら」


 俺は箱の蓋の裏を指差す。そこには、俺から亜紀への本当のプレゼントがつけてある。

 ただのハンカチだけどな。


「うわぁー、可愛い! 暗くて正確な色分からないけど!」


「色分からないは余計じゃ、ちなみに薄い水色だ」


「エッチ!」


「誰もお前の下着の色なんて言ってねえよ!! …えっ、水色なの!?」


「なーんてね。残念、白でしたー♪」


「なんだ白か、え、マジで?」


 冗談で終わらせるつもりが冗談で終わらなかった。亜紀のカミングアウトが強烈すぎたんや……。

 本人自身も顔真っ赤にしてるあたり、本当にマジなんだろうな。つうか本当にマジってなんだよ、馬から落馬する的なアレか……?


「そ、それじゃあお前のプレゼントも開けていいかな」


「い、いいよ!」


 変に緊張してしまい、舌が回らない。いや回らないって言うか言葉が出てこない。

 ぎこちない足取りでプレゼントボックスへと向かう俺。しかし突然亜紀が間に割り込んだ。


「わたっ、私からのプレゼントはお菓子なんだけど……その、なんていうか……ちょっと高級なだけの板チョコだから……」


「マジで!?ちょっと楽しみになってきた!どれどれ―――へっ?」


 素っ頓狂な声を上げてしまう。なぜなら亜紀がプレゼントボックスの前から退こうとしないから。

 横から抜けようとするとそこをガード、ならばと反対側に行くとそれもガード。



「どうしろっていうんだ……」


「うー………えーい!!」


 突然叫びだした亜紀は振り返ると自分で箱を開けてチョコを取り出して、端を折って口に入れた。

 否、口で挟んでいた。チョコが四分の三ほど出てきている。


「な、なに?」


たふぇたはったあ(食べたかったら)たえていいお(食べていいよ)


「なっ」


 やばい、なんか血の滾りがやばい。顔が熱い、というか顔だけじゃない。

 心臓がばくばくなってる……! 鼓動が早すぎて吐きそうだ…!

 とろーんとした酩酊感、目の前の亜紀がすごく可愛く映る。


 目を閉じて唇を突き出す亜紀が、俺の心を乱して止まない。

 素数を数える暇なんてなかった。俺の脚は一歩ずつ亜紀へ向かって進んでいく。


 いいのか、これは誘ってるんじゃないのか……発想がもう既にスケベのそれだ、軽い自己嫌悪が生まれてくるが、


 その嫌悪が俺から理性を削り取っていく。


 デビルジャック「やっちゃいなヨ!」


 エンジェルジャック「優しくネ!」


 おいこら天使俺! そこは悪魔俺を止めろよ反発しろよ!! 何便乗してんだ!?

 だけどもう両方の俺がGOサイン出してるから、俺も覚悟を決めた。


 そっと、肩を掴むと亜紀の身体が強張る。

 俺の悪魔と天使に侵食された一欠片の理性が「チョコだけ受け取ればいいんじゃね?」って囁きかける。

 だけどそれでいいのかな? だって俺自身亜紀にアタックするつもりで今回勝負に臨んだんだ。


「行くぞ……亜紀、一応言っとくけどお前が大好きだぞ……」


「えぇっ―――んっ!?」


 そっと、柔らかい唇の感触。少し溶けかかったチョコのほろ苦い味わいが口中に広がる。

 ファーストキスの感想がこれだけしか言えないなんて、俺のボキャブラリー貧困すぎるだろ……


「んーーーーーっ!? ぷわぁ~………」


「あっ、ちょっと! 亜紀!」


 亜紀は目を回して倒れてしまった。刺激が強すぎたのだろうか……?

 かくいう俺も耳鳴りと頭痛で今にもぶっ倒れそうだ、とりあえずつれて帰るか……。

 俺は力が抜けて少し重くなっている亜紀を背に乗せて立ち上がった。




~ Ep ~





「―――――あれ?」


「おっ、目が覚めたか?よく寝てたな」


 亜紀が目を覚ますとそこはいつもの目線よりずっと高かった。

 ジャックが亜紀を背負っていたのだ。一定のリズムで訪れる振動が亜紀の眠気をまた誘う。


「俺の名前、本当にジャックで定着してないか?」


「……? 何のこと?」


「いや、気にしないでくれ。独り言だ」


 それで会話を切ると、二人の間には何も無かった。

 隔てる壁も、存在しなかった。存在できなかった。


「ところで、なんでカボチャつけてるの?」


「お前を背負ってるの、万が一クラスメイトに見られたくないからな、まだ騒がれたくない」


「うっ、なんか複雑……王子様が白馬に乗ってこないなんてね~」


 その一言でジャックは刀でなで斬りにされたかのような錯覚に陥る。

 しかしジャックはへこたれなかった、白馬に乗ってくる王子様に憧れてなかったのが不幸中の幸い。


「しかもカボチャ」


 と思ったらまさかの燕返しだった。二段構えの斬撃にさすがに折れるジャックの心。

 ジャックが膝の代わりにカクンと頭を落とす。はぁ、とため息まで吐く始末。


「悪かったな、カボチャの王子様で……」


「ふふっ………でもいいよ、カボチャの王子様でも………大好きだもん」


「ふん……ありがとな」


 もう流れでカボチャ外して町内公認カップルになってしまおうかという考えがジャックの中で生まれる。

 天使ジャックも悪魔ジャックも全力で後押ししていた。


「さーて、引き分けだしお菓子は5:5の山分けだからな」


「ふふん、いーよ!」


「あ、キャラメルあったら分けてくれ、父さんの分」


「おじさまってホント可愛いよね、そういうところ」


「父さんに可愛いって言うなよ、妬くぞ」


「ふふん、かーわいい♪」


「お前もな!」



 翌日、『Witch&Pumpkin』という見出しの町内新聞で特大ニュースとして主役になった二人であった。

 その新聞に映っていたのは、『満月をバックに空を飛ぶカボチャヘッド』と―――――










『二人揃って仲良く歩く幸せそうな顔した魔女と笑うカボチャ』の写真だった。

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