黒い人にはご用心!?@茉優
作者:茉優
ジャンル:恋愛
ねぇ、あなたは信じますか?
「魔法」というものを。
私はね、信じちゃう方なんだ多分。
でもそれが確信になるまでにはそんなに時間はかからなかった。
------------それはいつかの10月30日に少しだけ知ることになる------
今日はかなり寒い。
私はなかなか布団から出られずにいた。
「輝美~早くおきなさ~~~い!!!」
私は親の大声でハッと目を覚ました。
「い、今下行く~。」
と。行って階段を降りようとした瞬間。
自分が見ている景色が90度変わった。
「いたたたた…」
そう。私、市川輝美は今日もすっごいドジっぷりです…
自分でもわからないけど、よく転ぶし、なんかにぶつかるし。
「ってやばい!遅刻するぅぅぅ!!」
私は急いで階段を下り、リビングにある、家族全員が座れるテーブルに腰かけた。
「いただきます。」
「召し上がれ~」
私のお母さんも私にそっくりで結構ドジ。
というかお母さんのドジが私にうつったのかな…
というかそういうものって遺伝するの??
まぁいいや。
そんなことを考えていたらお母さんが急に思い出したかのように私に話し始めた。
「輝美! 明日って何の日か知ってる?」
お母さんはニコニコしながら言っている。
「うーーん。別に誰かの誕生日でもないし…明日がどうしたの?」
私はあきらめてまたご飯を食べ始める。
「明日は10月31日!! ハロウィンよ!」
あ。そうだったなぁ…でも別に私には関係ないと思うけど…
「ハロウィンね。それがどうしたの?」
お母さんは私の「どうしたの?」を待っていたみたいでふふふと自慢げに話す。
「実は明日の朝2人で道を歩くと、なんか大変なこと起こるんだって~」
「何が起こるの!?」
お母さんは
「ほら! 先に支度しなさい!!」
と言って教えてくれなかった。
私は結構、そういう噂っていうか伝説っていうか聞くのが好きなタイプだから、
途中でやめられるとすっごく気になっちゃう…
「うーーー、わかった。じゃあ学校から帰ってきたら教えて。」
私は早口でお母さんにそう告げると急いで2階に戻って支度を始めた。
かなり寒いせいか手がかじかんで動きにくい…
制服のボタンを留めるのにも一苦労。
「よし!! 準備完了。」
私は鏡に映っているもう一人の自分に敬礼した。
一階に下りるとお母さんはお弁当を袋に包んでいてくれた。
「はい。お弁当。」
「ありがとう! 行ってきます。帰ってきたら、さっきの話教えてよねぇ~」
私はそう言って玄関を出たんだ。
学校までの道のりに私は変なものを見たんだ。
それは-----
真っ黒な服を着ている人だった。
ぼーっとしているので、ちょっと遠くから話しかけてみた。
「あ、あのーー。大丈夫ですか?」
そういって私は近づく。
すると、その黒い人は。
「------------。」
なにかつぶやいた。
そして次の瞬間いきなり強い風が吹いて、目を閉じてまたすぐに開けたら、さっきまでいた真っ黒な人は消えていた。
「ん? さっきの人どこに行ったんだろ…」
って遅刻遅刻!!!!!!!!!!
私は学校まで猛ダッシュをして、なんとか教室に着いた。
「輝美おはよ~さては寝坊かな?」
そういってきたのは私の親友の由加里だった。
「由加里!! あ、あのね! 道に黒い人!! 風で消えた!!」
私がそういうと由加里は
「ちょっと待って、順を追って話そうか?」
「あ、うん…」
私は授業が終わった後話したんだ。
「えっと、道に居た真っ黒な人がぼーっとしていたから話しかけたら、
強い風が吹いて、目を開いてみたら、その真っ黒な人がいなかったと…」
「そういうことなの…」
私も今になって思ったけど、普通道に真っ黒人いたら怖いのによく話しかけたな…
なんか引っ張られる力に吸い込まれた感じ。
「まぁ、気にすることじゃないと思うよ。」
「そうだね。考えすぎもよくないね。」
多分眠かったからだ。
うん。きっと幻覚だ、幻覚。
「あっ! やばい!! 今日悠斗君と図書委員だった。」
悠斗君っていうのは同じ図書委員の男の子。
前に私が不良に絡まれたときに助けてくれた人。それをきっかけに仲良くなった。
話しすぎてすっかり時計の針は4時を指していた。
「由加里。私図書委員行くね。」
「うん。頑張って。」
由加里は私にピースをしたから私も由加里に向かってピースした。
図書室に向かうともう悠斗くんは来ていた。
「ごめんね。遅かったよね。」
私はあわててカウンター側から言った。
「そんなことないよ。大丈夫だよ?」
悠斗君はいっつも優しい。
「今日は寒いね。」
「ねぇ。風邪とか引いてない?」
「全然。バカだからね。」
「そんなことないよ。」
そんなたわいもない話をしているとあの話題になった。
「明日ってハロウィンだよね。」
悠斗くんのその言葉で朝のお母さんの話を思い出した。
私は悠斗君に聞いてみることにした。
「悠斗君さ、明日朝道を2人で歩くと何かが起きるっていうやつ知ってる?」
そう聞くと悠斗君はちょっと「うーーーん」と指をこめかみにぐりぐり押し当てて、
はっと顔をした。
「聞いたことあるよ!! 誰かから…」
「何が起こるのか知ってる!?」
「い、いや…それは知らないんだよね。」
「そっか…」
悠斗君なら知ってると思ったのに。
私はチャンスと思って、思い切って言ってみた。
「もしよかったら明日何が起こるか、検証してみない?」
「いいよ。俺でよければ。」
「ほんとに!? ありがとう。ちょうど朝図書委員の仕事あるし、ちょっと早く行ってみよ。」
「わかった。じゃあ朝、輝美ちゃんの家迎えに行くね。」
「え!? いいよ。悠斗君は学校から近いんだから。」
「ダメだよ。2人で歩くんでしょ?」
そうだった…まぁいっか。明日が楽しみだな~
まさかあんなことになるなんて私も悠斗君も思っていなくて。
その夜。私はお母さんから何が起こるかは聞かずに、どこの道かと言うのを聞いた。
それは私が黒い人をみた道だった。
まぁ、関係ないかなと思って私は気に留めていなかった。
私はウキウキしながら眠りについた。
10月31日の朝、私は早めに起きてちょっとだけおしゃれをして。
おしゃれって言っても制服だからそんなにできないけど…
インターホンが鳴ったので、私はすぐにドアを開けた。
「おはよう輝美ちゃん。」
「お、おはよう。悠斗君。」
行こっかと言われるとちょっと緊張してきた。
何が起きるんだろう…
私は悠斗君に昨日お母さんに教えてもらった道まで話をしながら歩いた。
「ここの道を右に行った所だって。」
「うん。わかった。」
曲がるとき、ちょっと怖かった。
だってまたあの感覚が来たから。
そう。吸い込まれそうな感覚が。
ちらっと2人で道を見るとそこには誰も居なかった。
「誰も居ないね・・・・」
「そうだね・・・・」
2人でそう言っていた瞬間後ろを見たらあの男が居たんだ。
昨日の朝、私がみた真っ黒な人。
その人は私たちの方にどんどん近づいてくる。
ちょっと黒い人と間の間隔を取って私が話しかけた。
「あの…昨日は大丈夫でしたか?」
私が聞くとその男はまたぼそっと
「----------------。」
私は何と言ったのか聞き取れず、
「なんて言いましたか?」
って言い返した。
その瞬間。
また強い風が吹いて。私も悠斗君もしりもちを着いた。
「なんだ? 今の風?」
「すごい強い風だね。」
二人で顔を見合わせた瞬間。
「あれ? なんで自分が目の前に?」
って。
よく考えたら、それは大事件なことで。
「ま、まさか私たち・・・・魔法で?」
「入れ替わったのか…?」
やばい。これは。
よくドラマとかでなりすますとかしてるけど、私たちにはできないことで。
「今日は学校はさぼって元に戻らないとな。って輝美ちゃん!? どうして泣いてるの?」
「だ、だってもし私が悠斗君を誘わなかったらこんなことにならなかったのに…ごめんなさい」
私は泣いていて。ほんとに悔やんだんだ。
そしたら悠斗君はそっと私の頭に手を乗せて、撫でてくれた。
「大丈夫。絶対戻れるから。な?」
「ありがとう。」
悠斗君は自分の頭撫でるのって変な感じだった。って言って笑った。
つられて私も笑っちゃった。
とにかく道のど真ん中に居るのは恥ずかしいので、24hのレストランに入った。
注文を頼むのも大変だった。
「わた・・・俺はミルクティ…じゃなくてコーラで。」
「お・・・私はコーヒ…ううんカルピスで。」
店員さんは私たちのぎこちない注文にちょっと不審感を持ったに違いない。
でもしょうがない。
「どうやったら元に戻れるかな…」
「あ、あのね。私、さっきこんなモノ見つけて。」
私(輝美)は悠斗君に差し出した。
それは、紙切れだった。そこには
「今日の同じ場所に9時に現る」
って書いてあった。
「ってことは…今日の夜9時にさっきの道に行けばいいのかな?」
以外に単純な人なのかなって心で思っていたけど…
でも悠斗君は
「そんな簡単には戻れないと思うな。俺が気になっているのは輝美ちゃんに言った言葉。」
「男の人、昨日も会ったんだけど、その時もなんか言われたんだ。でも何言ってるのかわからなかったよ。あの人、声が小っちゃいだよね。」
「やっぱそのセリフがわかれば手がかりになるかも・・・・」
私は考えてちょっと言ってみた。
「今日はハロウィンだからさ、それに関係することなんじゃ・・・・?」
「輝美ちゃんいいねそれ! 考えてみよ。とりあえずお店出よっか。外にでて探して見るのもいいかもしれないし」
私と悠斗君は外に出た。
「めっちゃ寒い・・・・女子ってスカート不利だね、冬は。」
「男子いいね、ズボンあったかい。」
歩きながら私たちはさっきの話題へ。
「ハロウィンと言ったら…?」
悠斗君が言うと2人は同時にいろんなことを言いだした。
「仮装! かぼちゃ! お化け! オレンジ! 紫! 黒! くらい?」
「前半は役に立ちそうだけど色は関係なくない?」
「うん。関係ない…」
なかなかいいものがないなぁと考えていたとき私たちの目の前に広がったのは…
「悠斗君!! 遊園地だよ! 遊園地!!」
「うん。見たらわかるよ?ってヤバッ…」
皆私たちを見ていた。
確かに男が遊園地を見てはしゃいで、女がそれを呆れたような目で話しかけている光景。
うん。やっぱり引くよね、そういう光景は。よそでやれってね。
でも入れ替わってるからなんだよね…
「せっかくだから遊んでく?」
「う、うん!!」
遊園地に入ってからは、時間がたつのが早かった感じがした。
お化け屋敷やジェットコースター、メリーゴーランドなど。
パーク内を歩いていると誰かに肩を叩かれた。
俺が(輝美)振り向くとそこにはキャストさんがハロウィンのコスプレをして一言。
「----------------。」
「い、いまなんて言いましたか!?」
これはまさか…
キャストさんは「しょうがないなー。」と言ってまた
「Trick or Treat!」
「どうして小さい声で言うんですか?」
「だって大きい声でいっちゃったらつまんないでしょ?」
も、もしかして…
「「これかも!!」」
私と悠斗君は同時に同じ言葉を言った。
「これは試してみる価値ありだね。」
悠斗君はニコッと笑った。
「そ、そしたらあれを…」
ポッケを探ると飴が一つ。
それを私は渡した。
「ありがとうございます! 良かったらどーぞ。」
そういって差し出されたのは杖。飴のね。
飴を渡して飴で返すって…「目には目を、歯には歯を」みたいになってるし…
ダメだ。勉強のことは今は頭に入れたくない。
合っているかはわからないけど試してみようという悠斗君の提案を私はすんなりとOKをした。
そのあとはゲームセンターとかカラオケとかも行って。
時計を見ると8時ちょっとすぎくらいだった。
「そろそろ行こっか。」
「そうだね。」
飴もしっかり持ち、私たち2人は朝の道へ向かった。
そこには居ました。真っ黒な人が。
「よし、行くよ?」
「う、うん。」
私と悠斗君は小声で話し合って。
その黒い人は私たちに気が付くとゆっくり近づいてきた。
上手くいくだろうか。きっと悠斗君もそれを考えているはずだ。
そして・・・・
「--------------。」
「はい。どうぞ!!」
そういって私は黒い人に飴をいっぱい渡した。
すると黒い人はフードを半分とって口だけ見えた。
その時の表情はたぶん笑っていたと思う。
黒い人はニコッとしていた瞬間またあの強い風が吹いた。
「「わっ!!」」
ゆっくり目を開けて自分の体を見た。
「「戻ってる!!」」
2人は同時に喜び、ハイタッチをした。
「あ…」
私はそこにまた紙が落ちているのに気が付いた。
そこには。
「Trick or Treatはお菓子をくれなきゃいたずらするぞっていう意味ではなくて
本当の意味はいたずらされるか、おもてなしするか、どっちがいい? という意味
今日はハロウィンだったから聞いてみたけど、返事がないからいたずらしようと思って
中身を交換させた。お菓子ありがとう。 黒い魔女」
「あの人女だったの!?」
「そうみたいだね。」
私も悠斗君も男と勘違いしていて、かなりビックリしてる様子だった。
「これは黒い人がハロウィンにくれた魔法だね。」
と言って笑った。
「魔法ってほんとにあるんだね。」
悠斗君が紙を見ていると、
「あれ? 裏になんか書いてあるよ?」
「ん? なになに??」
「また来年この道で会おう」
「「もう入れ替わりはこりごりだよ…」」
と同時に言って笑った。
皆さんも黒い人にはご用心した方がいいかも。よ??