とりっくおあとりーと@時緒
作者:時緒
ジャンル:日常
というわけでアップルパイを作っていた俺。
え? 話しが突然?
きにすんな。わかるだろ? 細かいこと気にしてるとモテないぞ?
それにしてもアップルパイだよアップルパイ。ひとりぐらし歴=年齢の俺が作るんだぜ
そりゃあ旨いにきまっている。
……ちょっと、ちょーっと黒くなっているが、へんな臭いがするが、……旨いにきまっている。
へ? これをどうするか?
あの失礼な幼女に食わせるんだよ。大人の世界ってのを教えてやらぁ。
俺は意気込みながら、キョトンとしている幼女の目の前にガチャンとアップルパイを差し出す。
『なんなのだ、これは?』
『アップルパイだよアップルパイ。』
『くろいが。』
『アップルパイだって』
『へんなにおいがするのだが』
『アップルパイだっていってんだろ?』
これだから最近の子供は…。出されたものは全て食べる、世間の常識だろー?
『おまえな……わたしはうまいものをもってこいといったのだZ『いいから食え』ムグっ』
幼女が何かを言おうとしたが遮り、アップルパイを口におしこむ。
『どーだ。上手いだろ?』
所謂ドヤ顔で聞く。
すると顔を歪ませた幼女は台所に走っていく。
……どうしたんだ?
ガラッと台所の扉があくとそこには、包丁を構えた幼女がたってい、て。
『ってちょっと待てぇぇえ!』
『ころす! ぜっーたいころすんだから!』
なんなんだこいつ!
いうならば暴走している昼ドラのお母様みたいだ←
--少したってから。
『……機嫌治せって、な?』
『……。』
あのあと取り合えず幼女を押さえ、椅子に座らせてみた俺。ちなみに被害は頬の掠り傷および善良な家具たちだ。
アップルパイは俺が処理した。食えるにきまっているだろう?
……それにしてもこの沈黙はどうにかならないのか?
『……。』
そうだ、俺はこいつの名前知らねぇわけだし。聞いてみるか。
『なぁ、お前何て言うんだ?』
『……。』
幼女は俯いたまま答えない。顔は隠れて見えないが、泣いてるような気がした。……なんか名前の話しはタブーみたいだな〜。
まぁ、俺には関係ないがな←
人でなし? 鬼畜? 何とでもいうがいい。これが俺だ。まぁどんなことがあるにしろいつまでもお前や幼女だと呼びづらいしな〜。
あ、そうだ。
『ウィンって呼んでいいか?』
『……ふぇ?』
ウィンは顔を上げた。
やっぱ泣いてやがりましたよコイツ。めんどくさいぜ←
『うぃん? おまえが、わたしを?』
『あぁ、そうだ。嫌ならいいが。』
パチクリと俺をその大きな瞳に映しながら、ウィンは“うぃん”と唱えている。……気に入らなかったのか? センスが悪くて悪かったな!
、と焦っていたのはどうやら検討違いだったようで、ウィンは次第に瞳を輝かせ始めた。
『いーな、そのなまえ! きょうからわたしはうぃんだ!』
気に入って頂けた様だ。
『ちなみにこのなまえはなにからとったのだ?』
ウィンはもう嬉しくってしょうがないと言った様子で俺の方に身体をのりだしてきた。
『それはハロウィンからとった。』
『は、はろうぃん?』
今、ハロウィンをしらないやつがいるだなんて……意外だな。
しょうがない、説明してやるか。
あ、読者のみなさんはあらすじを見てくれよ?
--説明終わって
『……というのが、ハロウィンだ』
『おぉぉお! それはたのしそうなおまつりだな!』
まぁその俺の楽しいお祭りはウィンのせいで台無しだけどな!
『わたしはとてもうれしいぞ! たのしいぞ! おまえがそんななまえをつけてくれたことがうれしいぞ!』
『あぁ、そうか』
『うむ!』
まぁウィンが楽しんでるようだし、我慢だ。大人は我慢が大切だからな。
『ありがとう! こんなたのしいひははじめてだ!』
ウィンの姿が揺らいだ。
あ、倒れる。
気づいたら俺の前は真っ暗だった。
--朝←
起きたよ←
えぇ、起きましたさ、そりゃあ
え、ウィン? 起きたらいなかったよ?
心配? する必要なくないか?だって夢だからさ!
気づいたら頬の傷も家具の破損も始めからなかったみたいになってるんだからな。
だから気にならない。
ん? ちなみに今日はハロウィン当日だ。
勿論子供たちが集まってくる。
『『『とりっくおあとりーと! お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ?』』』
『ほれ。』
『よっしゃ! 次はどこいく!?』
全く……最近の子供は礼儀がなっていないなぁ……。
開けっ放しにされた扉をしめる
『ふぁ…ねみぃ『とりっくおあとりーと!』…は?』
そこには銀髪の幼女が当たり前のようにたたずんでいた。
頬を触るとピリッとした感覚が俺を襲い、家の中をみると家具の残骸が転がっている。
……たく、
『にいちゃん、あそんでくれないとイタズラしちゃうぞ?』
『I'm scared…』
しょうがねぇ奴だ
あ、ハロウィンってのはな、笑顔が溢れたり溢れなかったりする行事なんだぜ。