お礼
いらっしゃい、ご飯にする?お風呂にする?それともわ、た、し?を友達にやると真顔で「今すぐドブに入ってこい」と言われました。
「あ、おかえり。」
家に帰ると雪ちゃんが迎えた。
「…そのあたかも居て同然のようにおかえりっていうのは何ですか。」
「新婚さんみたいにやりたかった」
「…た、ただいまっ」
照れる。
「ただいまのキスは?」
「いってきますのキスならわかるけどそれはわからない!!!」
「じゃあ御飯にする?お風呂にする?それとも「お腹空きました。」
雪ちゃんの様子がおかしい。
今までこんなサービスなかったハズだ。
なんなんだ、一体何を求めているんだ!?
身体か!?身体なのか!?
「…飽きた」
「え?」
振り向くと耳を真っ赤にしながらうずくまっていた。
「え、雪ちゃんどうしたの?えっ、」
「恥ずかしい…」
今頃になって恥ずかしくなってきたらしい。
うずくまってる雪ちゃんの前にいき、顎をあげ舌を入れた。
「んっ…」
「ただいまのちゅー。」
「なっ…」
戸惑う姿が可愛い。
「もう一回する?」
「え、いや、あの…」
もう一度舌を入れる。
「時人…どうしたの…」
「要望にこたえた。」
「こたえるの遅い…」
「雪ちゃんもう遅い時間だよ、どうしたの?」
本当なら今日は遊びにくる予定はなかったハズだ。
明日は遊びにくる予定はあったけど。
「泊まりにきた。」
「心の準備できてないよ。」
「知るか。」
パーカーとワイシャツを脱ぎ、新しいパーカーに着替える。
「時人の着替えシーンは期待してなかったわ。」
「新婦さん脱いだ服をたたんでくださいな。」
「…何顔赤くしてんの。」
ばれた。
こうゆうことを言うのは苦手なんだ。
「相変わらず細いなぁ、肋骨浮き出てるよ。」
そう言いながら触ってくる。
「いっ…こ、こちょばしいからやめてっ…」
「皮め…」
恍惚の笑みを浮かべ服をたたみ始めた。
なんなんだ…そして服をたたみ始めてる。
新婦さんだ…
恥ずかしい。
「風呂沸かしておいたよ。」
あれ、今服着替えた意味がなくなる、
「雪ちゃん先に入りなよ。」
「良いのー?」
「僕が入った後は嫌でしょ。」
「嫌じゃなーいよ。」
後ろから抱きしめてきた。
胸があたってる。
「わ、わかったから…でも先に入って欲しいし、」
「わかりやすいなぁ。」
何も言い返せない。
別に風呂ドッキリなんて狙ってないよ!!!
「じゃあ入ってくる」
「ゆっくりどうぞ…」
あれ、石鹸とか切らしてないかな。
風呂に入る為に戸を開ける音が聞こえた。
…今行くのはまずいな。
「いや、でもなかったら身体とかあらえないし…」
戸の向こうからなら大丈夫だろう。
入浴剤の香りのする戸の前にきた。
「雪ちゃん、石鹸とかある?」
「えっ!?時人!?や、入ってこないで!」
ザバッという音と共に風呂内で響く声が聞こえる。
「は、入らないからここから話しかけてるんでしょ…石鹸とかなかったら困るかなって思って。」
「あ、本当だ石鹸ない。」
「新しいの渡すから手だけだして。」
「うん。」
少し戸があいたと思うと濡れた手がでてきた。
熱で少し赤みがかっている。
石鹸をくれ、という手を意地悪半分に握った。
「わっ!えっ、あの…」
「石鹸だよ」
「石鹸は動かないから!」
慌ててる声が聞こえる。
入るわけ無いのに。
あまり外にでていると寒いと思った僕は素直に手に石鹸をのせた。
「じゃ、ごゆっくり。」
「はーい。」
戸を閉めリビングに戻った。
「どんだけ信用してるんだよ…」
男の家の風呂なんて普通入らないだろ…
あまりに純粋すぎて襲う気にもならない。
「時人さん次どうぞ。」
「あ、はい。」
髪が濡れて真っ直ぐだ。
なんだかいつもより大人びて見える。
「真っ直ぐな髪型も可愛いね。」
「そ、そう…?」
少し嬉しそうにしている表情が可愛い。
「普段も可愛いけど。」
「…はやく入ってきたら。」
「うん。」
流された。
僕もかっこいいなんて言われたいな。
もやししか言われない。
風呂にはいるが、雪ちゃんが入った後だと思うと緊張する。
「はぁ〜…」
「時人さん背中ながしましょうか」
ガラッと戸があき雪ちゃんが姿を表した。
反射的に肩まで湯につかる。
「えぇっ!?えっ!?」
「何はずかしがってんの」
「いやいや!!背中ながしましょうかじゃないから!」
「うるさいな」
風呂内に入ると真顔で桶を手にとった。
た、叩かれそうだ。
「洗ってあげてもいいよ」
普通展開的に逆だろ。
「いや、いろいろと見られるの恥ずかしいし…」
「お前のなんか見てもなんとも思わん。」
真顔で言われると傷つく。
「もう身体洗ってるから!」
ナイスな言い訳を思いついた。
「じゃあ頭洗う。」
そうきたか〜…
でも頭ならまだ良いかもしれない。
「じゃ、じゃあ…」
湯につかったまま頭を下げる。
「でもなんでいきなりこんな。」
「いつも泊めさせてもらってるから、少しのお礼。」
髪をわしゃわしゃと洗っていく。
気持ちいい。
「そ、そうなんだ。」
僕もご飯作ってくれたりしてもらってるのに。
「じゃあ今度は僕が頭洗ってあげる。」
「そ、それはいい。」
頭を洗う手に力が入る。
「嘘だよ…」
まぁ、今じゃなくてもいいか。
「もう一風呂はいる気は?」
「ないね。」
洗い終わるとすぐに風呂からでて戸をしめられた。
「…今度の時、ね。」
「えっ!?う、うん!!うん!!」
こんなに近づいてもいいんだろうか。
嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「付き合ってないのにな…」
付き合うのが怖い、なんて言えない。
「いい湯加減でした〜」
風呂をでてリビングにきたが、雪が見当たらない。
「トイレかな?」
ふと下をみるとこたつに入り寝ていた。
危なく踏むところだった。
「おーい。」
爆睡みたいだ。
起こさないよう隣に入り一緒に寝る。
「可愛い。」
君の寝顔が好き。
髪を耳にかけようとしたところで目を覚ました。
「おはよう。」
「腕枕…」
寝ぼけているのか、半目で腕枕を要求される。
「こう?」
腕を出すと抱きつき腕に頭をのせてきた。
「お、おう…」
そしてまた寝た。
「雪ちゃーん…」
起きないようにしながらそっとおでこに口をあてる。
自分でやって起きながら恥ずかしい。
雪ちゃんは起きなさそうだ。
少しこの後の時間に期待してたのだが。
「まぁ、明日の朝でも良いしね。」
いつもご飯を作ってくれてるお礼にでも。




