みつばちはっち
ようやっとここまで来た。長かった…。(私だけ)
杏望先生と妙な約束をさせられた次の日。そう、次の日!つまり今日!!放課後の部活案内がある今日になってしまったのです。
昨日の疲れも取れてないのに…とにかく面倒さえ起きなきゃいいと思ってたわたしに、神様は非情でした(泣)
棗先生からは期待の眼差しで見られてるし(嫌だよ!面倒なんて見ないからね!)、美晴からはニヤニヤ笑いを向けながら報告待ってるなんて言われるし(あんたももれなく巻き込んでやるからね!)、もう放課後なんて来なくていいよ、ってヤサグレてたわたしにさらに厄介者が顔を出した。
「咲倉舞はいるか。」
威圧感をビリビリに出しながらうちのクラスに乗り込んできたのは、昨日泣きそうに顔を歪めてた生徒会長サマだった。
そんな人ここにはおりませんよーっと言いたくなるのを堪えて、みんなの視線を感じながら立ち上がったとき、
「あっ!昨日の偉そうな男!」
と誰かが叫んだ。……うんごめん。誰かなんて濁してみたけど、こんなこと言うのは1人しかいないのはわかってる。わかっているけど知らない振りしたかったんだい!
「ん?あぁ、昨日の突進女子か。」
「と、とっしんって!本当に失礼な人ね!あたしに何かご用?言っとくけど、昨日のことは謝らないわよ!」
おーい。用があるのはわたしですがー。まぁこのまま忘れてくれれば助かるけど。
「いや、俺は咲倉舞を呼んでいる。それに謝らなくていい。俺の言い方もきつかったんだろう。だが、これからは廊下を走るんじゃないぞ。おい。咲倉舞。さっさと来い。」
はっはー。やっぱりそんな都合よく忘れないよね。クラスのみんなが動向を見守るなか、わたしは森木さんの横を通りすぎて会長のところに向かったとき、森木さんが
「あれ?ここは生意気な女だって好感度が上がる場面のはずなんだけど…」
と呟く声が聞こえた。
??なんのこっちゃ。まぁいいや。
「なんのご用ですか?」
「あー…いや、昨日はすまなかった。情けないところを見せてしまったな。お前が保健室まで俺を連れて行ってくれたと聞いてな。これ。俺と樹里からお礼だ。受け取ってくれないと俺は樹里に顔向けが出来ないから受け取ってくれ。」
と半ば強引に押し付けられたのは、わたしがみたいと言っていた映画の観賞券だった。これならまじ嬉しい。
恐らく、殴られてから樹里ちゃんが来るまで間の記憶が(ショックで)ないのだろう。しかも樹里ちゃんにはわたしが受けとるまで押し続けろと言われてきたっぽい。そこら辺は本当にきっちりしてる子だからなぁ。樹里ちゃん。わたしの嫁に欲しい。
ありがたく受け取って、いつ行こうかなと予定を考えていると、
「同じものを透流にも渡しておいた。一緒に行くといい。」
と爆弾を落として帰って行った。なぜだ!なんでそんなことすんだー!一緒になんか行くかー!あっ、なんか急に観賞券が重たく感じる…。
ため息を付きながら席に戻ろうとしたけど、視線がさっき以上に突き刺さる突き刺さる。会長は小声で話していたから会話が聞こえなかったのだろう。変な誤解されるのも嫌だから、会長には婚約者がいて、その婚約者とわたしが友達だからその用事で来たと言っておいた。これで騒ぎ立てられることもないだろう。ふぅ。
こんなことがあってわたしの疲労は溜まりまくりなのに、放課後がチャイムと一緒にやって来た。きょうはおうちかえりたい。
「咲倉さん。じゃぁ行こっか!」
「うん、そうだね…。」
にこやかな森木さんを連れて弓道部へ向かったが、もう嫌な予感しかしない。部活のことを話してるのに、気もそぞろでキョロキョロしながら歩く森木さんを横目でみて、またため息を付いたわたしでしたマル
弓道場へ入ったら、もうそこには静流先輩と梨子先輩がいた。わたしたちは近道を使わなかったので、先に着いたんだろう。紹介をしようと口を開こうとした瞬間、
「不合格ぅ」
と梨子先輩が言った。ちょっ、待って!そういうキッパリハッキリな梨子先輩大好きだけど、わたしなんか気まずい!
当然びっくりしてる森木さんに、梨子先輩はいつもの可愛らしい声でオブラートに包んだ毒を放った。
「ごめんねぇ?今の人数だと、未経験者は面倒みれないんだぁ。ここまで来てもらったのに、本当ごめんねぇ。入れない部活にいてもしょうがないから、早く帰った方がいいよぉ?」
「あっ、そうなんですか。あたしこそ、無理言ってすみませんでした。咲倉さんもわざわざありがとね?じゃぁあたしは帰るから、部活がんばってね!」
梨子先輩の言葉に気分を害した様子もなく立ち去った森木さんを、ぽかーんと間抜け顔で見送ったわたしは、ちょっと彼女に苦手意識を持ちすぎた?と反省していた。
……だから気づかなかったのだ。弓道場を出た森木さんが、
「別に入部することが目的じゃないし~。あれがライバルキャラの2人かぁ。守杏静流の方はまだわかんないけど、鏑木梨子は一癖ありそうだなぁ。」
と呟いていたことに……。
ありきたりな終わりかたですみませぬ。