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らっきーせぶん

『ろくろっ首』で書き忘れましたが、森木華凜を華鈴に変更しました。

ここ、保健室は去年赴任してきた杏望先生のお城だ。前は殺風景だったという保健室も、先生がカーテンの色を薄いグリーンにしたり、緑を飾ったりして落ち着ける雰囲気に作り替えた。

杏望先生が赴任してきた当初はとても大変だったらしい。この通り見目麗しく、若い男となると女子生徒が黙っちゃいない。同じく去年一緒に赴任してきた棗先生もそりゃぁ数々の女子生徒に声を掛けられたらしいが、棗先生は受け持つ授業があるためすぐかわせる。でも、基本保健室から動かない杏望先生は押し寄せる女子生徒に対応が出来ずにいた。そして、ついにキレてしまったとか。

なんでも、『本当に怪我や病気をしてない人の立ち入り禁止!もし破ったらそれ相応の罰があります』というお触書をしたらしい。それを見た大半の生徒は、やり過ぎたかなと反省をしたのかしなかったのかはわからないが、沈静化には効果があった。でも、それを無視する強者はどこでもいるらしく、とある女子生徒が仮病を使って保健室に入り込んだ。しかして、杏望先生にはすぐバレて『罰』を受けることになった。その罰っていうのが……英・国・数の問題集。大したことないって思った?それがどっこい、厚さは3つ合わせて広辞苑並み。しかも3日で終わらせるという期限つき。出来なかったらさらに1教科ずつ追加の無限地獄。例え得意科目であっても、1日1教科終わるか終わらないかの量。ムチャブリだっ…!と誰しもが思う。そしてもちろん件の女子生徒もやり終えることなく期限が過ぎてしまい、どうにかこうにか反省文だけで許してもらったらしい。ある意味見せしめだが、前の惨状が目に余った教師陣は仕方ないと口をつぐんだ。

そんなこんなでようやく本来の静かさを取り戻した保健室は、保健委員からは人気の勉強スポットと化している。飲食禁止の図書室とは違って、いつでも暖かい・冷たい飲み物がすぐ飲めるし、杏望先生が勉強を教えてくれたりもするらしい。杏望先生は、保健教諭だけでなく、他の教員免許も持っているんだとか。教えかたも上手いそうなので、保健委員は杏望先生のいいつけはよく守ってる。だからこそこの人は弓道部にしょっちゅう顔を出せるのだ。あれ?そういえば……


「今日は保健委員いないんですね?」


お茶を淹れてくれた先生にお礼を言いつつ訊ねてみる。冷房が少し寒いと思ってたのを知っていたのか、暖かいミルクティーを淹れてもらった。うまし。


「水曜日はお休みにしているんですよ。弓道部がないので、私はずっとこっちにいますしね。」


弓道部主体で考えるなや。


「しかし、災難でしたね。漆木くんも、咲倉さんも。咲倉さんは図書室に行く途中だったんですか?」

「はい。家より図書室の方が集中出来るので。」

「なら今日は保健室(ここ)で勉強してきませんか?私が教えてあげますよ。」


えっ。上手いと評判の杏望先生に教えてもらえるなんてめっちゃラッキーだ。でもなぁー

と悩んでいると、


「一息ついたら弓道の型も見てあげますよ。特別大サービスです。」


ウインクされながら茶目っ気たっぷり言われてしまった。普通の人がやるとドン引きなのに、美形にやられると胸きゅんしてしまいそうなのはやっぱり顔がいいからか。チッ。美形は得だなおい。

でも弓道の型を見てくれるっていうお誘いには一も二もなく頷いてしまった。



杏望先生には英語を教えてもらった。他の教科は大体わかるけど、英語だけは無理!日本に住んでるし、海外も絶対行かないから英語なんてやらない!と言いたくなるぐらい。でもさすがは杏望先生。とっても分かりやすく教えて頂いた。このまま教鞭をとってください!

その後に型も見てもらったし、まじ感謝だわ。これからはもっと敬意をもって接しよう。

大満足の時間を過ごしたわたしは帰り支度を済まして帰ろうとした時、


「ねぇ咲倉さん。……咲倉さんのこと、舞さんって呼んでもいいですか?」


と聞かれた。

わたしがびっくりして返事が出来ないでいると、


「だってみんな咲倉さんのこと下の名前で呼んでるし…。私だけ仲間外れみたいじゃないですか。呼ぶのは2人きりの時だけにしますから。ねっ?今日のお礼として私にもご褒美下さい。」


お礼って、あんたが言い出したんやろがーっ!と言いたくなったけど、わたしには頷くしか選択肢は残ってなかった……。なんか今日は嵌められてばっかりいるような気がする……。

話が進まない…なぜだ!(私のせいだ!)

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