しぃー
新キャラが出なかった…!
他愛もない話をしながら(というか、なんでいつもは役員棟にいるはずなのにここにいるんだと聞いたら、炭酸が急に飲みたくなったとのこと。……うちの学校炭酸置いてないぞ。あっ!って気づくの遅すぎ!1年いたのに気づかないとか、これが天然が天然たる由縁か?)弓道場へ戻ると、杏望先生が待ち構えてた。指導が終わったんなら保健室に戻ればいいと思うのはわたしだけですか?
「重かったでしょう?女性に重いものを持たせるなんてすみません。」
と申し訳なさそうに謝るのはいいんだけどさ、隣の人物が目に入らないのかな?重いもの一切持ってないよ?わざとか?と思ってしまうぐらいの副会長スルーはわたしのいないとこでやって下さいねー。
「大丈夫です。副会長が全部持ってくれたので。副会長、ありがとうございました。みなさーん!飲み物買ってきましたー!」
副会長に礼を言いつつジュースの入ってた袋を受けとるとみんなに配っていく。わたしも学校に持ってくるのは大概お茶だから、やっぱ汗かいたにはスポーツドリンクが五臓六腑に染み渡るよね!なんて思っていると、静流先輩が近寄ってきて、
「ありがとう。……ごめんね、私が気がきかないから。」
!!
「違います!これはわたしがしたかったことで!それに順番待ちしてるより買い出しに行った方が時間を有効に使えると思ったんです!杏望先生から教えてもらったことを先輩たちがわたしたちに教えて下さった方がいいと思っただけなんです!…余計なことでしたか?」
とちょっと俯けば、
「そんなことないよ。舞はよく気がきくと関心してたんだ。だからこそ私がもっと周りに目を向けなきゃなって。でも舞はもっとワガママを言ってもいいんだよ?いつも部員のためにいろいろやってくれるけど、私は舞が楽しんで部活をやってくれる方が嬉しいし。」
はうっ!そんなこと静流先輩に言ってもらえるなんて……感無量です!でもわたしはかなり自分本位に行動してますよ?さっきだって、1人でぷらぷら買い出しに行きたかったから、わざわざ他の1年生が教えてもらってるときに許可を取ったし。じゃなきゃ先輩は1年みんなで行かせてたはずだからね。わたしは自分勝手に行動しつつ、それを周りに悟らせてないだけです!そこらへんはほら、前社会人スキルのなせる技だよね!でも静流先輩がワガママ言っていいって言うなら…
「じゃぁ1つだけいいですか?わたし、みんなでご飯を食べたいんです。今までそんな機会なかったし、親睦会てきなのをしたいなってずっと思ってて。昼休みでもいいんですけど。」
そう!親睦会がしたかった!部員仲は良好だけど、部活でしか顔を合わせないからもっとこう、プライベートの話とか聞いてみたいんだよね!静流先輩の!
「それが舞のワガママなのぉ?そんなんいつでもやってあげるのにー。まぁ、それなら今度の土曜日は?午前中はいつも通り練習して、午後にどっかでお昼ご飯!都合悪い人手上げてー」
そういってちゃっちゃと計画を立てたのは副部長の鏑木梨子先輩。ものすごく女の子らしい風貌をしてるのに、性格は静流先輩よりさっぱりしてる。チャキチャキの江戸っ子気質なお姉さまだ。
土曜日も午前中だけ部活をしているんだけど、午後はなにかしら予定があるためみんな早々に解散していく。
さすがに今週は予定を入れちゃった人がいたんだけど、ずらしてくれるらしい。意外とみんな親睦会やりたかったっぽい。わたし良いことしたわー。
そんなこんなを話し合ってたら、杏望先生が、「私は職員会議が入っているので来週にしてほしいんですが…」とのたまい、副会長は「僕ならいつでも大丈夫ですよ。」とイイ笑顔で言ってくれたのだがもちろん却下。これはわたしたち『弓道部』の親睦会です。あんたら2人はいらん!なことを静流先輩と梨子先輩に言われた彼らは肩を落としながら帰っていったとさ。チャンチャン。
そのあとわたしは先輩方に指導をしてもらい、時間いっぱいゴム弓を触らせてもらいました。この調子ならそろそろ本物の弓に触れるかもー!
時間も時間なので、片付けと軽く掃除をみんなでやって着替えて帰り支度を済ますと、静流先輩に残ってほしいと言われてしまった。他のみんなを見送りながらわたしなんかしちゃった!?と内心焦ると、
「そんなに恐縮しないで。ただお礼を言いたかっただけだから。親睦会のこと。実は私もずっと前から考えてたんだけど、言い出しずらかったんだ。私たちが言えば1年生たちは従うしかないでしょう?それは強制みたいで嫌だったんだ。だからどうやったらみんなが快く参加してもらえるかを考えてたらますます言いづらくなっちゃって。頼りない部長だよね…」
今日は姉弟揃って凹むデーですか?そんなん
「嫌がるわけないじゃないですか。わたしたち1年生がどれだけ静流先輩方を好きか!嫌だったらとっくに辞めてます。この学校は部活強制じゃないですし。それに、わたしたちを選んだのは先輩ですよ?そんな選ばれたわたしたちが先輩方のお誘いを迷惑がるわけないです。むしろいつ言ってくれるのかウズウズしてたぐらいです。」
これ本当。実は他の部活は結構親睦会やらをやっていて、羨ましかったのだ。だからわたしたち1年生はいらなかったんじゃね?って悩んでたりもしてたんだよね。ただでさえ、新設したばっかりな状況だったし。1年生が入ったせいで自分たちの練習時間が削られるって思われてたって仕方ないじゃん?だからわたしたちは話し合って悩みあったりもしてたんだけど。杞憂だったみたい。やっぱり口に出さないと相手のことはわからないんだね。
みたいなことを静流先輩に言ったらポカンとしてたけど、お互いに笑いあっちゃった。だって言ってみれば両片思いだよね。これって。
「それに静流先輩は頼りなくなんかないですよ。むしろ1人で弓道部を立て直してここまで仲間を増やしたことに尊敬します。わたしじゃぁ出来ないですもん。だから先輩はドドーンと構えとけばいいんです!もし間違っちゃっても、わたしたちはまだ高校生ですよ?犯罪とかならまだしも、日常生活なら『ごめんなさい』で許されます。大事なのは、非を認められる自分と、謝罪を受け取ってくれる相手がいることです。それさえあれば、間違っても大丈夫なのです!」
最後はちょっとちゃかす感じで言ってみれば、静流先輩は穏やかに笑っていた。めっちゃ素敵ですその笑顔!ごちそうさま!
「……舞には本当に敵わないなぁ。この間まで中学生とは思えないね。歳ごまかしてたりして。……ありがとう。じゃぁお言葉に甘えてドドーンと構えることにするよ。ちゃんと私についてきてね?」
ちょっとギクッとしたけど、最後のニヤリとした笑いに悶えて忘れちゃった!どこまでもついていきますとも!
わたしがアホみたいに悶えてた間、静流先輩は戸締りを終わらせて「帰ろうか」と一緒に歩き出した。
2人で弓道場から校舎に戻ると、前から副会長がやってきた。静流先輩を迎えにきたみたい。
「まだ居て良かった。一緒に帰ろう?」
「透流、冷蔵庫のプリンで手を打ってあげるよ?」
?手を打つって?
「食べていいよ!2つ!」
「ありがとう。じゃぁ私は職員室に鍵を置いて行くから、舞は先に帰ってて。透流、ちゃんと送っていってね。カワイイ後輩が襲われないように。」
えっ!一緒に行きますよって言いかけたけど、
「私は先生にちょっと話があるから。それに引き留めちゃったから暗くなっちゃったし、透流に送ってもらってね。じゃぁ。」
と、足早に静流先輩は立ち去ってしまった。せっかく一緒に帰ろうと思ったのになぁ。残念。
そんなに遅くもないし、送ってもらう必要もないけど、副会長は一緒に帰る気満々でした。プリンに釣られたか。ん?副会長はあげるほうだっけ?あれ?
「ほら、舞。早く帰るよ。」
「あっ、はい!」
急かされて考えが中断されちゃったけど、まぁいっか。
わたしの最寄り駅はここから6つ先。遠いんだか近いんだかわからない距離。副会長たちのお家はわたしより2つ手前。全く逆方向ではないけど、先に着くんだから降りればいいと思うんだけど、静流先輩の指令によってちゃんと家の前まで送ってくれるらしい。近所のおばちゃんはもちろん、おかあさんに見つからないことを祈る。見つかったらうるさそうだ。
「ところで、親睦会する場所は決まった?」
駅から家までの道中、そういえばと聞かれた。
「とりあえずどっかのファミレスにでもって話はしてますけど。」
「じゃぁうちに来ない?さっき母さんに連絡したら、朝から両親揃って出掛けるから大丈夫って許可ももらったし。家の方が周りに気兼ねなく話せるだろう?料理もある程度なら用意出来るから、ファミレスより安いと思うんだ。」
なんてナイスな提案!静流先輩のお家に行けるなんて!
もちろん静流先輩がいいって言えばだけど、わたしとしては一も二もなく頷いてしまった。みんなでなにかしら持ち込めば静流先輩にも負担がかからないしね!
そうして土曜日を心待ちにしながら送ってもらいました。その様子を見られているとも気付かず。
静流先輩と副会長の言葉使いの違いがつけられない……。