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にこめ

なかなか絡まないなぁ…。

「舞、今日部活だっけ?」


いくら森木さんのおかしな言動に悩まされていても時間は過ぎるものです。

今日も今日とて3階、2階をウロウロし、特別棟や役員棟にも出没してるとか。なんなんだまじで。と思わんでもないが、今はそれどころじゃない!


「そーなの!早く行かなくちゃ!バイバイ!」


と友達の美晴に振り向きざまに手を振る。

6限目が延びてしまったので少し遅れそうだ。ちょっと遅れても怒るような先輩方ではないが、なるべくなら早く行きたい。だって部活楽しいんだもん!あぁ~なんで前(前世って意味で)もやってなかったんだろう!こんなに楽しいの社会人になったらそうそう味わえない!

あっ!ちなみにわたしは弓道部に入りました!だって大人になったそう簡単に出来ないでしょ?だから弓道部!ちょっと袴とか弓矢とかを揃えるの大変だったけど(金銭面で)そこはほら!お父様に頼んで。うちは高給取り(ゲヘヘ)なので真面目にやるって言えば出してくれるのですよ。


うちの高校の弓道部は、他の部に比べて少人数です。それはとある理由からなんだけど、その分練習は弓を触らせながらやらせてくれるし、部員仲も良好だ。まぁ入部の時に試験(?)のようなものもしたしね。だからこそ士気も上がるし、早く行って準備しなくちゃという気持ちにもなる。


そんなことを考えながら走っていたら目指す先に見慣れた後ろ姿が!あれは!


「静流先輩!」


守杏静流(もりかしずる)先輩ではありませんか!

2年生で弓道部の部長かつ主将!そしてわたしの憧れです!

精神年齢あらふぉーで高校生に憧れちゃうのもどうかと思いますけどね?でもこのお方かっこいいんですよ!弓道を昔からやっているからか、背筋はピンとしてるし、物腰も穏やかで、でもダメなとこはダメとちゃんと言ってくれるのでわたしとしては見習いたい限りなのです。

入学前は剣道部か弓道部で悩んでいたんだけど、部活紹介で彼女を見たときに弓道部に即決めしました。一目惚れってやつです。ちょっと動機は不純だけど、ちゃんと合格して入部出来たんだからいいのだ。


「あぁ、舞。そんなに急がなくても部活には十分間に合うよ。」


と苦笑混じりに振り向いてくれました。それだけで走ってきた甲斐があるってもんですよ!


「こんにちは!なんかもう部活が楽しくって!気が急いちゃうんですよね。」

「こんにちは。本当に舞は楽しそうだよね。弓道部をこんなに気に入ってくれるなんてわたしも嬉しいよ。」


なんて和やかにお喋りしながら弓道場へ。至福の時間ありがとうございました。

弓道場は校内の中でも少し離れた位置にある。静かな環境で出来るようにという学校側の配慮だ。その分遠いし、用のない人は存在も知らないような場所なんだけど、実は弓道部しか知らない近道があるのだ。そこを通るとすぐに入り口が見える。わたしたち1年は先に道場の掃除から始めるので更衣室の前で静流先輩と別れて着替える。その間先輩たちは今日の練習メニューやらのミーティングをするのだ。

先に来ていた他の1年生に挨拶をし、急いで体操着になり掃除をする。わたし以外の1年生は3人だ。みんな違うクラスなのでわたしより早かったみたい。そして掃除が終わったら全員で基礎トレーニングをしたあと袴に着替えてゴム弓を使った練習を始める。ゴム弓の練習は5月から始めたばっかりだから本物の弓を触るのはまだ先だけど、これだけでも4月よりは楽しい!4月はとにかく基礎トレを中心に徒手の練習だけだったから。徒手は弓を引くための動作を覚える練習ね。

このゴム弓の練習を先輩方が代わりばんこで見てくれている時、1人の闖入者が……


「皆さん精が出ますね~。私も参加させて下さいな。」


この学校の保健医である杏望秀征(あみしゅうせい)先生だ。

杏望先生は高校・大学と弓道をやっていたらしく、赴任先の学校でもこうして弓を引きに来る。保健医である先生がこんな校内の外れまで来ていいのかと思うが、毎回ではないし、その間は保健委員に任せているそうだ。どーしても対処出来なかったら呼べばいいし。

わたしはこの先生が来るのをわりかし嫌がっている方だと思う。だってこの先生も棗先生に負けないくらいイケメンだし。種類は違うが。さらっさらの黒髪に端正な顔立ち。背も高いし、棗先生と違って言葉遣いが丁寧なので気軽に話しかけるというよりは遠目で眺めていたいタイプの人だ。しかも弓道をしている姿はいつもの10割増しだ。上手いからお手本にもなるし。おかげでこの先生が来ている間は見学することになってる。わたしにはレベルが違いすぎてお手本どころか練習のジャマとしか言いようがないけど。

やさぐれた気分になってぶーたれてると静流先輩が隣に来て、


「上手い人を見るのも練習の1つだよ。あんな風にはまだまだなれないけど、うちは顧問がいないから教えるこっちとしても勉強になるし。ちゃんと目に焼き付けておきなさい。」


と諭される。……わたしあらふぉーなのに高校生に子ども扱いされるって。ほんと静流先輩好き!

弓道部に顧問はいない。いや、顧問はいるが正確に言うなら教え手がいないのだ。今は静流先輩がいるからなんとか形になっているが、その前までは名前だけの部だったとか。だから普通の部みたいに3年生がいない。その為静流先輩が部長かつ主将なのだ。


みんなが杏望先生に教えを請うてる間、わたしは許可をもらってジュースの買い出しに行くことにした。そのあと教えてもらった方が効率がいいと思ったし。先生が一緒に行くと言っていたがそれじゃ意味ないので丁重にお断りしました。

自販機は校内にあるため昇降口で靴を履き替えて廊下を歩いていると遠くに2人の人影が。1人は悩みの種、森木華凛だ。もう1人は……

テンションが違うのは私のテンションのせい。

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