②苺
戻りました!そして浮気してすんません!
ここからはサクサク行ければ…いいな!
咲倉舞ちゃん、
かーんぜーんふっかーつ!!
あの静流先輩とのダブルデートの日から、熱が上がったり下がったりして中々体調が良くならなかったけど、もうバッチリでっさぁ!
惜しむらくは海に行けなかったこと!
本当は行けるんじゃね?って思ってたけど、やっぱりお父ちゃんとお母様が許して下さらなかった。ついでに美晴さんにも。
もう大丈夫だよ!って言ってみたんだけど、御三方に怒られてしまいました。反省。
まぁ夏は今年だけじゃないしね!来年行けばいいよね!
しかし、9月になると途端に海に行きたくなくなるのは何故でしょう?
とりあえず、宿題だけは終わってたからそこは良しとしよう!いやぁ、夏風邪コワイコワイ。
ところで、今日から新学期ですよ。
みんなどーしてるかなー?あっ!静流先輩に会いに行こうかなぁ。大分心配してたし。一応メールでは伝えたんだけどね。でも今日は午前中で終わりだしなぁ。
なんて考えながら登校してみれば、教室内は異様な雰囲気。なんかあったの?
でも原因はすぐ分かった。森木さんだ。
彼女の回りを男子たちが取り囲んでいる。しかも皆顔が弛んでいるぞ?
当の本人の森木さんはデレデレしている男子たちに困惑気味ながらも嬉しそうだ。
「おはよー。これどしたん?」
「おはよ。私にもよくわかんない。登校してくる男たちみんなああなってる。」
先に来てた美晴に聞いてもわかんないって。
確かに森木さんは美少女だ。でもそんなの最初っからで、今日昨日の話じゃない。なのにこの男子たちの変貌ぶりに驚きを隠せません!
その後も、教室に入ってくる男子たちはしばらくするとフラフラと森木さんの回りに侍るようになる。その光景は異様を通り越して異常だった。
まるで花に群がる"カマキリ"だね!って美晴に言ったら呆れられた。なぜだ。
チャイムが鳴っても聞こえていないのか、席に着かない奴ら。どーすんだコレって思ってたら棗先生が入ってきた。
「おはよーって何だお前ら、さっさと席につけ。というか何か匂うぞ。窓開けろー。」
「臭うって、女子がいるのにヒドーイ!それに窓開けたら暑いですよー。」
この学校は冷暖房完備。だから窓なんか開けたら外の熱気が!やーめーてー!
そんな苦情も知らん顔した先生はさっさと窓を開けてしまった。食券乱用だ!間違った。職権乱用だ!
幸い風があったので、教室内にも熱気を帯びた風が入ってくる。すると、今まで何にも反応がなかった男子たちが(いや、デレデレはしてたけど)、急に『起きた』。うん、あれは起きたで間違いない反応だと思う。
それから首をかしげながら散り散りと自分の席に座ってく。まるで自分で何をしてたかわかってないみたい。わからんのはこっちだがなっ!
まもなく何事もなかったように朝のSHRが始まったけど、誰もがこの不思議な事態に首をひねっていた。
SHRが終わり、今は体育館で始業式だ。校長先生のありがたーーいご説法を聞き流しながら、先ほどまでのことを考える。
あれは異常事態だ。なぜ男子が森木さんの回りに侍ったか、そしてなぜその状態がすぐに解けたか。
うん、どうしよう。嫌な予感しかしない。
でもわたしは関わらないぞ!そんなヒマはない(嘘だけど)!
おっと、生徒会のお出ましか。2学期は初っぱなから体育祭で、来月は文化祭とイベント盛りだくさんだからな。忙しいと思う。みなさま、ガンバレッ!(他人事って楽しい)
ん?会長がなんか難しい顔してる…。っていうより、機嫌が悪そう?しかも副会長まで。喧嘩でもしたのかな?
これはこれは珍しいなんて思ってたら、会長と目が合った気がした。…気のせいだよね。うん。
嫌な予感に苛まれつつも、始業式は無事に終わり、後は帰るだけーって美晴の元に向かおうとすると、壇上から降りてきた会長に名指しで呼び止められた。
やめて!女子の視線がキツイ!なにあの子みたいな目で見ないでぇーー!!
「咲倉舞、話がある。」
わたしにはない!つっても通らないのが世の常。シクシク。
「…なんのお話でしょう。」
「樹里のことだ。…頼まれてほしいことがある。」
「あぁ~!婚約者さんのことですね!わたしと会長の婚約者さんは仲がいいから!」
大げさに大きな声で言ってみる。もちろん周りに聞こえるように!これできっと皆さんの誤解を招かなくて済むはずだ。
「?そうだ。今から時間取れるか。」
「ええ、ええいいですとも!他ならぬ婚約者さんのことですもんね!」
婚約者を強調してみた。会長は『何言ってんだコイツ大声で』みたいな顔してるけど、あんたが自分の立場を考えないから!意外と樹里ちゃんの存在は知られてないんだからね!
面倒だけど仕方ない。ため息吐きつつ会長の後を歩き、美晴に先に帰っててとメールをするために携帯を開く。
すると、樹里ちゃんからメールが来てた。
なんだなんだ2人して。メールを見ると、
『会長の様子がおかしい。学校であったらそれとなく様子を聞いてみてくれないか』
というようなメールがとっても丁寧にぼかしつつ書かれていた。これは本気でどーした。
心配しつつも、ちょうど今から話をするとこなので『了承』のメールを簡潔に書き送り、美晴にもメールをしておいた。
連れていかれた場所は生徒会室。適当に座り話を聞く体制を取ると、会長が徐に話始めた。
「……最近、変なんだ。樹里を見ていると無性に違和感を覚える。頭のなかで誰かが『違う』と言っているような気がするんだ。『おれの隣にいるべきなのは樹里じゃない』と。おれは樹里をちゃんと愛してるのに、別の女に気を取られそうになる。あの、おれを殴った女に。名前も知らないのに、あの女の顔が頭から離れないんだ。そんなのはすごく不愉快なのに勝手に頭のなかがあの女でいっぱいになる。どーすればあの女の気を引けるか、他の奴らに邪魔をされないか、そんなことばかり考える。…他の奴らが誰かもわからないのに。おれは樹里さえいればそれでいいのに、他の女なんか欲しくないのに!欲しいのは樹里だけなのに!」
「ちょっ、落ち着いてください!」
ヒートアップしていく会長が怖かった。本当に何かに侵されていくような気がして。
「…こんな状態が続いたらいつか樹里に取り返しのつかないことを言ってしまうような気がするんだ。だから今は距離を取っている。でも、いつこの状態が終わるのかがわからない。おれはどうすればいいんだ?」
えぇー……そんなまじ相談されても。
確かにわたしは全員を知ってるけど、会長の頭のなかまではわかんないよぉ。
うーん。どうしよっかなぁ。
よし!
「樹里ちゃんに相談すればいいんじゃないですか?」
「そんなことはできない!おれが他の女にうつつを抜かしてるなんて知ったら、樹里に幻滅される。もしかしたら愛想をつかすかもしれない。おれは樹里を失いたくはないんだ。」
いやいやいや、わかってないなぁー。
「そりゃ、最初はショックを受けるかもしれませんが、あの樹里ちゃんですよ?会長のことを会長よりよーく知ってます。会長がちゃんと樹里ちゃんを好きでいれば、絶対にわかる子です。それに、今のままの方が多分樹里ちゃんには良くないと思います。わたしなんかに相談するより、樹里ちゃんに相談する方がよっぽど彼女のためです。もちろん会長のためにも。それとも、 樹里ちゃんは会長のことを信じられない子だとでも思ってるんですか?」
「樹里に限ってそんなことはない!」
「ちゃんとわかってるじゃないですかぁ。ならさっさと樹里ちゃんと話し合ってきてください。なんかあったらわたしも話ぐらいなら聞きますから。」
しばらく悩んだ会長は、『…わかった。樹里と話をしてくる。』といって生徒会室を出てった。
おい!カギ!閉めてって!わたしを置いてくな!
あんなこと言ったけど、樹里ちゃんがどう思うかはわからないし、ショックは受けるだろう。でも、大丈夫。だってあの子は強い子だ。きっと会長を元に戻してくれると信じてる。
樹里ちゃんにとって1番辛いのは、自分に何も言ってくれないことだ。前にそう言ってたし。苦しみも悲しみも会長となら分け合いたいんだって。女の鑑だと思う。
しょうがないから今回は樹里ちゃんに免じて許してあげよう。
壁に掛けてあった生徒会室の鍵を取り、出ていこうとすると、扉が開いた。
入ってきたのは栗坂先輩。
驚いてたようだけど、会長がわたしを呼び止めたのを見ていたのか納得した様子で、
椅子を勧めてきやがった。
いや帰るし!完全復活って言ったけど、一応病み上がりだから!
そんなわたしの悲嘆を気付かないのか、あえてスルーしてるのか、無理矢理座らせお茶も淹れてくれた。
……そんなことより帰りたい。シクシク(本日2回目)
私は片田舎の公立高校だったので、冷暖房完備?なにそのうらやま。状態でした。夏は暑く冬は寒い。季節を感じたってことだよね!(泣)




