流木②
すんません。一昨日朝から具合が悪くって、昨日1日中寝てました。休みだから2話ぐらい投稿しようと思ってたのに…。もう復活したので、また1話ずつ投稿します!
もうあと少しで遅れていた何組も終わるというころ、一緒にいた人のところに連絡がきた(基本2人1組で行動するため)。
わたしから流れてくるはずのチームが、全く見当違いのところで迷ってると。
問題は何種類か用意しているけど、答えは全て同じ方向を指すようにしてある。だから、必然的に行くルートは限られてるし、そこで次の通過ポイントの人に会えるようになっている。
だが、たまたま見張りの人がトイレに行った時、全く関係ないところで立ち往生しているチームがいたらしい。
いくら難しく作った問題でも、たかだかわたしが作った問題だ。おかしいと思ったその人は、問題文を見せてもらったところ、その紙は『問題文』ですらなかった。
生徒会で支給された紙は、どこの通過ポイントかわかるように薄い色紙を使っている。でもその紙は、生徒会では使われない真っ白の紙だった。
そこで色んな人に連絡して、似たようなチームがいないか調べて何組かを見つけたらしい。その全てのチームがわたしのところから問題文を引いてきたとか。
その連絡をもらってすぐ、栗坂先輩が来て問題が入ってる箱の中を見ると、何枚かだが『真っ白の紙』が入っていた。
間違った問題を引いたチームは次のポイントに案内して、これから来るチームには正規の問題文を渡したが、もちろん問題はそんなことではない。
『なぜそんなものが入っていたか』
そこが問題だ。
問題文は情報漏洩を防ぐため、わたしの手元にない間はカギがあるところに保管されていた。ということは、当然ながら真っ先に疑われるのはわたしということになる。
あのあとは特に何もなく、最後の上位入賞者に景品を渡し、片付けを終わらせ実行委員は会議室に集まった。
一番の容疑者はわたしだが、ここにいる人たちにも出来なかった訳ではないからだ。
生徒会役員たちも集まったが、みんななんとも言えない。
実質的な被害はなかったものの、もしかしたら大混乱を巻き起こすところだったのだ。たかが学校行事されど学校行事。わたしたちには決して見逃してはいけない事態だ。
「……確認するけど、咲倉さんがやった訳じゃないんだよね?」
最初に口を開いたのは実行委員長。栗坂先輩がメインで動いていたが、それを影で支えていたのは実行委員長だ。なんか最後までご苦労さまです。
「わたしじゃありません。」
「じゃぁ誰がこんな手の込んだ悪戯をするんだ。」
それがわかったら苦労しないわ!
なことを言ったのは生徒会長。でもそんなこと言ったら落ち込むのは分かってるから言わない。
そこでまた誰もが口を閉ざす。疑ってるようで疑いきれてないのだ。
ここにいる人たちはたった1ヶ月ちょっととは言え、あの地獄みたいな日々を一緒に乗りこえてきた。疑いたくないのが人情というものだ。
「咲倉さんはやってません!みんな信じてくれないんですか!?」
待て!わたし今すごく良いこと言った(思っただけだけど)と思うんだ!それをぶち壊すのはやめてくれないか!?
しかもなぜいる森木さん!
確かに手伝ってもらって感謝はしてるけど、この件に関しては無関係だよね?先に帰っていいんだぞ?
「咲倉さんはそんなことするような子じゃないです!なんならあたしが犯人見つけてきます!」
信じてくれるのはありがたいんだけど、なんかわたしの立場が…。
「犯人探しは必要ありません。」
そう言いながら入ってきたのは、杏望先生と棗先生だった。
「杏望先生…。」
わたしが呆然と呟くと、『大丈夫ですよ』というように頭に手をポンと置かれた。
「この事態を招いた生徒はすでに名乗り出ています。ちょっとした悪戯のつもりが、大変な事態になってしまったと反省もしています。その生徒についてどうするかはこれから私たちが話し合いますので、あなたたちはもう帰りなさい。」
「ですが…!」
反論しようとした栗坂先輩を止めたのは棗先生だ。
「お前たちが気にするのは分かる。入念に準備してきたことを危うく台無しにされそうになって怒る気持ちもな。だが、騒ぎ立ててどうする。全校生徒の前で謝らせるか?そんなことをしても気は晴れないだろ。第一、この事態に気づいている生徒は少ない。お前たちの胸におさめておいて欲しいんだ。」
「その生徒にはそれ相応の罰を与えます。必要なら謝らせましょう。ですから、一旦私たちに預からせてはいただけませんか?」
今度こそ誰も何も言えなくなった。
正直、こんな事態を引き起こした犯人は許せない。でも、騒ぎ立てるのも本意ではない。わたしはわたしが犯人じゃないと分かればそれでいいし。
「でも、どうやったんですか?問題文は厳重に保管してたはずですが…」
実行委員長がまたもや口火をきった。
そう言えば!それでわたしが疑われていたんだ!
「…先日、咲倉さんにぶつかった際にこっそり忍び込ませたそうです。数枚だけだったので、こんな大事になるとは思ってなかったと。」
「なんてお粗末…」
誰かが呟いた。
ほんとにその通りだ。なんだそのちっこい嫌がらせは。やるならドーーンと……あっ、違った。そんなんなら最初っからやるな!
「結果的には咲倉さんを怪我させてしまいましたが、自分から名乗り出たことと、本意ではなかったことを考慮して言うつもりはなかったんですがね。」
『咲倉さんはどうしたいですか?』と目線で聞かれた気がした。わたしは…
「痛かったですけど、もうほとんど治ってますし…。とりあえず〇ーゲンダッツ1箱をくれれば忘れると思います。」
和むか!?和んでくれ!もうこの空気耐えられん!
「じゃぁその生徒には謝罪と〇ーゲンダッツを菓子折りとして持ってかせましょうかね。」
『しょうがないですね』という苦笑とともにそう返してくれて、場の空気はなんだか呆れモードになってしまった。
なんとも歯切れが悪い結末になったが、その場はそれでお開きになった。
まだ疑問は残るけど、もうどうこう言うつもりはない。だって終わったことじゃん?そんなことでモヤモヤしてたらもったいないよ!だってだって…
念願の夏休みーーーーーー!!!!
*********
女子生徒は震えていた。
なぜあんなことが『出来た』のかわからない。
確かに少しは妬んでた。
中学の頃から憧れていた守杏透流くん。
クールな彼だから、あんまり騒がれたりするのは好きじゃないだろうと影から彼をずっと見てきた。
この学校だって、彼が行くからがんばって勉強して入ったのだ。身なりだって、すごい化粧をする訳じゃないけど、彼に釣り合えるように気を付けていたつもりだ。決して華やかなタイプじゃないけど、彼の支えになれるように、いつか彼に見つけてもらえるように努力してきた。
なのに、あの女子はまんまと彼の懐に入った。姉の守杏静流を使って。
自分だって、弓道部に入りたかったし、入ろうともしてた。でも、弾かれてしまった。愚かな彼を狙う女子たちのせいで。
それでもいつかはって思ってた。なのに、それなのに…!
だからあの女子が困ればいいと思った。彼の前で恥をかいたり、疑われて嫌悪感を持たれればいいとも。でも、思ってただけでそんなことを実際に自分がするなんて…!
見知らぬ女子に彼とあの女子のことを聞かされて、頭に血が上ってたとしか思えない。その時、何をすればいいか言ってた気もしたけど、覚えてはない。その女子のことも顔も覚えてない。
ただ、自分がしてしまったことで、あの女子だけではなく、関係ない人まで困らせて、彼まで困らせてしまった。それが悔やまれてならない。彼に謝らなければ。あなたを困らせるつもりはなかったと言わなければ…!!
そこまで考えてたところで、扉が開いた。
入ってきたのは、保健医の杏望と数学担当の棗と件の女子生徒の担任だ。
担任は申し訳なさそうにしている。まさか女子生徒みたいな目立たない生徒がこんなことを仕出かすとは思ってなかったのだろう。
女子生徒はぼんやりとしながらも、『すみません』と謝罪をした。
「あなたの処分が決まりました。」
「…しょぶん?」
「まさか、あんな悪質なことをやっておいて、何もないとは思ってないでしょうね?」
そこまで聞いたところで、震えは治まったが今度は顔が青くなっていった。今まで頭にぼんやりと膜が張っていたような気がしていたが、段々とクリアになっていく。
私が謝るのは『彼』じゃない!あの女子だ!
「理解出来たのなら結構。幸い、実質的な被害が少なかったのと、怪我をした女子生徒が大事にしたくないと申し出たため、謹慎ではありません。そのかわり…」
「そのかわり?」
そこで杏望先生と棗先生がニヤリと笑って告げた『罰』に私の頭は真っ白になった。
『あなたの罰は私と棗先生の特製問題集10冊ずつです。もちろん期限は夏休みが終わるまで。出来なければ、追加です。まぁ、少なくないとは言え、夏休みを全部使って終わるか終わらないかといった量ですかね。あぁ、通常の課題もあるので気は抜けませんよ。…夏休みは勉強漬けですね。』
『俺のは数学だけだからいいけど、杏望先生のはほぼ全教科だからなぁ。鬼みたいな量だぞー。夏休みは遊べないと思え。』
かくして、少しの妬みが何倍にも返ってきた女子生徒は、愛しの彼のことを考える間もなく死に物狂いで課題に取り組み、夏休みの間で灰になったとかならなかったとか…。
(合掌)
なんか書くうちに訳がわからなくなって、森木さんがどっかにいってしまいました。そして最後に書いた女子生徒。こんな根暗にするつもりじゃなかったので、最終的にはコミカルに終わらせてみたんですけど、伝わりましたかね?
あと、副会長が影も形もなかったですが、実はいました。それについては次回触れます。




