中2②
大問題発生です…。ここまで続くと思ってなかったので、サブタイトルが思いつきません!今さら普通に変えるのもな…。
後ろを振り返りつつ(女の子たちがついてきてたら怖いでしょ)、映画館に着くと、そこには見たくもない光景が……。もう本当に勘弁してください。
そこに居たのは長身で美形の2人組。とっても目立つ。女の人に囲まれて思うように進めないのか、困惑している。とにかく気づかれないように回り込んで受付に行こうとしたのに、まんまと気づかれた。まぁ、こっちも目立つ人を連れてるからな。
「おや、咲倉さんと守杏くんではないですか。こんなところで会うなんて、奇遇ですねぇ。」
この間映画の話をしたのに、奇遇も何もあるもんか!って思ったけど、懸命なわたしは口を噤んでおいた。しかし、どっから情報が漏れたんだ。
「……杏望先生と棗先生。男2人でどうしたんですか。」
答えたのはわたしじゃない。副会長だ。ものすごく仏頂面で。ところで、副会長?気づいたのが声掛けられたときって、遅くありませんこと?
「おぉ~守杏と咲倉か。2人で映画か。俺はシュウがこの映画を観たいってんで、朝っぱらから起こされたんだよ。休みの日ぐらいゆっくり寝かせてほしいのになぁ。お前らはデートか。いつから付き合ってんだ。」
その言葉にわたしと杏望先生が『付き合ってません。』と言い、副会長はもじもじしてた。あんたは乙女か。男子校生がやっても可愛くないぞ。
棗先生は朝の杏望先生の襲撃と、女性の襲撃にすでに疲れてるらしい。早く席に行こうとしてた。なのに杏望先生が、
「どうせ同じ映画観るんでしたら席も近くにしませんか?カップルシートでも店員さんに言えば代えてくれるでしょう。」
と言ってさっさと代えてきた。どっちでもいいけどね。
でっかい男3人に連れられたわたしは『ドナドナ』の気分になりながら映画を観るはめになってしまった。
両脇にでかい男がいる(しかもピリピリしてる)状態で集中出来るか不安だったけど、始まったらあっという間に引き込まれた。ミステリーチックに始まるのに、だんだんサスペンスになっていって、最後は大迫力のアクション!めっちゃ好きですこういうの!しかも吹き替えの声優さんがわたし好みで、幸せな耳時間を過ごした。パンフレットもばっちり買いました。
映画館を出てお手洗いを済ませてから3人がいる方に行ったんだけど、待っていたのは副会長だけだった。先生たちどーしたんだろ。まぁいいかと思って副会長に近寄ったら、違う方向からまたまた会いたくない人が…。まじ厄日だ今日は。
一緒にいるのを知られたくなかったから、咄嗟に物陰に隠れた。人が多くてわたしの姿は相手から見えなかった様だ。
そしてその人は、また女の子に声を掛けられてる副会長に向かって、
「守杏先輩!」
と果敢にも女の子たちの間に割り込んでいった。わたしには出来ない芸当だ。あれか。やっぱり美少女は違うのか。
「あれ、きみは…」
「森木華鈴です!守杏先輩、こんなところで奇遇ですね!お一人ですか?」
そう。わたしが会いたくなかった何人目かの人は森木さんだ。
私服の森木さんはいつも以上に可愛くて、通りすぎる男たちがチラチラ見ていく。美形率が高くてほんとふざけんなって感じです。
「あぁ、森木さん、ね。僕は1人じゃないよ。連れを待ってるんだ。森木さんも待ち合わせか何かかい?」
「いいえ、今日は1人なんです。みんな予定が合わなくって。寂しい子に見えます?」
「いや、ショッピングセンターだからそんなことはないよ。残念だったね。」
「ふふっ。でも守杏先輩に会えたからラッキーでした。今日来てほんとよかった。またお話したいって思ってたんですよ?」
…森木さんって友達いたっけ?少なくともクラス内で仲良さそうっていうか、いつも一緒にいるのは土浦樹子ちゃんだ。すんごーく控えめな女の子で、人に何か言うのを躊躇ってる。人見知りっていうよりかは、自分の意見を飲み込んじゃってるタイプの子。クラスに馴染むのも遅かったから、世話焼きおばさんよろしくな感じでグイグイ行ったら怯えられてしまった。そして美晴に怒られました。反省。それからはたまに話す程度に留めたけど、最近はしょっちゅう森木さんの側に居る。森木さんが近寄ってるだけなんだけど。しかも親友発言までしてる。その割りには自分の都合のいいときだけ寄ってる気がするのは、わたしが樹子ちゃんと仲良くしたかったという嫉妬からなんだろうか。
ともかく、わたしが見る限りは他に友達はいなさそうだけど、別のクラスとか中学の友達とかなんだろう。
そんなことを考えてる合間に話はどんどん進んでいった。
「僕に?なんでまた。」
「だって守杏先輩……なんか辛そうだったから。無理して笑ってるなとは思ってましたけど、その奥に"笑わなきゃいけない"って思い込んでる気がして…。差し出がましいのは十分わかってるんです。でも、あたし、先輩の力になりたいんです!何が出来るかわからないですけど…先輩の辛いこと、一緒に背負っていきたいんです!少しずつでいいんです。あたしのこと、信じてくれませんか…?」
「森木さん…」
おぉ!端から見るといい雰囲気ですな!ただし!恐らく森木さんの言ってることの半分も副会長は理解してないに違いない。だって副会長の頭の上にはてなが見える。
覗き見(不可抗力だと信じたい)をしていると、後ろから、
「覗きなんて、イケナイ子ですね。」
と耳元で囁かれた。驚いて声を上げようにも口はすでに塞がれてた。
「しぃー。あの2人、いい感じですね。邪魔をしてはいけませんよ。どこかに移動しますか?」
杏望先生の手をひっぺがしてやって、酸素を体に取り込む。
「それより、棗先生はどうしたんですか。」
「あぁ、彼なら用事があるとかで、先に帰りましたよ。ねぇ舞?あなたの私服姿は初めて見ますね。とても可愛らしい。でも、男の前で無闇にオシャレをしてはいけませんよ。気があると勘違いしますからね。もちろん、私の前では大歓迎ですが。」
近い!この間並みに!髪を弄らないで!変な空気を醸し出さないで!耳に顔を寄せないで!
杏望先生がまたわたしの耳元で何かを言おうとした瞬間、
「なにしてるんですか先生。」
とーーっても不機嫌な低い声が聞こえてきた。助かった…!
「なにも?咲倉さんの髪にゴミがついてたので取ってただけですよ。それより、お相手はいいんですか?」
にっこり笑って誤魔化した先生はすぐさま聞き返す。
「お相手?あぁ、さっきの。もう帰りましたから。先生も帰ったらどうですか?映画は見終わったんですから、一緒にいることもないでしょう。舞、行こう。」
と副会長は手を掴んで行こうとしたが、それを杏望先生が止めた。
「お昼一緒に食べませんか?もちろん"先生"のおごりですから。」
おごりに釣られたわたしは一も二もなく頷いてしまった。副会長には恨みがましい目で見られてしまったが、お小遣いが減らないのならいい!
いやね?一度働いてて、自分で稼いで自分で使う生活をしてた身としてはね?いくら未成年だからとて、お小遣いを貰うのは忍びないんですよ。うちは小金持ちだから心配なんかしてないんだけどね、なんかやっぱねぇ。だから浮かせられるところは浮かしたいのよ。社会人の男なんて、おごらせてなんぼじゃ。
という持論の元、副会長揃っておごってもらいました。そのあとは、ちょっとお店をぷらぷらして、暗くなる前に家まで送ってもらった。本当は先生も送るって言ってたけど、学校から呼び出しをくらったので逆に見送った。
なんか休むどころかどっと疲れたような気分で家まで送ってもらうと、副会長が
「今日はなんか邪魔がいっぱい入っちゃったね。また今度、ゆっくり出かけよう?あとこれ。舞に似合うと思って買ったんだ。付けてくれると嬉しい。」
と言ってわたしに小さな袋を渡してきた。中を確認する間もなく『じゃぁ明日また学校で!』と足早に帰っていった副会長を茫然と見送り、手の中の袋を開けてみた。
そこには、キレイな桜の形をした銀細工のヘアピンがあった…。
本当はこのまま3人で先生の車で帰る予定だったのですが、あまりにも副会長が不憫になったので、急遽先生には帰ってもらいました。
ちなみに、棗先生が帰ったのはこんな経緯があったかもしれません。
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「なんだよ、いきなり呼んでいきなり帰れって。お前はどーすんだよ。」
「私はこのまま2人といますよ?先生として生徒を見守るのは普通じゃないですか。」
「見守るって、邪魔してるようにしか見えないが…。お前、まさか…」
「なんですか?」
「あいつは俺の生徒だそ?」
「私の生徒でもありますけどね。」
「そーじゃなくって!~~っとにかく!生徒に手なんか出すなよ?俺はちゃんと言ったからな!」
「何を言いたいのかわかりませんが、タツヤこそしっかりした方が良いと思いますよ。せっかくデートプランまで考えたんですから、まさか誘えてないなんてことはありませんよね?」
「そっ…んなことはない!ちゃんと誘うさ!」
「なら今から言ってきたらどうですか?実里先生は確か今日、やりかけの仕事があるとかで休出してるはずですから。」
「そうなのか!?じゃぁ今からいってくる!」
「いってらっしゃい」
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とほくそ笑む保健医がいたとかいなかったとか…。




