焼肉ジュー
キューピーは昨日の分だったので、もう1話です。
月曜日。
教室に入るといつも通り美晴がいた。
「おはよー美晴。」
「おは。どーだった?親睦会は。」
「すーっごい楽しかった!副会長が作ったポテトサラダがおいしくてさー」
土曜日の親睦会の様子を一通り話し、わたしは気になってたことを美晴に聞いてみた。
「美晴サン?わたしって恋愛してるように見えない?」
「なに急に。」
「んー、絵美歌先輩にわたしは静流先輩に好き好き光線を出しすぎて男に興味なさそうに見えるって言われたんだよねー。わたしはいつでも恋したいし、彼氏欲しいのになぁ」
「あー、それわかるかも。なんか舞って、恋愛の話になると外側から見てない?自分なら、とかあんま考えないでしょ。どっか恋をしないようにって線を引いてるみたいに見える。男子のこと異性として意識してないんじゃない?」
えーそうなのかなー。前世でも彼氏はあのゲイ婚約者しかいなかったし、その彼氏に刺されちゃったもんだから、無意識に恋愛から遠ざかってるのかなぁ。
「まぁ、本気で彼氏欲しいなら誰か紹介するよ。……必要ないかもだけど。」
?最後の言葉聞こえなかった。
「そんなことより!映画の券、どーすんの。早く行かないと終わっちゃうよ?」
おうっ!すっかり忘れてた。どうしよう。何も聞かなかったフリして1人で行こうかな。
悩んでると、
「守杏先輩と行けばいいじゃん。仲良いんでしょ?」
「いやいや、仲良いって言ったって、静流先輩通してだから。それに、副会長と並んで出掛けたりしたら、針のむしろだよ。学校の人にもバレたらなに言われるかわかんないし。怖すぎてそんなこと出来ません!副会長だって、わたしと行くより1人で行く方が良いっしょ。」
「……不憫だわぁ」
朝礼の時間になりそうだったから、その話はそれで終わりにして体育館に移動した。
毎週月曜日は全校朝礼がある。校長先生のありがたーいお話を聞いたり、生徒会からの連絡事項を聞いたりだ。つまりは眠い。とんでもなく。
校長先生のお話が終わり、生徒会長が期末テストの終わりにやるイベントの話をしていると、後ろの方が騒がしくなった。どうやら誰かが倒れてしまったらしい。
壇上にいた生徒会役員の欅田かおる先輩がすぐに駆けつけ、倒れた生徒をお姫さま抱っこ(!!)で連れて行った。それを何人かの女子生徒がポワーンと頬を赤くしながら見つめていた。
わたしのところからは見えなかったけど、教室に戻る途中、クラスメイトが森木さんが倒れたと言っていた。幸い、2時間目が終わった後に戻ってきたから、大事はないのだろう。良かった良かった。
放課後になり、いつも通り部活に精を出していると、(ちなみに、今は本物の弓で素引き練習をしてる。元々、ゴム弓の練習はそんなにしないそうだ。)梨子先輩が近寄ってきて、弓道場の外へ連れ出された。
「舞ちゃーん?映画のチケット、どーなってるのぉ?」
「なんでそれをっ…!」
びっくりしていると、可愛い顔にニヤリとした笑いを付けて、
「樹里にぃ、舞にお礼がしたいけど、何がいいかわからないって相談受けてぇ、この間あの映画が観たいって言ってたからぁ、ペアチケットあげたらどぉ?ってアドバイスしといたのぉ。」
そうだった!梨子先輩と樹里ちゃんは従姉妹だった!しかも姉妹同然な位仲が良い。つまり余計なオプション(副会長)を付けたのはこの人ってことか!
「ち・な・み・にぃ、あれ、カップルシートだからぁ、1人で見に行けないよぉ。」
「なななななんで…!」
「部活をサボるなんて、関心しませんねぇ。」
言葉を紡げないでいると、後ろから冷たい声が聞こえた。振り向いたらヤツがいる!
「あ~、杏望先生こんにちはぁ。すみません~、ちょぉっと2人で話がしたくってぇ。でも終わったので戻りますぅ。」
あっ!ずるいわたしも!って思ったのに、杏望先生に捕まってしまった。うぅぅ、わたしのせいじゃないのにぃ!
「なんの話をしてたんですか?」
「いや、それはちょっと…」
カップルシートが云々なんて言えない!なのに先生は、
「部活をサボってまで話さなきゃいけない大事なことだったんでしょう?聞かせてください、『舞』」
こんな時に!急に名前で呼ぶな!しかも機嫌がヨロシクナイのか、いつもより声が低くて……つまりはわたし好みの声で顔が熱くなってしまった。
いつまでも口を開かないわたしに業を煮やしたのか、耳元まで顔を寄せて、
「良い子だから、先生に言ってごらん。まい。」
卑怯です!こんなフェロモンたっぷりの声で囁かれたら陥落します!
観念したわたしは耳まで真っ赤になりながら、どもりながら!梨子先輩との話をした。
いくら精神年齢あらふぉーでも、経験値の違いなのかこの色気の差はっ…!
話を聞き終えた先生は、『ふ~ん、カップルシート、ねぇ』と言い、
「映画、楽しんできてくださいね」
と先程までの様子とは打って変わって上機嫌で弓道場に入っていった。
なんなんだ一体…。
ドキドキ……出来ない私の表現力では!




