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キューピー

すみません、今日が返却日なのをすっかり忘れていたので、昨日夜中にDVD3本観たら更新出来ませんでした。

あんなに憂鬱だった部活案内の時間があっけなーく終わりを告げほっとしていたわたしだったが、梨子先輩は煮え切らないらしい。曰く、『なーんか気にくわないのよねぇ。聞き分けのいい振りしてたけどぉ、むしろ目的は別にあったんじゃないかって感じぃ。』だとか。それに対して静流先輩は『そうかな?とこも可愛らしい子だったと思うけど。』と返し、梨子先輩が『んも~静流はすぐコロッと騙されるんだからぁ~』と言葉の応酬を続けていた。

そんな先輩方をよそに、わたしは後から来た1年生たちといつも通りの準備を始めた。


練習も終わりに近づき、そろそろ上がろうかという頃、(そういえば今日は杏望先生来なかったなぁ)静流先輩がみんなに話し掛けた。


「そうだ。ポテトサラダが嫌いな子はいる?」


みんな一様にしてなんでポテトサラダ?と疑問の目を向けると、


「今度の親睦会にさ、透流がポテトサラダを作って出したいって言うから。母が軽食を用意してくれるっていうから必要ないって言ったんだけど、どーしてもって引き下がらなくて。自分が唯一作れるポテトサラダをみんなに披露したいみたいなんだよね。」


誰も嫌いな子がいなかったので、副会長お手製のポテトサラダが食べれることになった。副会長、そこまでして親睦会に参加したいのか。


**************


土曜日になった。午前中はいつも通り練習してたんだけど、開始直後から杏望先生がいる。職員会議の準備はいいのかとも思ったけど、昨日までに終わらせたらしい。まさかこのために……

実はわたしは杏望先生が静流先輩を狙ってるんじゃないかと践んでいる。だってよく2人で話してるし!それをよく思ってない副会長が、杏望先生を目の敵にしてるんじゃなかろうか。そう考えると辻褄が合う!だから静流先輩が殊更可愛がってるわたし(エヘヘ)を懐柔しようとこの間勉強教えてくれたりしたんじゃないかな。やだわたしってば名推理!!でもですね!静流先輩にその気がないならわたしも断固妨害しますよ!副会長の味方です!

自画自賛をしつつ、決意を新たにしていると、杏望先生が近寄ってきた。


「これから親睦会なんですよね?」

「はい。静流先輩のお家でやるんですよ。」


うらやまだろぅ。ふふんとドヤ顔をしていると、にっこり笑った先生が、


「ま……咲倉さんはクッキーを焼いてきたと聞いたのですが、私の分はないんですか?」


と手を差し出しながら聞いてきた。ってかもらう気満々ですよね。てかてか今『舞』って言い掛けませんでしたか!?約束は守るもんですよ!コワイこの人!

わたしから言い出したのに、静流先輩に負担をかけるのは嫌だから、1年生たちは色々持ち込むことにしたのだ。ワタクシ、前世では自炊しておりましたので、料理は得意なんでござーますのよぉ。

わたしは先輩の家から少し離れてるので、暑くても大丈夫なようにクッキーを焼いた。先輩の家から近い子は冷たいものを、せんべい屋さんの娘はやはりせんべいを。こうしてみんなで持ち寄れば、気も使わないし。

しかしなぜ先生が知ってるんだ。まぁ恐らく梨子先輩あたりから聞いたんだろうけど。一応、この間のお礼も兼ねてしょーがないから渡すことにした。お口に合うかわからんけど。

先生はそれはそれは嬉しそうに受け取ってくれた。なんかそこまで喜ばれるとこっちが恥ずかしいです……。


「ありがとうございます。大事に大事に食べますね。なくなったらまた作ってきてもらえますか?」


なんかいたたまれなくて、早く会話を終わらせたくてコクコク頷いてしまった。ヤベッて気づいても後の祭り。先生ははにかんで、『ありがとうございます。楽しみにしてますっ。』と言いながら弓道場を出ていってしまった。

うぅ~なんじゃありゃ~空気に呑まれたぁ~あらふぉーなのに負けたぁ~と内心悶えていると、生暖かい視線が…。こっち見んな!ニヤニヤするなぁー!


ニヤニヤ笑いを続行する他の1年生たちや八つ当たりをする。いいよね!みんなは彼氏がいたり、好きな人がいるんだから!リア充絶滅シロ。


「ついに咲倉ちゃんにも恋の予感かぁ~?」


とおちょくってきたのは1年生の中でもリーダーシップのあるめぐちゃん。彼氏有り。ケッ。


「いやいや、先生と禁断の恋なんて漫画みたいじゃーん。逐一報告希望!」


と挙手したのはオタクっ気があるハナちゃん。2次元にしか興味がない。でも最近オタク仲間のフツメン男子からいろいろイベントのお誘いを受けてるらしい。本人は友達だと思ってるけど、こりゃ脈有りとみた。鈍いなケッ。


「でもでも、これから3年間隠し通すのって大変じゃない?アリバイ工作なら任せておいてね!」


おいおい、ちょい待ちぃやぁっていう突っ込みどころ満載なことを言ってくれたのはゆらちゃん。癒し系女子で、のんびり屋さん。ちなみに見た目はスイーツ女子なのに、せんべい屋の娘。本人はせんべい大好きーだけど。中学から好きな男の子がいるらしく、高校は別になってしまっため、猛アタック中なのだとか。伝わってるか不安だ。ケッ。


改めて見てみると、みんな個性が強いな。わたし霞む…。影薄くならないようにがんばろ……。


そんなことを言い合ってると、着替え終えた先輩たちが出てきたので、わたしたちも着替える。更衣室は狭いからみんなでは入れないのだ。



静流先輩のお家へ着いたはいいが、でかい…。

大豪邸という訳じゃないけど、普通の家よりかは確実に大きい。昔っからの土地があるだけだよと先輩は言ってたけど、それにしちゃ家が新しい。

わたしたち1年生が口を開けて見ていると(先輩方は来たことがある)玄関から副会長が顔を出した。その姿を見て、今度こそわたしたち全員が絶句した。

エプロンするのはいい。今までポテトサラダを作っていたのだろう。お礼を言おう。でもなぜにピンクのフリフリなのだ。あんたはどこぞの新妻か!

いち早く立ち直ったのはやはり静流先輩だった。


「透流、それ、お母さんのエプロンだよね…?」


お母さん着てるんかい!


「そうだよ。僕がエプロン持ってないって言ったら貸してくれたんだ。なんか変?」


変じゃない。むしろ…似合ってるから絶句したんだ。髪の毛伸ばしてスカートはいて、マスカラでも塗ればばっちり。わたし負けます。

みんな一様に何と言えばいいかわからなかったが、梨子先輩が一言。


「似合ってるよぉ。女の子みたいで。」


と有り難くもない毒をはいた。

それでやっと気づいたのだろう。慌てて家に入っていった。最初にそのチョイスがおかしいと気づいて欲しかった。

静流先輩に促され、お家に入ればこれまた豪華だった。というか、一般家庭に応接室があるのは普通なのか?客間も別にあるらしい。いつでも泊まりにおいで、と言われ必ず来ようと思ったのはわたしだけではないはず。

副会長と静流先輩が持ってきてくれた(副会長はエプロンを外してた。)サンドイッチや飲み物、副会長お手製のポテトサラダにわたしたちが持ち寄ったお菓子をテーブルに並べ、部長である静流先輩が、


「少し遅くなってしまったけど、舞、ハナ、ゆら、めぐ、弓道部に入部してくれてありがとう。私たちは君たちを心から歓迎する。これから、2年間、よろしくね。乾杯!」


と乾杯の音頭を取った。高校生なので、もちろん中身はジュースだけど。

それから、学校の話やら部活の話やら絵美歌先輩から誰と誰が付き合ってーという話を聞いたところで、絵美歌先輩がメモ帳を取り出した。


「さてさて、それじゃぁ諸君たちの恋ばなでも聞こうかね!大丈夫!私の情報披露はここでしかしないから!人に話したりしないから安心して話しておくれ?」


ムフフと笑いながら誰から行こうか考えてる。最初のターゲットはめぐちゃんだ。

1年生と2年生の間でそういう話をしたことがなかったから、先輩方も興味津々だ。いつ頃から気になり始めたのか、告白はどちらからか、初デートはどこなのかと、根掘り葉掘り聞く絵美歌先輩だが、不思議と話してる方は不快感を感じないらしい。物凄い手腕だ。そして、ゆらちゃん、ハナちゃんと順番が回ってきて、気づいてしまった。

わたし、浮いた話がない……!

物心が着いた頃から前世の記憶があるからか、何となく同年代を恋愛対象として見れなかったのだ。高校生になったら制服デートがしたい!って思ってたけど、まだまだそんな相手見つけられそうにないし。内心焦ってると、


「じゃぁオオトリは舞ちんだね!ちみはどんな恋をしてるのかなぁ~?」


案の定話を振られてしまった。

仕方ないので正直に『初恋もまだなんです。(今世ではね)』い言うと、『まぁそんな気はしたけどね~』と返されてしまった。どういう意味じゃ。


「舞ちんはさー、なんて言うか静への好き好き光線が出てて男に興味なさそうに見えるんだよね~。逆に彼氏欲しいとか思わないの?」

「思いますよ!常に思ってます!でも自分からっていうの苦手だし、かといってモテるわけじゃないので、なかなか難しいんですよねぇ。」


そこまで答えたところで、みんなからため息が出た。なぜだ。

疑問に思ってると、ドアが勢いよく開き、


「舞!あのさ…「いくら自分の家でも入るときはノックぐらいしよぉねぇ」


副会長が梨子先輩にノックアウトされてた。ダジャレじゃないよ。頭ギリギリ押さえつけられてたんだから。

梨子先輩から解放された副会長は頭を痛そうにしながら、そのまま応接室に居座った。やっぱり仲間に入りたかったんだ。


「気を取り直して、舞ちんはどんな人がタイプなの?」

「それはもっちろん、声がいい人です!これに限ります!低いのがいいって訳でもなくて、色気があればちょっとぐらい高くてもOKです。毎朝耳元で囁かれたい願望です!」


と熱弁したら若干引かれてしまった。


「ちなみにうちの学校だと好みの声の人いる?」


と静流先輩に聞かれたので、本人目の前にして言うのは恥ずかしいが、


「…副会長の声が結構好きです。あと棗先生と杏望先生の声も。生徒会長の声も好きだし、というか、生徒会役員の声は全員好みです!」

「わかるー!みんないい声してるよね!入学式めっちゃ幸せだったんだけど!」


ハナちゃんが賛同してくれた。ミートゥーです。

ひとしきりわたしとハナちゃんで声の良さについて語り合ってると、めぐちゃんと絵美歌先輩がこそこそ話し合ってた。しかもこっちをチラチラ見てくる。どうしよう、嫌な予感しかしない。

そんな中、静流先輩と梨子先輩と副会長はなんか言い合ってるし、ゆらちゃんとみちる先輩はお菓子について熱く議論してるしで、なんだこのカオスは状態になりました。


こんな感じで親睦会は終了しましたマル

あっ、ちなみに副会長のポテトサラダはめちゃくちゃおいしかった!ワタクシ好みです。お礼にクッキーを渡したら喜んでくれたし、親睦会大成功なんじゃね?とホクホクしながら帰りました。

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