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ぼくは先輩のなんなのさ。  作者: 七峰らいが
序章「銀色の弾丸《シルバー・バレット》」
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プロローグ「銀色の弾丸《シルバー・バレット》」

 警告音が鳴り響く。唸りを立てて空を裂く轟音が、監視カメラの眼前を横切った。

 不審物を感知して作動するシャッターもおよそ意味を成さず、閉まる頃には既に「それ」は鋼材の表層を微細に震わせる衝撃波をあとに残して通り過ぎていた。

 音速の壁を超えんとするような加速だが、左右不規則に閉まろうとする性悪なシャッターに対し、機体を無理矢理傾かせて滑り込んでいく。

 電子機器を全く使わないという、この時代から見ればおよそ正気の沙汰ではないコンセプトでありながら、機体を自らの力で回転させることで無人機の想像を絶する機動で飛翔する有人機――それがこの「シルバー・バレット」という戦闘機だった。

 この機体がそんな、圧倒的に時代遅れな有人機であるのは、その機体を構成する部品のどれか一つにでも電子機器が使われていれば、簡単にジャミングやクラッキングが可能となってしまうからである。

 全てがコンピュータの前に屈する世界では、コンピュータを使わぬこと以外に人類が反抗する手段は無い。だからこそ彼はこの戦闘機を作り、無数の敵機と巨大兵器、そして灰色の日常を続けるドーム・コロニーや生産工場を乗り越えて、最後の抵抗を続けるこのコンピュータの動力炉へと辿り着いたのだった。

 最後の隔壁が閉まろうとする。その中を、銀色の機体は悠々とすり抜ける。隔壁は悔しげな音を立てて閉まり切った。

 これでもう、この機体を阻むものは、何も無い。

 目標、数キロメートル先。製作者はそれを核融合炉と言って憚らなかったが、終ぞ公式の設定とはならなかった敵動力炉が、ついにその姿を現した。この世界の全てのコンピュータと生物を監視し統制する、ニセモノの神様の心臓が、あらわになった。

 両翼が、鋼鉄の身体をぐいと左に傾かせる。最後の加速。その回転を速めていく。

 軌道修正。最終着弾予定位置へ。この一撃に、全てを託して突き進む。そのためにここまでやって来たのだから。

 両翼が「運び手」としての役目を終えて、ぱっと機体から離れた。即、壁面に叩きつけられるように激突し、砕け散る。

 もう、誰の手も借りない。借りる必要が無い。

全てを貫き通した末に残ったその機体の姿は、まさしく怪物の心臓を穿つ銀色の弾丸(シルバー・バレット)であった。

 接触。衝突。粉砕。そして、爆発。

 無人の――正確には、たったひとりだけの――空間を埋め尽くす警告音と破壊音だけが、唯一の断末魔の叫びだった。

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