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ミソカとツゴモリ

(人物紹介)

東京の大学に無事合格。人以外のモノが見える大学生 秋月海

ひょんな事から海の式神となった双子妖怪?     ミソカとツゴモリ

視えないが力は強かった祖父            秋月コウジロウ

いきなりナンパ?してきた霊媒体質女        春野美津子

高校の同級生 大学も同じになる          大川孝之



 この2人については俺よりじいちゃんのが詳しかった。

 けれど、2人を式神としていた訳ではなさそうだった。

 見えないし話せないじっちゃんが2人とどう交流していたのかが気になってはいた。

 が、俺は過去は聞かなかった。



 高校3年になった春に米沢の桜を見てミソカが話してきた事があった。


「自分は桜の木なんだよ」

とミソカが言った。

 秋月の家には桜はなかったが、家の庭からなら山の桜が遠くに見えていた。

 俺達は縁側に座り遠くの桜を眺めながら話した。


「桜?」

「そう、すっごいでしょ?」

「そだね、樹齢何年とかいってるならすごいね」

「失礼ね。女性に歳を聞くものじゃないわよ!」

 とミソカがふくれる。

「あはは、冗談だって、あの桜でしょ?東京の家のあの桜」

「そう。でもね、私たちはあの木の本体じゃないんだ」

「じゃあ、何?」

「ただの枝よ、2本のね」

 縁側で足をぶらぶらさせながら彼女はそう答えた。


 縁側で2人で並んでいた。

 まだ少し寒かったが、日差しは暖かだった。

「じいちゃんと知り合ったのは?」

 と俺は聞いてみた。

「知り合ったって感じじゃないわ。助けてもらったのよ」

 俺は前にツゴモリが「俺達の恩人」と言ったのを思い出した。

「じいちゃんが助けた?どうやって?だって見えないだろ?」

「私たちは深川の神社に咲いていた桜の木の枝だったの。桜はもうずっと長くそこに咲いていて、神に昇格しないか?って話が出て、桜の精みたいなものになる準備を始めたの。でも、それから10年もしないで、日本は戦争で、神社も焼けてしまって、桜も焼けたの」

 ミソカは青空を見上げながらそう話した。

 俺にはあちこちで上がる煙が見える気がした。


 昭和20年頃か、俺にとっては歴史でしかない時代だ。

 戦争をしていた事すら本当なのかと思うくらいなのだから…。

 ミソカの話は続いている。

「コウジロウがね。捨てられてた折れて焦げた木に枝が出て芽があるのを見つけて、拾ってきてくれたの」

「……」

「だから、私たちは何度もお礼が言いたくて。いつも、話しかけたくて、いつも、いつも見ていたの。とっても優しいコウジロウを」

「なら、俺じゃなくてじいちゃんとこのままここに居ればいいんじゃない?ここ、米沢に残ればいいよ。あの桜なら運んでもらうし」

 と俺が言うと、ミソカは静かに首を振った。

「ううん」

「なんで?こっちのが環境も良いと思うけどな」

「あっちはあっちで、私たちには良い所なのよ」

「だって、土地狭いし、窮屈だろ?」

「いいんだって。10年振りにコウジロウの側にこれて幸せだったわ。だから良いの。ちゃんとこっちで暮らしている姿を見れて安心した」

 と笑う。

「そっか?」

「それに、コウジロウより孫のあんたが心配。ほっておけないわ」

「…俺が心配?…俺は何もしないぜ」

 それはじいちゃんじゃないのか?

 戦争中とか戦争前とか、じいちゃんには何となく危なげな噂がついて回っていた。

 親父はそんな親を見ていた所為か、超堅物だった。

 輸入関係の仕事をしているので留守も多かったが、俺にとっては優しい父親だ。


「カイ」

「ん、何?」

「ワタシはね。こうしておしゃべり出来るのが嬉しいの」

「ま、俺も見えるだけよりは話せた方がいいかな」

「ワタシ達は自分達の力でこうして居るんじゃないのよ。桜の木の力なの。もう何百年も咲いていた桜の力。桜はワタシ達を最後に出て来た芽を必死で守って残したの…。それを見つけて助けてくれたのがコウジロウ…」

「そうか…」


 俺は木の精とかの類は見る事が出来ない。

 俺の血筋ではそういった純粋なモノは見えない。

 どこか澱んだ人絡みのモノが見える対象だった。

 だから、神のなりそこないと言った彼女が見えたのが不思議だった。

 じいちゃんが残していった何かだと思っていた。


「ねぇ、コウジロウは何故、私たちを式神ではなくて協力者にしたと思う?」

「それは俺が式を満足に使えないからだと思うけど…」

「それもあるんだろうけど、ワタシ達は、カイをあそこで待っていたんだと思うの。あの桜を残すと決めたのはコウジロウじゃないでしょ?カイがそう決めたのでしょ?」

「そうだけど…」

「あそこでね、ずっと待ってた。カイが東京に来る事になったのは偶然…。でも、それはもう必然で。ワタシ達の出会いも偶然で必然。ワタシ達はカイを守る為にあそこに居て、そして出会った。式では守りきれない部分がある事をコウジロウはわかっているから対等な立場にしたんだと思うな」

「偶然でも必然…」

「そうそう」

「東京に行く事になったのも必然かぁ…。俺はあれで死ぬ思いをしたのに…」

「ワタシ達がいたら良かったのにって思ったでしょ?」

「まぁね、想像くらいはした。でも、あれでお前達が居たら、あんな風にはなっていなくて、東京にも行かなかったかもしれないから、それは、必然なのかもな」

「でもね、カイ」

「何?」

「出会ってしまったから、それでもう運命は回りだすわ」

「……」

「あなたはきっとそれに勝てるから、コウジロウは私たちに托したのよ」

「托した?誰が?」

「桜がよ」

「……」

 彼らの桜の木と話してみたい気がしたが、それはもう出来ない事だった。


「ミソカ…」

「何?」

「お前達の本当の名前はいつ教えてくれるんだ?」

「そうねぇ、時期が来たらかな」

「きっと、俺が付けたのなんかより良い名が付いているんだろうなぁ。桜がらみの」

「ワタシはミソカが好きよ。名前を分けてくれる人間がいるなんて正直思わなかったもん。すっごい嬉しかったんだよ」

「他に思いつかなかっただけだ」

「ツゴモリもね。言わないけど嬉しがっているんだよ」

 あのツゴモリが?

「ふーん」

 俺も少し嬉しくなった。


 式を持ちたいと思った事はなかった。

 だから、それに関しての修行もした事はない。

 人より格が下とか上とか、人間はどれだけ傲慢なんだろうと思っていたから…。

 人が何が出来る?

 雨を降らせたり、雪を降らせたり出来るのか?

 それなのに、何で自然が自分達の下だなんて思えるのか不思議だった。

 だから、自分の代わりに働かせるなんてしたくなかったんだ。

 同等扱いをする事になって俺は気が休まった。

 「頼めば」動いてくれる。

 俺が出来ない事をしてくれる。

 俺ではわからない事を教えてくれる。

 だから、

 俺は何があっても彼らを見捨てない。

 信じている。


 この米沢での暮らしで俺は媒体である「鈴」を持ち歩かなくても彼らと交信出来るようになった。

 そして「鈴」を誰かに渡すと彼らの姿が見えるようになった。

 これは彼らと俺の絆が強くなったからだ。とじいちゃんは教えてくれた。

 それとあの鈴は祖母の物だったと言った。


「きっとそれは彼女がお前の為に残した物だから、大事に使うんだぞ」


 俺は桜の舞う中の祖母を思い出した。

 

 あの桜が俺達を引き合わせた。

 それが必然だと言うのなら、それで運命が回りだすのならば…。

 俺はそれに立ち向かっていってやろうと思っていた。

 




※私事で恐縮ですが、これを短編として来月までに1本にまとめなくてはならなくなりました。

「海を見たかい」は長いシリーズの予定だったので…再構成をかけます。その為、1話冒頭に大幅加筆しました。それ以外はほぼ同じですが、改稿しながら、順次UPしてゆこうと思っています。

大川が加わった所で1章が終わった形になっていますので、1話冒頭以外は読み直さなくても読めると思います。本当に申し訳ありません。

よろしくお願い致します。


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